三原康裕|日本モノづくり 第7回 細尾の西陣織×TUMI(後編)
FASHION / MEN
2015年7月28日

三原康裕|日本モノづくり 第7回 細尾の西陣織×TUMI(後編)

MIHARAYASUHIRO|三原康裕

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第7回 MIHARAYASUHIRO × HOSOO × TUMI(後編)

ファッションデザイナー三原康裕氏が、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしかつくれないあたらしいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO(MMM)」。第7回となる今回は、「株式会社 細尾」とのオリジナルファブリックを使用したTUMIとのコラボレーションバッグをフィーチャー。前編では、三原氏と細尾氏の出会いを振り返り、西陣織の歴史とその現在を語り合った。後編では、今回のバッグコレクションが完成するまでの経緯を、ふたりが話してくれた。

前編はこちら

Photographs by MIKAMI MakotoText by IWANAGA Morito(OPENERS)

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西陣織を洋服に使うことの難しさ

細尾 三原さんからは最初に、迷彩の地紋様のなかに細かい和柄を織り込んで、上にも刺繍のように滝や梅など、和柄の吉祥紋様を織り込むという、かなり複雑なレイヤーのリクエストをいただきました。それは、過去にまったくやったことがないものだったのです。

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三原康裕氏

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株式会社 細尾の12代目・細尾真孝氏

ファーストサンプルの段階では一日に1メートルも織れないような、量産に入ったときに本当に織れるのかな、というもので。そういうところから何回もやりとりを重ねていきました。毎日実験を繰り返して、職人と頭を悩ませながらトライして、最終的に仕上がったときは、かなりの手ごたえがありましたね。

三原 私たちが細尾さんの生地を見て難しいと思ったのは、そこまでの素材を扱ったことがなかったというところです。いまはだいぶ改良されて経糸も増えたりして、あのころよりは進歩しているのですが、制作当初は洋服寄りの生地としては分厚かったんですよね。服地にするには、ある程度の薄さが必要です。それをなるべく最小限でとどめてもらうのが、一番難しいところだったんだろうな、と思います。

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複雑なレイヤーを実現しながら、服地として使えるものにするためには、細尾さんのほうですごく考えてもらいました。そこにはすごい数の緯糸と経糸の組織の複雑さがあるはずです。

いろんなことをお願いすれば、細尾さんはどんどんやってくださるのですが、生地が厚くなり、プロダクトとしての欠点が生まれ、洋服には適さないものになっていきました。現在は改善されているのですが、当時はそのような悩みもありましたね。

偶然生まれた「日本の黒」

三原 今回使用した迷彩と蛇柄の記事には、細尾さんとつくるなかで、ある発見がありました。それは角度によって柄の見え方変わるということで、一番上に黒いレイヤーでフィルターがかかるような現象が起きたんですよね。それは偶然の発見で、本当は生地の裏側の表情だったんですけど、それをおもしろいと思い、採用しました。漆の黒のような「日本の黒」を感じたんです。

すごく不思議なんですよね、光の方向で柄の表情もどんどん変わる。さらに今回は、細尾さんに、ゴールドの箔を張ったものにくわえて、グリーンやブルーの、色のついた箔を張っていただいたんです。いままでシルクの糸で表現していた色を、光沢のある箔を使用して、より一層のきらびやかさを出しているんです。いやらしく光るのではなく、言葉では表現しきれない、暗闇のなかから浮き出てくる光のようで、すごくエレガントな色合いですよ。そこには、自分たちが日本人だからこそ西陣織にたいして感じる美しいものがあるのかも知れない。

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上が今回使用したファブリックの裏面

細尾 フィルターは10枚ほどかかっています。そのなかの下層部に緑や金の箔があるんです。それがなんとも言えない奥ゆきになっているんでしょうね。奥のほうから浮かぶ緑を出すときに、生地の裏側をみてもらえばわかるのですが、裏に糸を渡らせて、レイヤーの下層部に発色の良い緑を敷いています。

一瞬のチラっという光をみせるために、経糸には深くブラックをかぶせています。光による角度だったり、見え方を計算して。なのでこの記事は、裏面のほうが表面より派手なんです。染めではなかなかこの奥ゆきは出せないはずです。いかに織り物のストラクチャーをデザインして、見たことのない生地にするかというところが、うちが頑張らなきゃいけないところだと思います。

海外の反応

三原 ジャーナリストの方々が、細尾さんと僕らのコラボレーションを“素晴らしい結婚”だと、これはミハラにしかできないクリエイションだと書いたこともありました。

日本古来の伝統をこのようなかたちで継承していくことを、非常にイノベーティブだと評価されました。ほかにも、あるメゾンが、コレクションでの西陣織を見て、気になって日本の生地屋さんに相談しているところもあるというのを、人づてに聞きましたね。直接細尾さんに聞いている会社もあったそうですし、ほかの業者さんにリサーチに行かれたり、という話も。そういう点ではとてもインパクトがあったことだったと思うんですよね、海外にたいしても。

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細尾 そうですね、本当にトップメゾンといわれるようなところからもお問い合わせがありました。2011年の1月(2012-13秋冬)のショーが終わった翌日にすぐコンタクトがありまして。海外はかなりアンテナを立てているようでしたね。

でもやっぱり、僕たちのなかだけでは絶対に生まれなかった生地で、三原さんがおっしゃったように、“素晴らしい結婚”というかたちで、はじめて実現したものです。工房のメンバーもみんな、病みつきになりそうだと話をしていましたね。僕らも常に進化しつづけていかないといけないですから。

三原 今回のバッグコレクションの企画は、僕らも細尾さんもTUMIさんも、完成したものには満足できた部分があると思います。可能な限り、つづけていきたいですね。

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