Audi A5 SPORTSBACK(後編)|まるで出来のよいスポーツシューズ
Audi A5 SPORTBACK|アウディ A5 スポーツバック(後編)
まるで出来のよいスポーツシューズ
アウディ・ジャパンでは、大人のために自動車の楽しさを提供してくれるA5のラインに、あらたにファストバックというスポーティなスタイルを採用した「アウディA5スポーツバック2.0TFSIクワトロ」(575万円~)を発売した。
文=小川フミオ写真=河野敦樹
快適なドライブを楽しめるクルマ
アウディA5スポーツバック、ハンドリングは素直だ。操舵力は軽いが、車体の反応は速い。思ったとおりのラインをとることができる。どうもこのクルマ合わないな、と思うときはたいてい、ハンドルを握る自分の感覚と車両の反応速度のズレに起因していることが多い。A5スポーツバックはそのタイムラグが皆無。出来のよいスポーツシューズのように、ドライバーの思いどおりに動いてくれるから、確実に運転はしやすくなる。これも利点。
デュアルクラッチシステムによる7速アウディSトロニック・トランスミッションも、オートマチックの安逸さをもちながら、マニュアルより素早くクラッチをつなげるという特長が、このアクセルの踏み込みに対して反応の鋭いエンジンのキャラクターとよく合っている。全長4710mmというサイズのクルマとして、こんなに軽快なドライブを楽しめるクルマはあまり例をみない。
ドイツ車ならではの機能主義
さきに書いたように、室内もA5スポーツバックの魅力だ。2810mmという長いホイールベースの恩恵もあり、空間的には余裕があり、後席も外観から想像されるよりずっと快適。大人2人が楽々座っていられる。かつ、ハッチゲートゆえ大きな荷物の出し入れも楽で、後部座席の背もたれを倒すことで長尺ものの積載も可能となっている。
機能主義を追求しているのはドイツ車ならではで、アウディに慣れているひとなら、すぐ走り出せるぐらいコクピットのコンセプトは不変。黒色で統一されているだけに合成樹脂の各部品の質感の高さがよくわかる。この作りのよさはアウディの大きな魅力だ。あえて難をいえば、そろそろあたらしいコンセプトが出てきてもいいように思うが。シートのカラーコンビネーションや、ダッシュボードの一部の素材を選べるのも楽しいが、もう一歩進んだかたちでこのプレミアムセダンを楽しめるようになってもいいだろう。
Audi A5 Sportback 2.0 TFSI Quattro
ボディ|全長4710×全幅1855×全高1390mm
エンジン|2ℓ 直列4気筒DOHC+インタークーラー付きターボチャージャー
最高出力|155kW[211ps〕/4300~6000rpm
最大トルク350Nm[35.7kgm〕/1500~4200rpm
駆動方式|フルタイム4輪駆動
トランスミッション|7段デュアルクラッチシステム(アウディSトロニック)
価格|575万円~
アウディコミュニケーションセンター
0120-598-106
BRAND HISTORY
Audi(アウディ)のエンブレムは“フォーリングス”。その輪ひとつひとつが自動車メーカーのアウディ、DKW(デーカーヴェー)、ホルヒ、ヴァンダラーを表しているのはご存じだろう。いずれもザクセン州に本拠を置き、20世紀のはじめ、ドイツの自動車産業を牽引したブランドである。しかし、第一次世界大戦後に起きた世界恐慌の煽りをくらった4社は、生き残りをかけて、1932年にアウトウニオンを結成。DKWがモーターサイクルと小型車、ヴァンダラーが中型車、アウディが高級中型車、そして、ホルヒがラグジュアリーカーに特化する戦略をとることになった。
しかし、第二次世界大戦の敗戦により旧東ドイツのザクセンはロシアの占領下となり、アウトウニオンは消滅。これを見越して、旧西ドイツのバイエルン州インゴルシュタットに新生アウトウニオンが設立される。BMWやメルセデス・ベンツとちがい、工場のない状況からの苦しいスタートをしいられたアウトウニオンであったが、DKWデリバリーバンなどの生産により徐々に体力をつけていった。
1964年末にフォルクスワーゲン傘下に収まったアウトウニオンは、ほどなくしてアウディの名を冠した新型車を世に送り出す。そして1969年には、ネッカースウルムに本拠を置くNSU(“ヴァンケルエンジン”の開発で知られる)を合併し、アウディNSUアウトウニオンとなり、1985年からはアウディとして現在にいたる。クワトロをはじめとするテクノロジーと、モータースポーツ活動に裏付けられたダイナミック性能、エレガントなデザイン、そして、質感の高い仕上がりが、アウディの人気を牽引している。