三原康裕|日本モノづくり 第7回 細尾の西陣織×TUMI(前編)
Fashion
2015年7月28日

三原康裕|日本モノづくり 第7回 細尾の西陣織×TUMI(前編)

MIHARAYASUHIRO|三原康裕

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第7回 MIHARAYASUHIRO × HOSOO × TUMI(前編)

ファッションデザイナー三原康裕氏が、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしかつくれないあたらしいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO(MMM)」。今回は、2014春夏コレクションでお目見えした「TUMI(トゥミ)」とのコラボレーションバッグをフィーチャーした。それは、京都西陣織の伝統を守りながらイノベーションをおこなっている「株式会社 細尾」とのオリジナルファブリックを使用したバッグコレクション。1688年からつづく株式会社 細尾の12代目・細尾真孝氏と、三原氏の対談をお届けする。

Photographs by MIKAMI MakotoText by IWANAGA Morito(OPENERS)

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西陣織で打ち出すラグジュアリーなTUMI

三原 個人的にバッグを愛用していたということもあり、ぜひミハラヤスヒロのコレクションで発表したいという想いでTUMIさんにコラボレーションのオファーをしました。そのなかで細尾さんの西陣織をテキスタイルに使用し、自分たちが考えるラグジュアリーなTUMIを考えて今回、打ち出すこととなりました。

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このトロリーはTUMIの定番の型ですね。ボストンはあたらしく発表されたものです。TUMIらしいシンプルなデザインと使いやすさにくわえて、高級感を求めるうえで、持ち手のかたちや仕上げの美しさ、全体的なバランスを追求したと聞いています。
バックパックは、正面にハンドルがついたユニークなデザイン。内側には仕切りが入っており、パソコンなどの機器を収納しやすくとても機能的です。そこに今回、細尾さんと作った迷彩と蛇柄をシグネチャーのファブリックとして採用しました。

細尾 西陣織は、もともと帯に使うようなものなので、堅牢度は高いんです。研究でもシルクか蜘蛛の糸かというところで、天然素材のなかでも一番強い繊維と言われています。今回の生地は、バッグに使うことを目的としているので、かなり打ち込みは強く、うちで扱っている生地のなかでも強度の高いものになります。

1200年の歴史をもつ日本のテーラーメイド

三原 2年前ですかね。ちょうど、いまぐらいの時期だったと思うんですけど。知人の紹介で、京都の西陣の工房を見学させていただく機会がありまして。それが細尾さんとの出会い。

細尾 それから最初の共演となるのが、1月に発表した2012-13秋冬のパリでのコレクションですよね。迷彩の西陣織を使っていただいて、それから秋冬のコレクションはレギュラーでお手伝いをさせてもらっています。

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2013-14秋冬 メンズコレクションより

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弊社はもともとインテリアの分野では海外で展開していたのですが、ファッションという文屋ではやったことがなくて。とりあえず三原さんに工房を見ていただいて、なにかいい仕事ができればということでご案内したのがきっかけでした。

細尾が創業したのは1688年ですが、西陣織自体は1200年前から存在しています。いまでこそ量産の帯というのが一般的な西陣織のイメージだと思うのですが、じつは、そうなったのはここ100年、戦後のことなんです。それ以前は1000年間、京都に都があった時代にドメスティックなハイエンドのお客様――具体的には天皇、貴族、江戸時代ならば将軍や大名、あとは寺社、仏閣の関係――そういう方々のテーラーメイドを織りつづけてきたのが西陣の歴史です。京都では「御誂え」という言い方をしますね。

そして現在、ミハラヤスヒロさんと開発している生地は、この「箔」を使ったものです。和紙の上に本金を張って、それを細かく裁断して織り込んでいます。

じつは、この素材自体は300年以上前に開発されているものなんです。逆に言えば、1000年を越える歴史のなかで生まれてきた、見たこともないような素材が、西陣織には数多くあるんです。それを武器に、イノベーティブなファブリックの開発をつづけています。

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三原 僕が細尾さんの工房で出合ったのは、西陣織という伝統的な生地というイメージを超越した世界でした。西陣織は幅が狭くて、30センチほどしかないんですよね。それは着物の帯などの用途に適した幅なのですが、細尾さんに会う前は、そのような学校で教わったステレオタイプの西陣織しか想像できなかったんです。

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しかし実際に細尾さんの工房で、150センチ幅の織機が稼動していてるのを目にして、驚かされました。そして、そこから織られる生地も、僕がイメージしていた西陣織をはるかに上回るものでした。デザインも、いわゆる和柄だけではなく、自然の表情を抽象的に表現しているものなどもあり、さまざま。インテリアの分野で、壁紙や椅子に張る生地を作ってこられたこともあり強度もありますし、“デザインされている” というのが印象的でした。

細尾さんの西陣織をどのように使うかは、すごく悩みました。例えばデニムであったりトレンチコートの生地だったり、ましてやミリタリークロスなんかは、生地で洋服が想像できます。じゃあ細尾さんの織る、いままで僕が見たことがないような、宝石のような生地をどのように表現するのか?というのは、考えさせられましたね。

細尾 私たちにとっても、三原さんのリクエストは、いままでインテリアでやってきたところと、まったくちがう角度のものだったんですよね。最初は戸惑う部分があり、本当にできるのかな、という気持ちもあったのですが、同時に自分たちの使っていなかった細胞が刺激されて活性化していくような感覚を覚えました。三原さんといっしょにものづくりをしていくなかで、自分たちも成長できているなという実感はありました。

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