青木定治さん(2)パリと丸の内の街模様
Fashion
2015年5月14日

青木定治さん(2)パリと丸の内の街模様

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)

~パリと丸の内の街模様~

『パティスリー サダハル アオキ パリ』を離れ、
対談の舞台はジョン ロブ丸の内店のビスポークスペースへ。
青木さんとジョン ロブには、パリに本店をもち、丸の内にブティックを構えるという共通項があります。シリーズ第2回は、パリと丸の内、ふたつの街の特色についてうかがいました。

構成と文=秦 大輔(City Writes)写真=Jamandfix

一流を目ざすなら本場へ行け!

松田 お菓子とパンは本当にごちそうさまでした。青木さんは日本で修行されていた当初からパリへ行きたいという思いがあったのですか。

青木 いえ、そうでもないんです。青山にフランスから帰ってきたばかりのシェフがいて、その方のもとで働いていたんですね。そこでまず料理の一環としてお菓子づくりを学びました。で、お店に『フィガロ』とか『ル・モンド』とか、パリの雑誌や新聞が置いてあって、そこではじめて自分がいま学んでいるもののルーツがパリにあることを認識したんです。

そんなときに、アメリカにいた伯母から「お菓子をはじめたならパリへ行かないとダメだよ」といわれて。お寿司の本場が銀座であるように、お菓子の本場はパリ。一流を目指すなら本場へ行かないとはじまらないと諭され、それでパリ行きを決めたんです。

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)~パリと丸の内の街模様~

以下、『パティスリー サダハル アオキ パリ』丸の内店にて撮影

松田 パリの人々は暖かく迎えてくれましたか?

青木 近所のおじいちゃんやおばあちゃんが「どんどん勉強しなさい。フランスには学ぶものがいっぱいあるから」といまでもいってくれたり、僕のことを応援してくれているのを感じますね。
おじいちゃんやおばあちゃんからすると“かわいいジャポネ”が一所懸命にお菓子をつくって、私たちの文化に歩み寄ろうとしているという思いがあるのかもしれません。
お菓子好きな人は「アナタはいつピエール・エルメにアタックするの?」なんてスゴいことを露骨に言ってきますしね(笑)。

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)~パリと丸の内の街模様~

彼らは自分たちの文化に敬意をもち、かつ自分の確固たる主張をもった人間なら、異国の人間でも認めてくれるんです。
余談ですが、ピエール・エルメ氏が率いる『ル・レ・デセール』というお菓子協会があるんですよ。そこに入らないかというお話をいただいて、9月から連名することになりました。しかもその名簿リストがABC順だったので、世界のトップシェフが名を連ねるなか、僕がリストの先頭(笑)。あおい輝彦さんでもいない限り負けません(笑)

丸の内という街に人を呼び込みたい

松田 青木さんと私たちジョン ロブには、パリのほかに丸の内にブティックがあるという共通項があります。なぜ日本進出にあたり丸の内を選ばれたのでしょうか。

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)~パリと丸の内の街模様~

青木 じつは当初、銀座を考えていたんです。それが、パリのお店をデザインしてくれた方から、「ひょっとしたら東京の中心は丸の内になるかもしれない」といわれて。僕には20年前の銀行街というイメージしかなかったので、最初は戸惑いました。
それで、帰国したときにとりあえず街を観察してみると、週末にお客さんがいらっしゃらないことが分かった(笑)。ウチは週末勝負だし、どうしようと迷い、地区開発を担当されている三菱地所の方に相談したら、「いままさに週末に人が集まる街にしたい」とおっしゃるじゃありませんか。さらに「銀座には負けません」と強くいわれたもので、じゃあやりましょうという気になったんです。

場所については街をふらふら歩いていたらエルメスさんが目の前にあったので「ココだ!」と(笑)。僕も職人のひとりであって、エルメスは職人のつくった最高の業物(わざもの)を扱う憧れでありマーク。ジョン ロブさんも然りですよね。ここで人を呼べないくらいでは東京進出はダメだと腹がくくれました。
松田 青木さんもジョン ロブも“こういうものをつくったら売れる”とか、
マーケティングという発想からでなく、いまおっしゃられたように、職人がプライドをかけてつくったものを、お客さまが受け入れてくださっている。

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)~パリと丸の内の街模様~

青木 丸の内は3年前からは想像できないほど賑やかな街になりましたが、もう少し夜が活気づいてくれるとうれしいですね。ただ、無機質な街にはなってほしくない。パリは光ひとつとっても趣があるんです。均一な蛍光灯の明かりではなく、そのほとんどがスポットライトや間接照明。光も含めて風景なんですよ。
パリでは、お店のファサードの色づかいまでをいちいち区へ申請しなくてはいけない。僕がたとえば紫色にしたいと言っても、「あなたはいまそれでいいかもしれないが、50年後100年後にこの色が残っていたらおかしい」ということで簡単には受けつけてくれないんです。それでうちの看板は“絶対に申請が通る色”ということで真っ白にしました。
また、パリのブティックは向かいが教会だったもので、店側から外へ光を照らすのは禁止されていました。それで店の外側から内側を照らすいまのスタイルができたんです。東京でもそれを実践したら、シックであることが逆に目立つ結果になりました。おもしろいものですね。

ジョン ロブ 8月のおすすめをご紹介

モデル『スプリントII』

ジョン ロブ初のスニーカー『スプリント』の進化版です。
タンの部分を伸ばし、クッション材を入れることで、より快適なフィッティングを実現しました。また通気孔があるため、夏場も快適にお履きいただけます。
軽快さと上品さを兼ね備えた一足として、オフの日やトラベルの際にぜひご活用ください。

青木定治さんとパリに想いを寄せながら……(2)~パリと丸の内の街模様~

           
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