プジョー 208 GTi に試乗|Peugeot
Peugeot 208 GTi|プジョー 208 GTi
シリーズ最速のスポーツバージョン
プジョー 208 GTiに国内で試乗
プジョーのコンパクトハッチバックである「プジョー 208」の、ホットバージョンである「プジョー 208 GTi」。OPENERSでは渡辺敏史氏による国外試乗記を先日おつたえしているが今回、OPENERSは国内で試乗する機会を得た。ステアリングを握るのは、大谷達也氏だ。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ABE Masaya
栄光の「GTI」を受け継いだ208
かつては優れた実用性や耐久性で名声を博していたプジョーが、あかるく軽快でスポーティなイメージを打ち出すことができたのは1983年にデビューした205のおかげだった。翌84年にはパワフルなエンジンを搭載した「205GTI」もデビュー。
同年、205がベース(といっても外観が似ているだけで、中身はミドシップ+フルタイム4WDと当時最先端のテクノロジーを採用した)の「205T16」で世界ラリー選手権(WRC)への参戦を開始し、圧倒的な強さで85年と86年のタイトルを勝ちとって見せた。
これ以降のプジョーが、205と通底するスポーティさ、そして先進性を採り入れたモデルを次々と投入することでセールスを伸ばしてきたことはご存じのとおりである。
この、プジョーにとっては特別な意味をもつグレードが208にも設定された。それが、ここに紹介するプジョー「208GTi」である。
eugeot 208 GTi|プジョー 208 GTi
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プジョー 208 GTiに国内で試乗 (2)
208はプジョーの本気度をギッシリ詰め込んだモデル
いや、たとえGTiでなくとも、208自体が、プジョーの本気度をギッシリ詰め込んだモデルといえる。彼らが発表した資料を見ると、前述の「205」は全世界で500万台、つづく「206」は600万台に迫る販売台数を記録したとある。ところが、それにつづく「207」は販売台数が明記されていない。
これはあくまでも想像だが、207は205や206ほどのヒット作にならなかったのではないか? でなければ、207の販売台数が205や206と並べて表記されなかった理由が説明できない。
その207もクルマとしてのデキは悪くなかった。よく走ったし、乗り心地も上々だった。したがって、もしも207の販売が低迷したとするなら、その理由は、先代より20cm以上も長くなったボディサイズが受け入れられなかったとしか考えられない。
それでもプジョーはマーケットからのメッセージを謙虚に受け止め、208をとりわけ中身が濃いニューモデルに仕立て上げた。
それはただサイズをコンパクトにしただけでなく、クルマ全体のクオリティを格段に向上させ、既成概念にとらわれないあたらしいデザインをとり入れ、最新のテクノロジーを入念にチューニングして採用したことからもあきらかである。
その進化の歩幅がいかに大きいかは、クルマの品質感がまるでスタイリングにまでにじみ出たかのような、緻密な仕上がりのボディパネルにはっきりとあらわれている。
そんな意欲作の208シリーズにくわわった208GTiが特別なモデルであることはいうまでもない。しかもプジョーは、手持ちのテクノロジーを最大限活用してパフォーマンスを向上させながら、208GTiをただヤンチャなホットハッチに仕立てることなく、オトナが乗っても様になる上質感を与えたのである。
この辺のセンスというか企画力こそ、208GTiのもっとも重要なポイントといえるかもしれない。
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プジョー 208 GTiに国内で試乗 (3)タイトル
逞しいけれど品もいい
208GTiに搭載されるパワープラントは、シリーズ最大の200psを発揮するツインスクロールターボチャージャー付き1.6リッター 直列4気筒直噴ガソリンエンジン。
最高出力82psの1.2リッターエンジンでもよく走る208の軽量ボディにパワフルな200psエンジンを押し込んだのだから、208GTiが弾けるように疾走するのは当然といえば当然である。ただし、リッターあたり125psというスペックからは想像できないほど扱いやすいことも、このエンジンの見逃せない特徴といえる。
実は、試乗当日はおりからの低気圧通過に伴って台風並みの強風と豪雨が荒れ狂うあいにくの天候となったが、そんな悪コンディションでも、208GTiは200psの大出力をもてあますことなく箱根のワインディングロードを駆けぬけてみせた。
これには、低回転から力強いトルクを生み出すフラットなトルク特性に加え、濡れた路面でも確実にエンジンパワーを伝えられるトラクションの高さもきいているはず。
実際、タイトベンドからの脱出でやや深めにスロットルペダルを踏み込んでも、トラクションコントロールが作動することなく、しっかりとクルマを加速させていくことができた。
こうした性能は、適切な前後の重量配分、入念に検討されたサスペンションジオメトリー、そして巧妙なエンジンマウント形式などのたまものだろうが、それらとともに、ストローク初期の動きを比較的ソフトにしたサスペンションセッティングも効を奏しているとおもわれる。多少うねっていてもタイヤは路面を捉えて放さず、いつでも有効なトラクションを生み出してくれたのは、おそらくこのためだろう。
こうしたサスペンションセッティングのもうひとつのメリットは、ゴツゴツとしたショックを伝えることなく、乗り心地が快適なことにある。事実、208GTiはこの種のホットハッチとしては滑らかで、おもいがけずどっしりとした乗り味をしめす。ヤンチャな少年というよりも、むしろ分別あるオトナにこそふさわしい味付けだ。
もっとも、これでハンドリングが鈍重だったらただのファミリーカーだが、もちろん208GTiはそんなことなく、適度なキビキビ感と十分なスタビリティを発揮しながらワインディングロードを走り抜けていく。リアのグリップをしっかり確保しながら、これだけの機敏さを手に入れているあたり、プジョーらしいシャシー・チューニングの上手さは健在だと感じた。
ギアボックスは6MTのみとなるが、その操作感は上々。クラッチも不当に重いとはいえないので、デイリーユースでも問題はないはずだ。
いっぽう、内外装にはGTiらしい装飾が施されているが、スポーティな雰囲気を演出しつつも“子供っぽい味付け”に陥っていないところがまた好ましい。205GTIもそうだったが、「逞しいけれど品もいい」世界観をうまく表現しているようにおもえる。
最後に、208GTiのとびきり魅力的なポイントをひとつお知らせしよう。200psのエンジンをそなえ、充実した装備を誇りながら、価格はベーシックグレードの100万円増しに過ぎない299万円なのだ。
205GTIに憧れながら手の届かなかった世代にとって、これはまさしくバーゲンプライスといえるだろう。
ボディサイズ|全長3,960×全幅1,740×全高1,470mm
ホイールベース|2,540 mm
トレッド 前/後|1,480 / 1,490 mm
最低地上高|120 mm
最小回転半径|5.4 メートル
重量|1,200 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 DOHCターボ
圧縮比|10.5 : 1
ボア×ストローク|77×85.8 mm
最高出力| 147kW(200ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|275Nm/ 1,700 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
ギア比|1速 3.538
2速 2.041
3速 1.433
4速 1.102
5速 0.880
6速 0.744
減速比|3.562
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
タイヤ |205/45R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08モード)|13.8 km/ℓ
燃料タンク容量|50 ℓ
価格|299万円