V6のレンジローバーに試乗|Rangerover
CAR / IMPRESSION
2015年1月13日

V6のレンジローバーに試乗|Rangerover

Rangerover 3.0 V6 Supercharged Vogue
レンジローバー 3.0 V6 スーパーチャージド ヴォーグ

V6のレンジローバーに試乗

2013年に国内導入された、4代目となる新型「レンジローバー」2014年モデルからは、エントリーグレードのエンジンが従来のV8から、ジャガー・ランドローバーの開発した3.0リッター V6 スーパーチャージドに置き換わったのが大きなニュースだった。2トン以上の車重をもつボディにダウンサイジングエンジンを組み合わせた、英国のフラッグシップSUVに大谷達也氏が試乗。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

信念を曲げることなく、独自の世界観をつくり出す

このブランドへの特別な気持ちは、いくつになっても断ち切れないんだろうと思う。

レンジローバー。貴族のためのSUV。

1970年にデビューしたオリジナル レンジローバーにも、足まわりがぐんとモダンになってオンロード走行が楽になった(ただし信頼性はあまり高くなかった)2代目レンジローバーにも、BMWの血がはいってラグジュアリーSUVのスタンダードを一新してしまった3代目レンジローバーにも、考えてみればずいぶん乗った。ただし、どんなに乗っても新鮮な気持ちを失うことはなかったし、ステアリングを握ればいつも敬意を抱かずにはいられなかった。

それは、このブランドが英国王室御用達(そういえば3代目がデビューした直後にスコットランドでおこなわれた国際試乗会では、われわれ日本人メディアのためだけにアン王女がディナーに同席してくださった)であることも関係あるだろうし、レザーとウッドをふんだんに使ったインテリアに触れるたびに気持ちが引き締まるような思いにかられることも関係しているのだろう。

でも、私にとってそれらとともに、いや、ひょっとするとそれら以上に大切なのが、レンジローバーの生みの親であるランドローバーが、クロスカントリー4WDメーカーという自分たちの立脚点を見失わずに70年ちかい歳月(ランドローバーの創設は1948年)を歩みつづけてきたことにあるような気がする。

オフロード性能のことなんて忘れてしまえば、乗り心地が快適でハンドリングのいいSUVを作るのはずいぶん簡単になるだろう。けれども、時代がどんなに変わっても、ランドローバーは自分たちの信念を曲げることなく、オフロード性能を軽んじないクルマ作りに邁進してきた。それでいて、オンロード性能でも独自の世界観をつくり出しており、快適性や操安性の面でライバルたちに引けをとらない。そんな、困難に敢えて立ち向かう姿勢が、私の頭のなかでイギリス人貴族の気高さとオーバーラップして、ランドローバーに対する畏敬の念を生み出してきたのだと思う。

Rangerover 3.0 V6 Supercharged Vogue
レンジローバー 3.0 V6 スーパーチャージド ヴォーグ

V6のレンジローバーに試乗 (2)

優雅な身のこなしに惚れ惚れする

だから、レンジローバーは貴族のSUV。そして私は、このクルマに乗るたびに特別な気分を味わうのである。

最初の3世代にくらべれば、4代目にあたる新型「レンジローバー」で私が走行した距離はさほど長くないが、それでも、公道でみせる4代目レンジローバーの乗り心地は快適で、ライバルたちにくらべて劣っているとは思えない。

いや、ハンドリングのレスポンスや高速コーナリングでの安定性を追求するあまり、どちらかといえば硬めのサスペンションが主流になりつつある最近のプレミアムSUVにくらべれば、レンジローバーの足まわりは明らかにソフトで、路面からのショックを優しく包み込むように吸収してくれる。その優雅な身のこなしには、思わず惚れ惚れとしてしまうほどだ。

そのいっぽうで、コーナリング中のロールはよく抑えられているから、ハードコーナリングをこなしても怖くないし、アンチロールバーを備えていなかったある時期までのレンジローバーとはくらべものにならないほど軽快なフットワークを見せる。この、ほどよいストローク感を残した乗り心地は、多くのライバルにはないレンジローバーの大きな魅力だと思う。

