シトロエン C4 ピカソに海外で試乗|Citroen
Citroen C4 Picasso|シトロエン C4 ピカソ
Citroen Grand C4 Picasso|シトロエン グラン C4 ピカソ
唯一無二のミニバン
シトロエン C4 ピカソに海外で試乗
9月のフランクフルトモーターショーにおいて、シトロエン「C4 ピカソ」がついにフルモデルチェンジを果たした。世にあまたあるミニバンとは一線を画すアバンギャルドなスタイリングが、さらに進化した2代目だ。東京モーターショーでも2014年秋の国内導入を前提として出展されるこのモデルに、ひとあし先に試乗した金子浩久氏がリポート。
Text by KANEKO Hirohisa
似て非なる姉妹
あたらしいシトロエン「C4 ピカソ」には長短2種類のボディが用意され、長い方が「グラン C4 ピカソ」、短い方が「C4 ピカソ」と呼ばれる。グラン C4 ピカソが3列7人乗りの定員をもつのにたいして、C4 ピカソは2列5人乗りだ。ちなみに、寸法のちがいはグランC4ピカソが169mm長く、21mm高い。ホイールベースは55mm長い。
2台は、ボディの長さだけでなく、外観もその趣を大きくたがえている。
まずなんといっても、グラン C4 ピカソのマットグレー色のルーフバーに眼がいってしまう。おおくの場合、ルーフキャリアを固定するためのルーフバーは屋根の上だけに張られるものだが、グランC4ピカソのそれは左右のAピラーに被さるように始まり、Dピラーに沿って終わっている。
試乗車の明るいシルバーなどのボディカラーはコントラストが強く映るから、ルーフバーは壁に絡まる蔦のように見えてくる。
C4 ピカソにはルーフバーがなく、かりにクロームメッキされた前後のドアサッシが視覚的アクセントとなっているからすぐにそれとわかる。2台の外観上のちがいはより明確で、その点が先代とことなっている。
Citroen C4 Picasso|シトロエン C4 ピカソ
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唯一無二のミニバン
シトロエン C4 ピカソに海外で試乗 (2)
ほかの何物にも似ていないミニバン
そのいっぽうで、フロントとリアの見え方は共通しているけれども、これがまたサイドビューに負けず劣らず個性的なのである。
フロントフェイスはシトロエンのシンボルマークである“ダブルシェブロン(Vの字を逆さに縦にふたつつなげたもの)”のクロームメッキエンブレムが車幅一杯に伸ばされてグリル化され、その左右端にLEDが埋め込まれている。これはデイタイム ランニングライトで、ヘッドライトはその下。さらに下に独立しているのはフォグランプだ。
これまでずっと、クルマのフロントフェイスを形作っていたのはグリルとヘッドライトだった。1980年代中頃ぐらいまでは、グリルの大きさとヘッドライトの径の大きさはクルマの価格とステイタスに比例していたくらいだ。
プロジェクターをもちいた異形ヘッドライトと空力ボディが全盛の現代においても、グリルとヘッドライトが存在感の大きさをしめしていることにかわりはない。しかし、グラン C4 ピカソでは、その存在感を極力小さくしようとしている。“もうヘッドライトは大きくなくてもいい。LEDは小さくても明るいから”というLEDの効能を生かした真に未来的なデザインだといえるだろう。じつにシトロエンらしい。
さらに、グラン C4 ピカソには、シトロエンの“C”の文字をかたどったというテールライトユニットにLEDが多用されており、近づいて見ると凝った造形がほどこされている。
それら独特な造形ディテイルによってグラン C4 ピカソとC4 ピカソは素晴らしく個性的で、世界中のどのミニバンにも似ていないのである。
Citroen C4 Picasso|シトロエン C4 ピカソ
Citroen Grand C4 Picasso|シトロエン グラン C4 ピカソ
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非日常を演出する
じつは新型グランC4ピカソはあたらしいプラットフォーム「EMP2」を採用したことによって、ボディ全長を先代とかえずにホイールベースをこのセグメントでは最長の2,840mmへと伸ばすことができた。
その結果、2列目、3列目シートの空間もセグメント最大値を確保している。同様に、トランク容量も69リットル拡大された。実際に2列目シートに座ってみると、足元も膝回りもじゅうぶん以上のスペースが確保されていて、とても余裕がある。
