Audi A7|アウディ A7 イタリアでの試乗
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2015年2月26日

Audi A7|アウディ A7 イタリアでの試乗

AUDI|アウディ A7

豊かな空間を構築した、新型ハッチバック(1)

アウディは2010年秋、「あたらしいマーケットセグメントに狙いをさだめた」とする新型スポーツバック「A7」を発表。イタリアはサルディニア島で開催された報道関係者向け試乗会から、モータージャーナリストの小川フミオがインプレッションをお送りする。

文=小川フミオ写真=アウディジャパン

多目的なライフスタイルビークル

アウディA7スポーツバックは、全長4.9m、全幅1.9mという大ぶりなサイズをもつニューモデル。注目すべきは、通常のセダンでなく、テールゲートを備えたファストバックスタイルを採用していること。長尺物もいれることのできるテールゲートが広がっているため、さまざまな用途を見据えた、多様性のあるライフスタイルビークルといえる。日本での発売は2011年になる予定だ。

試乗|AUDI A7 photo02

試乗|AUDI A7 photo03

A7スポーツバックの特徴について「A7スポーツバックは、クーペのエモーショナルなキャラクター、セダンの快適性とプレスティッジ性、ステーションワゴンの実用性を融合したクルマです」と、プロダクトマネジャーを務めたニルス アントン氏は語っている。

アルミ製パーツを多用したクーペのようなボディ

A7スポーツバックは、先頃本国でモデルチェンジした新型A8と一部パーツモジュールを共用している。サイズ的にはA8とA6のギャップを埋めるモデルだ。ファストバックはクーペのようになだらかなリアのスタイルをもちつつ、ステーションワゴンのように大きく開閉するテールゲートを備えたスタイル。わが国にも1980年代にトヨタ コロナ リフトバックや、日本では発売されなかったが3代目日産プリメーラでも同様のデザインが採用されたこともある。英国でとくに人気のあるスタイリングでもある。

A7スポーツバックの試乗の舞台となったのは、地中海に浮かぶサルディニア島。リゾートとしてしられるコスタ ズメラルダで、世界各地から招いたジャーナリストに、A7スポーツバックの「肝」が説明された。

「アルミ製パーツを多用した軽量ボディと、パワフルできわめて高効率なV6エンジン、スポーティなシャシーと、先進的なドライバーアシスタンス/マルチメディアシステムを備えています」と、先のアントン氏は語った。場所は空港の前に設営された特設会場。ミュンヘンからのチャーター機でオルビア空港に到着したジャーナリストはラゲッジを手に、そのまま試乗会へと導かれることとなった。

AUDI|アウディ A7

豊かな空間を構築した、新型ハッチバック(2)

3.0リッターTFSIエンジン搭載のクワトロタイプを導入

A7スポーツバックに用意されるエンジンは、本国では2.8リッターおよび3リッターの直噴ガソリンと、3リッターの直噴ディーゼルの3つとなる。駆動方式は前輪駆動あるいはフルタイム4輪駆動のクワトロシステムの2種類。さらに変速機は、2.8リッターガソリンおよびディーゼル搭載の前輪駆動モデルには無段変速の「マルチトロニック」が、3リッターガソリンをはじめ、すべてのクワトロモデルにはデュアルクラッチシステムの7段Sトロニックが組み合わせられる。

日本に輸入されるのは、3リッターV型6気筒にスーパーチャージャーを搭載した3.0TFSIエンジンのクワトロ。かつ、クワトロGmbHが手がけるS-Lineというバージョンがくわわる可能性がある。車高が標準より20mm低い専用スポーツサスペンションを装備するなど、よりスポーティなキャラクターがS-Lineの特徴だ。

3.0TFSIのV6は、排気量をいたずらに大きくすることなく、過給でパワーをおぎなうと同時に、各部にこまかく手がいれられて燃焼ロスを抑えたところに特徴がある、とされる。300psの最高出力と440Nmの最大トルクは充分すぎるほどで、高効率化のたまものといえる。

試乗|AUDI A7 photo06

試乗|AUDI A7 photo07

精緻なトルクコントロールによる安定した走り

A7クワトロには、新世代のクワトロドライブが採用されているのも注目点だ。さきにわが国で発売されたRS5と同様の、新設計のセンターディファレンシャルギア機能をもつ。前輪か後輪のどちらかが空転すると、グリップのある車軸のほうにトルクを分配することで、走行安定性を確保するシステムだ。通常は前車軸に40パーセント、後車軸60パーセントのトルク配分だが、スリップの状況によっては前車軸に最大70パーセント、あるいは後車軸に最大85パーセントのトルクが配分される。