もうひとつ忘れるわけにはいかないのが、レンジローバーの豪奢なインテリアだ。

手触りのいいソフトなレザーがふんだんに使われているだけでなく、それらを縫い合わせるステッチもきちっと粒が揃っていて高級感を引き立てている。ここに磨き上げられたウッドやメタルパーツがセンスよく添えられているのだけれど、「どうだ、いかにも高級車だろう」という押しつけがましさはなく、あくまでも控えめな佇まいを見せるのだ。

この物腰の柔らかさはドイツ車の対極に位置するもの。もちろん、好き嫌いは様々だろうが、私はレンジローバーのソフトなニュアンスが決して嫌いではない。前述した柔らかな手触りの乗り心地ともイメージが共通するポイントだ。

Rangerover 3.0 V6 Supercharged Vogue
レンジローバー 3.0 V6 スーパーチャージド ヴォーグ

V6のレンジローバーに試乗 (3)

ダウンサイジングしても鈍重な印象を与えない

ここまで足回りとインテリアについて説明してきたが、2014年モデルの新型レンジローバーでもっとも大きなニュースといえるのが、3.0リッター V6スーパーチャージド エンジンの搭載である。

地球温暖化を引き起こすCO2の排出量削減が叫ばれるようになって久しいが、CO2を減らすのと燃費をよくするのは、自動車の技術として見ると実際にはほとんどおなじこと。ただし、燃費のいい、つまり環境に優しい新型エンジンを開発するのは、いまや大メーカーにとっても荷の重い仕事である。そんな大事業に、BMWやメルセデスの1/3ほどの台数しか生産していないジャガー・ランドローバーが手を染めるのは容易なことではなかったはず。

ところが、彼らはV8 5.0リッターの2気筒分を切り落としたV6 3.0リッターエンジンをあらたに開発。最高出力340ps、最大トルク450Nmというパワフルなパワーユニットをラインアップにくわえたのである。

このエンジンはジャガー「XF」にも搭載されていて、OPENERSではインプレッションを掲載済みだが、このレンジローバーでも絹のように滑らかな回転フィールをもたらしてくれる。しかも、低速域での力強い加速感もしっかりと受け継がれていて、決して鈍重な印象を与えない。

さすがにXFのように「軽い恐怖感」と覚えるほどの速さはないけれど、XFより500kgちかくも車重が重い(XFは1,870kg、レンジローバーは2,340kg)ことが信じられないくらいの軽快感だ。それでいてJC08モード燃費は従来のV8 5.0リッター NAの5.8km/!から8.5km/!へと大幅に向上。最新技術を搭載するライバルメーカーに一気に追いつく格好となった。

いずれにせよ、レンジローバーに乗っていると無闇に飛ばしたいという気持ちは消え失せ、ゆったりとドライビングを楽しみたくなる。

それは、品のいいデザインのなせるわざか。それとも、英国王室御用達の血統がそうさせるのか。気がつけば、英国紳士のように背筋をピンと伸ばし、レンジローバーのキャビンに漂う静かで落ち着いた空気を味わいながらクルージングをする自分がいた。

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Rangerover 3.0 V6 Supercharged Vogue
レンジローバー 3.0 V6 スーパーチャージド ヴォーグ
ボディサイズ|全長 5,005 × 全幅 1,985 × 全高 1,865 mm
ホイールベース|2,920 mm
トレッド 前/後|1,695 / 1,690 mm
最低地上高|220 mm
重量|2,340 kg
エンジン|2,994 cc V型6気筒 DOHC スーパーチャージド
圧縮比|10.5 ± 0.5
ボア×ストローク|84.5 × 89.0 mm
最高出力| 250 kW(340 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|450 Nm(45.9 kgm)/ 3,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(コマンドシフト付)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|255/55R20
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
サスペンション 前|電子制御エアサスペンション マクファーソン ストラット
サスペンション 後|電子制御エアサスペンション ダブルウィッシュボーン
燃費(JC08)|8.5 km/!
最小回転半径|6.1 m
乗車定員|5 名
価格|1,265 万円

ランドローバーコール
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