EVENT|作原文子×松浦弥太郎トークセッション「モノと暮らしのいい関係」レポート
EVENT|「レクサス」によるワークショップ第7弾をレポート
インテリアスタイリスト 作原文子×『暮しの手帖』編集長 松浦弥太郎
モノと暮らしのいい関係(1)
日常のなかで、自分はどんなモノを選んでいるのか? その行為から個人のライフスタイルや、生き方が見えてくる。身の周りの“モノ”こそ、その人物の代名詞だ。では本当に“いいモノ”って何だろう? LEXUS(レクサス)によるワークショップ第7弾となる今回のテーマは「モノと暮らしのいい関係」。“いいモノ”の選び方、それを暮らしに調和させる方法について、3人の目利きがトークセッションをおこなった。
Photographs by JAMANDFIX
Text by TSUCHIDA Takashi
センスの良いモノ選び、家づくり。本当に“いいモノ”ってなんだろう
レクサスが考えるライフスタイルを体験できる空間、情報発信の場として2013年8月にオープンした「INTERSECT BY LEXUS(インターセクト バイ レクサス)」。“インターセクト”には「交わる」「交差点」という意味があるように、このスペースでさまざまな価値観やライフスタイル、最新の文化が交差し、新しいクリエイティビティが生まれることを目的としている。
「インターセクト バイ レクサス」では、毎月さまざまなシーンで活躍するクリエイターがワークショプを開催。その第7弾としてOPENERSがプロデュースしたのが3月18日(火)のトークイベントだ。この日、お迎えしたゲストは『暮しの手帖』編集長の松浦弥太郎さんと、インテリアスタイリストの作原文子さん。司会進行は、OPENERSディレクターの大住憲生がつとめた。
「モノと出合うきっかけ、あるいはコツって、何でしょうか?」
トーク冒頭は、大住憲生のこんな問いかけからスタートしている。
松浦 どれだけいろいろなコトやモノに好奇心を持てるかに尽きると思います。僕なんか毎日、ナゼ? ナニ? ナンダロウ? の繰り返しです。そのなかで、わずかでも自分なりに掴めることがあると、とても嬉しいし、たとえ所有できなかったとしても、そのモノの本質を突きつめていくことで「知る」「発見する」ことはとても楽しいことだと思います。
作原 私は仕事柄、たくさんのものを見て触れるということが日々の活動の一部なのですが、ふと手に取るモノはその先に作り手が見えていることが多いように思います。あるいは誰かと過ごすためにはコレがあったほうが楽しいとか。そういうモノと人とがリンクするような選び方が、自分には多いかな?
――モノを選ぶ基準が、他者に対する思いやりっていうこともありますよね。
松浦 これはちょっと精神論的なことで、なかなかうまく伝えられないですけれども、僕は何でも好きになりたいと思っています。ちょっと苦手かな? と感じても、そこで終わりにしないで、気持ちは少しだけでも向けておいて。すると、どこかのタイミングで素敵なポイントが見つかる瞬間がくるんですよ。それは人間同士でも一緒じゃないかな。最初は、苦手だったのに(笑)、知らないうちに大好きになってしまって、仲良くなってしまうような。
――簡単に答えを出さない、ということでしょうか?
松浦 そうです。これは僕自身も仕事や暮らしで注意していることですが、なんでもすぐに答えを見つけがちですよね。たとえば椅子が欲しいとする。すると、どの椅子を買おうかと考えはじめるわけです。でもその前に、椅子が必要という状況を整理することからはじめるべきでしょう。どうして僕は椅子が欲しいのか。そういうことを考えないと、モノとの付き合い方はもちろん、出合いの筋道もつきにくい。
作原 そうやってひとつひとつのアイテムに出合っていくなかで、はじめからインスピレーションを感じたり、最初はなんとも思わなかったのに何回か見ているうちにすごく好きになっていったり。出合いを大切に、集めていく過程も楽しめるというのが、インテリアのいいところだと思います。
松浦 とはいえ、自分の買い物が100発100中なのかというとそうではない。そこは成功と失敗の繰り返しです。きっと負け越していますよ。
ボクの勝手な名言がありましてね。
「買わなきゃ何も分からない。それが何かを知りたければ、無理してでも買う!」
買って、万一失敗して、次の日に泣きながらゴミ箱に捨てたとしても、そのゴミ箱に捨てるまでの間に得られた経験と知識って、ものすごく大きいですよ。それは決して無駄にならない。カタログや、お店で見るだけで、アレがいいコレがいいと言ってたんじゃダメです。
EVENT|「レクサス」によるワークショップ第7弾をレポート
インテリアスタイリスト 作原文子×『暮しの手帖』編集長 松浦弥太郎
モノと暮らしのいい関係(2)
「吟味して選んだ“よいモノ”をどう暮らしに調和させるのか?」
ライブディスプレイで、作原さんがコーディネイトポイントを指南
イベント前半では、3人が購入したアイテムをその思い出とともに紹介。松浦弥太郎さんは初めて自宅インテリア画像を公開するなど、盛りだくさんの具体例を披露した。代わって後半では、松浦さんが“僕の先生”と語る大切な私物書籍、約50冊を題材に、インテリアスタイリストの作原文子さんが会場の本棚をコーディネイトしてみせるライブディスプレイでスタート。トーク中の限られた時間内とはいえ、その素晴らしい出来栄えに松浦さんの表情もほころんだ。