さらにA7クワトロでは「トルクベクタリング」なるシステムを採用している。たとえばコーナリング時に内側車輪のスリップ率が高くなっていることを読み取ると、車両が自動的に軽くブレーキを作動させる。外側車輪へのトルク配分を増し、結果、無理なくカーブを曲がっていけるためのシステムだ。

もうひとつA7クワトロにオプションで用意されるシステムに「スポーツディファレンシャル(ギア)」がある。高速でコーナリングをおこなうための装置だ。コーナリング中に外側後輪へのトルク配分を適切におこなうことで、ニュートラルなステアリング特性を実現するというものだ。

最近のアウディに乗っているひとにはおなじみの「アウディ ドライブセレクト」も標準装備されている。「コンフォート」「ダイナミック」「オート」「インディビデュアル」という4つのモードでは、変速機、パワーステアリング、エンジンコントロールを、特性におうじて選ぶことができる。ステアリングホイールのパワーアシストの量や、シフトポイント、そしてアクセルペダルの特性が変わる。なので、とりわけ「ダイナミック」を選択すると、クルマの豹変ぶりに驚くことになるだろう。

試乗|AUDI A7 photo08

AUDI|アウディ A7

豊かな空間を構築した、新型ハッチバック(3)

スポーティさと快適性の共存

室内は豪華で、あたらしいテーマで構成されたダッシュボードがとりわけ目を惹く。メカニズム的に多くの特徴を備えているA7スポーツバックだが、同時に、室内の豪華さと居心地のよさも特筆すべきである。2,914mmとA6より長いホイールベースのおかげで後席のレッグルームも余裕があり、さらにトランクスペースは前後に長く広大。快適性と実用性が両立している。

「A7スポーツバックでは、スポーティさと快適性の両立がテーマだった」とプロダクトマネジャーを務めたN アントン氏がいうように、操縦してみると、快適性の高さが印象ぶかい。乗った車両はオプションの20インチホイールを履いていたが、ゴツゴツとタイヤが暴れるかんじはないのは注目に値する。とくに後輪も落ち着いていて、後席の居心地がよいのは、A8の下に位置するグランドツアラーというキャラクター設定ゆえだろう。とても好ましく思えた。

試乗|AUDI A7 photo10

立ち上がりがはやいスーパーチャージャーが組み合わせられた3リッターV6は、おかげでスムーズ。低回転域から力強さを感じさせ、2000rpmからは強大なトルクバンドをつかって、大型ボディを意識させない、軽やかといってもいいような動きを見せる。加速性もよく、高速では快適な巡航ができる。

洗練された操縦性

A7スポーツバックの軽快さには、ハンドルを切ったときに感じる車体の追従性のよさも影響しているはずだ。ノーズを軽くしたぶん、回頭性がよくなっていて、アクセルペダルの踏み込みに対しての反応は速いし、また、カーブを曲がるのも気持ちがよい。

積極的に運転を楽しみたいときは「ダイナミック」モードがいい。ダンパーは硬くなり、電気式ステアリングの反応は鋭くなり、かつエンジンレスポンスがぐっと向上するからだ。試乗の舞台となったサルディニア島には山が多い。高い山は少ないのだが、低くても山と山のあいだを縫うように曲がりくねった道がつくられている。そのためA7スポーツバックを楽しむ舞台としては悪くない。1.9メートル幅のボディだが、ハンドリングがシャープなので狭い道幅でも、驚くほど取り回しがよく、対向車があっても冷や汗をかくことはない。

新型A8にはじまり、A7スポーツパック、そして来年本国デビューといわれる新型A6と、アウディはさらなる進化の過程にある。より洗練された操縦性が、ひときわ光っている。

試乗|AUDI A7 photo11

Audi|アウディ A7 Sportback
ボディ|全長4,969×全幅1,911×全高1,420mm
エンジン|3.0ℓ V型6気筒DOHC
最高出力|220kW[300ps〕/5,250-6,500rpm
最大トルク|440Nm/2,900-4,500rpm
CO2排出量|139g/km
燃費|5.3ℓ/100km
駆動方式|フルタイム4輪駆動
トランスミッション|7段Sトロニック
価格| 日本での価格は未定
(注:スペックは本国仕様です)

アウディコミュニケーションセンター
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