サントスの精神を体感する、サンフランシスコへの旅 Vol.3|CARTIER
Cartier|カルティエ
サントスの精神を体感する、サンフランシスコへの旅 Vol.3
「サントス ドゥ カルティエ」のNEWコレクションに刺激を受けた編集大魔王。帰国後すぐに、そのスタイルにインスパイアされたファッションシューティングを敢行。過去と現在、伝統と革新が時計の存在感と融合し、いっそう際立つスタイリングに。
Photographs, Styling, Report & Text by SUKEZANE Tomoki Hair by TSUKUI Hiro Model by YanEdit by HATAKEYAMA Satoko
【3日目、そして帰国後】
翌朝は、ホテルで朝食を食べて空港へ。車中、前日の夕方に見たアルベルト・サントス=デュモンの写真を頭に浮かべていると、それをオマージュした写真を撮りたくなってきた。力強い眼差し、立派な髭、凛とした姿勢、などなど、あの偉人をイメージしていると、サントス ドゥ カルティエの魅力が僕の中で異様なほどに膨れあがってきたのである。飛行機の中でもアルベルト・サントス=デュモンの姿が脳裏から離れない。
到着後も3日間は、暇さえあればアルべルト・サントス=デュモンが僕の前に現れた。彼はすでにポストカードを飛び出し、僕の前でカードから抜け出てきたジョーカーのように微笑んで踊り出した。そもそも、僕は1900年前後のパリにいた芸術家の格好が好きだ。アルベルト・サントス=デュモンという格好のモチーフを得たからには、それを僕なりのやりかたでかたちにするしかない。
さて、どのように撮影しようか。僕は頭の中で、次々と詳細を詰めていった。モデルはヤンがいい! モヒカンヘアのヤンだが、付け髭と帽子をプラスして想像してみたら、今回のモデルはヤン以外ないと確信した。時々モデルをお願いするヤンだが、その弾けたリアクションとミュージシャンならではの敏感さが、
僕の中ではアルベルト・サントス=デュモンと重なっていたのである。
さて、服はどうしようか? あの写真を忠実に再現するのは難しい。まずは帽子である。ツバの大きいハットは、私物のグッチ、それにキジマ タカユキから数点。ハイカラーのシャツは見つからないので、近い雰囲気を持つ私物のトム フォード。これは以前、ニューヨークにあるトム フォードでオーダーメイドしたものだ。
ネクタイは2年前にトム フォードで購入したものと、ダンヒルのレジメンタルストライプ。
ジレは2点とも私物で、トム フォードのシングルとアレキサンダー・マックイーンのキルティングタイプを使ってみた。ジャケットとコートはダンヒルのもの。結果、どちらもイメージに近い感じになったと思う。
もちろん、腕にはサントス ドゥ カルティエだ。
アルベルト・サントス=デュモンの写真イメージからは離れ、現代的なコスチュームにコンビを合わせてみた。セブンティーズライクなスーツとタートルネックセーターはダンヒルのもので、サングラスはトム フォード。コンビのケースとセブンティーズなルックスは馴染みやすい。
今回イベントが開かれたサンフランシスコといえば、映画「ダーティーハリー」を思い出すのだが、そう考え出したらヤンが今度はクリント・イーストウッドに見えてきたので、背景やポーズはそれを意識しています。ちょっと強引ですかね。
さて、飛行家としてのアルベルト・サントス=デュモンが夢を抱いて生きた時代は、今と何が違っていたのだろうか?
彼のこだわり抜いた出で立ちにヒントを得て、今回もロマンティックな空想を広げることができた。僕は常に夢を追いかけていたいと思っているが、それはつまり、常に何かに憧れを抱くということなのかもしれないな。そう思ったアルベルトとの出会いであった。