またこの日、参加者には“新生活”をイメージした本やアイテムを持参してもらい、それらをもとに、個別に対話する機会も設けられた。万年筆などの日用品から、なかにはオリーブオイルや祝儀袋といった変わり種も登場し、それぞれの興味深いエピソードに耳を傾けた。また婚姻届を写真に収めて持参された参加者に、祝福の拍手が送られる場面も。3人の軽快なトークはまだまだ続く。
――後先考えず、買って、使ってみて。その感触だったり音だったりを五感で感じないとダメですね。
松浦 ええ。でも、先述のとおり、僕は暮らしやインテリアを考えるとき、何かを揃えるなら、(実際に購入に至るまでには)それなりの時間が必要だと思います。よく“器”ができるといっぺんにモノを揃えたくなっちゃう。たとえば引越した直後の状態などです。でも一気に全部を揃えようとすると、たいていは失敗します。ホント。だからそこはぐっと気持ちを抑えて、自分がどう暮らしたいのか、よく向き合って悩んでください。僕は3年とか5年がかりで悩むことも普通にある。そうやって悩むことは豊かなことだと思います。
――逡巡(しゅんじゅん)って結構おもしろいですよね。
松浦 いいもの、素敵なもの、美しいものってなんだろうか? そう考える時に、そのモノ自体が答えてくれるのではなく、「本当に豊かな生活ってなんだろうか?」と逆に自分に問いかけてくれる。そういうモノが身近にあることが、一番幸せじゃないだろうかと僕は思っています。いわゆるモノとの対話ですね。それと、これは作原さんに質問です。自分が少しでも手を加えることで、素敵なインテリアを目指せる方法があれば教えてもらいたいのですが、いかがでしょう?
作原 モノを飾ったり、置いたりという行為において、そこにモノに対する思い入れや、自分で選んだという意志があれば、自然と気持よくなっていく気がするんですよね。新生活シーズンを機に、部屋に植物を置く、本を飾ってみる、好きなCDジャケットを飾ってみる、クッションの色を替えてみるなど、ほんの少しでもいいので、まずは限られたコーナーに的を絞り、自分の興味を注いでみてはいかがでしょうか?
イベント会場は終始、和やかな雰囲気に包まれていたものの、皆、トークに対して真剣に聞き入っていた。そして作原さんの最後のひと言に、参加者全員が背中を押されたようだ。自分にとって本当に“いいモノ”を選び、それらに囲まれて暮らすことで、ライフスタイルは豊かになる。そう誰もが確信した。
松浦 とにかく試してみることが大事です。上手くいくかはわからなくても、好奇心をもって並べて、置いてみる。ぜひ実験をしてみてください。
作原文子さんがディスプレイを手掛けた
「松浦弥太郎の本棚」書籍リスト
The House At Pooh Corner / A.A.Milne
The Long Valley / John Steinbeck
The Pill Versus the Springhill mine disaster / Richard brautigan
Zen and The Art of Motorcycle Maintenance / Robert Pirsing
キャンティの甘いお菓子甘くないお菓子
シャーロック・ホームズの挨拶 / 長沼弘毅
シャーロック・ホームズの紫姻 / 長沼弘毅
シャーロック・ホームズの世界 / 長沼弘毅
シャーロック・ホームズの対決 / 長沼弘毅
シャーロック・ホームズ秘聞 / 長沼弘毅
たった一人の山 / 浦松佐美太郎
びんぼう自慢 / 古今亭志ん生
ブツブツとうさんほらふきノート / 長 新太
フランス料理の手帖 / 辻 静雄
考えることについて / 串田孫一
焼物の本 / バーナードリーチ他
水の変態 / 宮城道雄
蒼蠅 / 熊谷守一
大切な雰囲気 / 小出楢重
東京のドン・キホーテ / 小林信彦
東京のロビンソン・クルーソー / 小林信彦
服飾の読本 / 花森安治
米沢の雪 / 木村東介
暮しの眼鏡 / 花森安治
北と南の話 署名入り / 畦地梅太郎
落ちていた将棋の駒について / 高橋義孝
料理王国 / 北大路魯山人
ニューベーシックな服と日用品
『アンド プレミアム』5月号
“つくりのいいもの。”
定価|648円(税抜)
発売日|3月20日(木)
発行元|マガジンハウス
http://magazineworld.jp/premium/
ワークショップの終わりに、作原さんが「今回のテーマにぴったり」として自身の参加する雑誌『アンド プレミアム』最新号を紹介してくれた。3月20日(木)に発売された本誌では、“つくりのいいもの”をテーマに洋服と日用品を特集。作り手たちのこだわりや、人気スタイリストのモノ選びなど、さまざまな取材を通して明日の暮らしを豊かにする“つくりのいいもの”を紹介する。作原さんは普段どのようにモノを選んでいるのか? 目利きの視点を参考にしたい。
INTERSECT BY LEXUS
東京都港区南青山4-21-26
Tel. 03-6447-1540
営業時間|1F CAFE & GARAGE 9:00~23:00
2F LOUNGE & SHOP 11:00~23:00
NTERSECT BY LEXUS事務局
Tel. 0800-080-0830 (平日9:00~20:00 ※土日祝日除く)
www.lexus-int.com/jp/intersect/tokyo/