3か月間、4人で頑張った三谷さんの新作舞台「不信」|戸田恵子
3か月間、4人で頑張った三谷さんの新作舞台「不信」
大変遅くなりまして恐縮、今年初のOPENERSの記事になってしまいました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
Text by TODA Keiko
三谷幸喜さん作・演出の新作舞台に出演するのは9年ぶり
2017年も明けてもう4月。2月まではNHKの「スタジオパークからこんにちは」のMCを務めまして、3月から舞台の本番に入るゆえ、番組はひと足お先に卒業いたしました。MCをしていなければお会いすることのない沢山のゲストの皆さんとお話が出来て、本当に貴重な時間となりました。3年間応援ありがとうございました。
※この先、舞台「不信」の一部ネタバレがございますのでご注意ください。
そして新作舞台「不信~彼女が嘘をつく理由」は1月末から稽古に入りました。といっても台本は出来上がってはいなかったのですが(笑)。出来ているところだけを読むだけでも、早、胸がわくわくする台本でした。
三谷幸喜さん作・演出の新作舞台に出演するのは9年ぶりになるとか。やはり何といっても面白い! そして今回はワンシチュエーションではなく場面がどんどん変わる。三谷作品では初の試みでした。全部で34シーン。映画のようにスピーディーにやりたいと。
さて、舞台でスピーディーにやるにはどうすれば? 稽古場でも日々試行錯誤。そしてあのイス6脚が自在に動くことになり、シーンに合わせて位置取りを変えてゆく。自動ではなく手動です。自動に見える手動です(笑)。まさに縁の下の力持ちのスタッフさんが神経を張ってくれました。
セットは無く、イスのみの抽象的な美術で役者も表現をしてゆく。なかなか難しいことでした。セットがあるってつくづく有難いと思ったりして。
何といっても劇場の客席が両サイドにあるということが今回は役者を悩ませるところでした。どちらからも360度まる見えなんです。いつもの倍、神経を使う感じですね。でもお客様にとっては両サイドから観てみたいとの声も沢山あり、実際、日を変えて違うサイドから観られた方は沢山いらっしゃいました。何度もありがとうございました。
今回の「不信」はコメディ・サスペンス。役名もなく、実にシンプルでスタイリッシュな舞台となりました。かっこいい演劇です。2組の夫婦は隣同士に住んでいて、私の役はクレプトマニア(窃盗症)という変わった役どころで、全ては私の役が発端。最終的には夫に殺されてしまう。何とも切ない可哀想な結末で、もう一方の夫婦は隣の夫婦のことに首を突っ込みながら、お互いに不倫をしている?みたいな「不信」が最後には顔を出す。
笑いもあり、ドキドキもあり、伏線も巧妙で、大絶賛でした。三谷さんの新しいチャレンジ同様、私も新たな役どころに挑戦して、また、新しい境地に降り立った感じがしています。
page02. 素敵な共演者に囲まれて
3か月間、4人で頑張った三谷さんの新作舞台「不信」(2)
素敵な共演者に囲まれて
舞台は経った4人の演者だけで2ヶ月の長丁場公演を乗り切りました。
段田安則さんは私が今、最もリスペクトしている日本の俳優さんです。長いお付き合いではありましたが、昨年の舞台「沓掛の時次郎」で初めての共演。思っていた通りの素晴らしい男優さんでした。それは舞台上での技術、たたずまい、そしてプライベートにおいても奢らず全く普通のおじさんです(笑)。稽古場で、舞台上で段田さんのお芝居を観ているだけで心地良く本当に勉強になります。
優香ちゃんは初共演。まぁお顔が小さいこと(笑)。とても頭の良い人で、三谷さんからのチェック(ダメ出し)には恥ずかしそうにしながらもどんどんクリアしていく。ユーモアのセンスもたっぷり持ち合わせています。くるくる変わる表情が本当に可愛らしいです。今回の役(女1)はワル可愛い!! 悪い部分も全く憎めない(笑)。
私の夫役の栗原さんとも初共演。とても真面目でダンディな方です。劇団四季出身の栗原さん初のオリジナル作品。台本が最後まで無いところから始まったのはさぞかしびっくりだったことでしょう(笑)。とにかく誰よりも早く稽古場に来て、稽古帰りも最後まで残って稽古してらっしゃいました。段田さんが私と栗原さんに「本当は俺たちじゃなく、歌の得意な人達に歌ってもらいたいなー!」と苦笑い。栗原さんと、今度はミュージカルでご一緒したいものです。
唯一、栗原さんと二人だけで演じる大詰めのシーンは切なく美しいシーンだと思っています。「夫婦」ってなんだろう…? 「愛」ってなんだろう…? 「形」ってなんだろう…? 色んな事を想って演じておりました。究極「ああ、私はひとりで幸せだなぁ」なんて想ったりして(笑)。しかしながら男2の台詞のあちこちには愛する妻への言葉がありました。毎回それを聞いているだけで胸がしめつけられておりました。愛ゆえの殺人事件です。「私の妻は、私が守ってやらなければ生きていけない弱い女なのです。」「確かに手の掛かる女でしたが、私は妻を愛していた。」舞台袖でこういった台詞を聞くたびに、つくづく愛されてるんだなあと思っていました。
2ステージの日はいつも合間に4人でご飯。サッと食べて休む。ひたすら淡々とやってきました。
小道具達もユニークでした。何といってもマグロの頭!落とすのに苦労しました。足に当たりそうで(笑)。「おさむし」も「おさらば」も愛着ありました。スノードームはとても可愛いですね。舞台上では私は一度も触れませんが。
稽古期間を入れて3ヶ月強!! 誰一人、風邪を引くことも無く、ホント4人で頑張りました。満身創痍、この緊張感の持続は4人にしか分からないのかもしれませんが、とにかく無事に終わってホッとしています。沢山の皆さんにご観劇ご好評頂きまして幸せな舞台でした。心より御礼申し上げます。ありがとうございました。このあとは京都にて連ドラ「遺留捜査」の撮影に入ります。O.A.は7月から。お楽しみに!