3列目も上半身まわりは余裕があるのだが、床が2列目よりも高くなっているので、“体育座り”というほどではないが短い我が両脚でも折り曲げねばならない。子供用か短距離用とかんがえておいた方が良いだろう。
背もたれや座面の折り畳み方などには日本車のような軽さや滑らかさは無いが、そのかわりの堅牢さが頼もしい。
グランC4ピカソもC4ピカソも、インテリアは外観同様に大胆かつユニークだ。いわゆるメーターパネルはドライバーの眼の前には存在せず、シートダッシュボード中央にある。
5ドア ハッチバックの「C4」のそれのようなシンプルなものではなく、12インチの大きさを持つフルカラーの高解像度パノラマスクリーンにすべての情報が集約されて表示される。
スクリーンは2画面ないしは3画面にも分割することが可能で、ハンドル上のスイッチで、速度やエンジン回転などをはじめとするさまざまな情報を切り替えながら表示できる。だから、いわゆる“針”は一切ない。空調の吹き出し口が並び、その下にはさらにもうひとつスクリーンが設けられ、空調やエンターテインメント、インターネットへの接続などができる。
革シート表皮の切り返しも大胆な左右非対称デザインだったりして、非日常感を演出している。どうしても生活感と日常感に溢れてしまう日本車とはおおいにことなっている。
Citroen C4 Picasso|シトロエン C4 ピカソ
Citroen Grand C4 Picasso|シトロエン グラン C4 ピカソ
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ナチュラルな走りっぷり
メカニズムでもっとも大きな進化はアイシンAW製の6段ATの採用だ。アップもダウンもこちらの意志を先取りするかのように賢く変速していく。1.6リッターガソリン直噴エンジンはキャリーオーバーだが、6段ATとの組み合わせによって一層の精彩を放つようになった。排気量の小ささが信じられないほど、巨体を加速させていく。特に、ヨーロッパの一般道で多用される70km/h前後からの加速域でのパンチに物足りなさは感じない。イザとなればパドルシフトも使える。
全長をかえずにフロントオーバーハングを116mm短縮し、エンジン搭載位置を50mm下げたことによる軽快かつ安定感のあるハンドリングも好印象を残した。乗り心地も柔かみがあって、とても心地良い。
2台は同じEMP2プラットフォームから生み出された長短コンビと考えてよく、ボディの長さに起因する動力性能やハンドリングと乗り心地のちがいは想定の範囲内だった。
個性的な内外デザインと上質なインテリア、ナチュラルな走りっぷりが魅力だ。豊富な装備と仕様は日本仕様の決定を待つしかないが、国産とはひと味もふた味もちがったミニバンを求めるひとは、最初に検討する価値のある2台だとおもう。そして、どちらもその期待に応えてくれることだろう。
Citroen Grand C4 Picasso|シトロエン グランC4ピカソ
ボディサイズ|全長 4,597 × 全幅 1,826 × 全高 1,634 mm
ホイールベース|2,840 mm
トレッド 前/後|1,581 / 1,584 mm
エンジン|1,598 cc 直列4気筒 直噴DOHC
最高出力| 115 kW(156 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240 Nm/ 1,400-4,000 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン・ストラット式
サスペンション 後|トーションビーム式
タイヤ 前/後|205/55R16
トランク容量|645 リットル
乗車定員|7 名
※本国データによる
Citroen C4 Picasso|シトロエン C4ピカソ
ボディサイズ|全長 4,428 × 全幅 1,826 × 全高 1,613 mm
ホイールベース|2,785 mm
トレッド 前/後|1,581 / 1,584 mm
エンジン|1,598 cc 直列4気筒 直噴DOHC
最高出力| 115 kW(156 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240 Nm/ 1,400-4,000 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソン・ストラット式
サスペンション 後|トーションビーム式
タイヤ 前/後|205/55R17
トランク容量|537 リットル
乗車定員|5 名
※本国データによる