航続距離が飛躍的に伸びた新型i3を発売|BMW
BMW i3|ビー・エム・ダブリュー i3
航続距離が飛躍的に伸びた新型i3を発売
BMWの電気自動車「i3」が大幅な航続距離延長を果たし、10月1日より新型モデルとして発売が開始される。車両本体価格は一部の標準装備を見直すことで499万円からと据え置かれたが、クリーンエネルギー自動車補助金の適合により、最大36万5,000円の受給が可能(従来モデルは最大23万9,000円)となるので、実質支払額は下がったことになる。
Text & Photographs by UCHIDA Shunichi
サスティナビリティとは
「“決め手は新しい感覚”、“金額以上の楽しさワクワク”、“カテゴリーを超越したクルマ”。これは実際に乗っているi3ユーザーの感想で、乗っているユーザーのほぼすべてがこのような印象を持っています。その理由は BMW i3がこれまでのクルマづくりとはまったく違う理念、哲学から生まれたクルマで、これまでのクルマの概念を超越した新しいモビリティーソリューションだからです。そしてこれこそがBMWが、あえてBMW iというブランドをつくり、このクルマを取り扱う理由なのです」とは、ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)BMWブランド・マネジメントプロダクト・マーケティングの生野逸臣氏の弁。
このBMW iの使命である重要なキーワードは“サスティナビリティ”だ。BMW iはサスティナビリティの実現に向けて、今できうる技術のすべてを集めてクルマづくりを実践しているという。
このサスティナビリティとは何か。1987年、国連の環境と開発に関する世界委員会ではじめてこの言葉が定義された。それは、将来の世代が自らの要求を充足する能力を失うことなく、今日の世代の要求を満たすことである。
簡単には「次の世代がきちんと自分たちの力で生活していけるように、今と同じような環境を残す。その一方で今の世代が要求するものを満たし、不自由なく生活できるようにしていくというものです」と生野氏。これは、個人でも企業でも社会に影響を与える活動主体ならすべて当てはまることで、「BMWにおいてはもちろんクルマづくりでこれを実践していく。その象徴がBMW iなのです」と述べた。
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サスティナビリティに向けた3つの取り組み
BMWが自動車メーカーとして行っていくこの実践は、大きく分けて開発、生産、利用の三つの領域に分かれている。
開発におけるサスティナビリティの実践として特徴的なのは、BMW iは電気を動力とする前提で車体の設計していることだ。しかし、現状の技術では電気自動車はバッテリーが重く、肝心の航続距離に悪影響を与え、その利点が薄まってしまう問題がある。そこでBMW iでは、炭素繊維強化プラスチックをパッセンジャーセルに採用した。生野氏によると、「炭素繊維で出来たボディは、スチールよりも50パーセント、アルミよりも30パーセント軽いといわれており、車両の軽量化に大きく貢献しています」という。
また、環境負荷の低い素材を使用して製造していることも挙げられる。その一例では、普通の木よりも成長が早く、CO2の吸収量が多いといわれているケナフをダッシュボードやドアパネルに使用していること。また、シートマテリアルにはペットボトルのリサイクル材やウールを使用しているほか、インテリアトリムには表面処理が少なくて済むユーカリの木を使用するなど、より環境負荷の低い素材を積極的に採用することで環境に貢献しようとしている。
そして、BMWi3に使う部品の95パーセントはリサイクルが可能である。「i3は自動車としての役目を終えたあとでも廃棄物として永遠に地球のどこかに残るということは決してないのです」と生野氏は述べる。
生産面ではどうか。BMW iが作られているドイツのライプツィヒ工場には風力発電機が設置されており、この工場で使用する電力はすべて風力で賄われているのだ。さらに、BMW iの独自の生産プロセスを確立することで車両の生産に必要なエネルギーの使用量を50パーセント削減。また、使用する水の量も70パーセント削減している。
3つ目の利用について生野氏は、「BMW iが開発時に電気を動力とするクルマを前提とした理由がここにあるのです」という。都会においてサスティナビリティを困難にするものの1つが自動車による大気汚染だ。BMWはこれを電気自動車に置き換えることで、排気ガスを出さないことから大気汚染を食い止めることができると考えた。また、排気ガスを出さないことは熱を保持するCO2を削減し、ヒートアイランド現象の解消にも貢献できる。さらに通常のエンジンが発生させる熱も出さないという大きなメリットもある。そして、電気自動車にはエンジン音がないので、騒音の削減にもなるのだ。
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静かで加速がよくワンペダルドライブが可能
そういった背景で生まれたBMW i3の特徴は大きく3つある。ひとつはエンジン音を出さないために静かであるという点だ。生野氏は、「音が少ないということは環境にとってもドライバーにとってもいいことです。さらにエンジンが動くことによる振動もないのです」と話す。
次に、動力を電気モーターしたことでの抜群の加速力があげられる。電気モーターは発進時から最大トルクを発揮するため、エンジン車とは比べものにならないほどの加速力を持っている。
そして3つ目はワンペダルドライブだ。BMW i3は、走行時にアクセルペダルから足を離すと強い回生ブレーキがかかるようにあえて設計されている。これは、アクセルペダルの踏み込み量を調整するだけで加速、停止ができるようにするためだ。これにより、アクセルペダルとブレーキペダルをつねに踏み替える必要がなくなり、運転時の疲労が格段に軽減される。「これまでのクルマから乗り換えたドライバーは最初こそ戸惑うようですが、慣れると非常に便利でほかのクルマには戻れないというコメントももらっています」と生野氏。
また、BMWだからこそできたソリューションとしてレンジエクステンダーがある。これは、647ccのガソリンエンジンをリアに搭載。このエンジンは電気を発生させるためだけに用いられ、それはバッテリーを経由して走行用の電気モーターの駆動に利用される。
「このレンジエクステンダーは、単に航続距離を延ばすというメリットだけではありません」と生野氏はいう。「既存の主流のインフラであるガソリンを使えるようにすることで、充電して走る以外に、給油して走るという追加の選択肢を持てるようになるのです。例えば出かけた先によっては充電スタンドがなかったり、また逆にガソリンスタンドがないという状況が起こった場合でも、どちらか片方だけあれば対応できるのでドライバーの長距離ドライブに関する心配はより少なくなるのです」とし、「これは、2輪用の小型エンジンを持っている BMWだからこそできる革新的なスマートソリューションなのです」と語った。
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航続距離大幅増
BMW i3を市場に導入して2年が経過し、電気自動車を市場に普及させるためには航続距離と充電インフラ、そして車両価格が課題としてあがった。そこで新型i3では、これらすべてに挑戦してるという。
航続距離に関しては、一度の充電で390kmの航続距離を達成。さらにレンジエクステンダー搭載モデルの場合には120km航続距離を延長できるので、東京を起点に大阪までの走行が可能な距離(約509km)だ。
これを可能にしたのが新開発のバッテリーセル。エネルギー密度を高めることで、寸法を変えることなく33kWhの大容量を達成した新開発リチウムイオン バッテリーを搭載。これにより、室内空間を一切損なうことなく、航続距離を先代の229kmから70パーセントも伸ばすことができたのだ。なお、搭載するモーターの出力は125kW(170ps)、最大トルクは250Nmを発生。0-100km/h加速は7.3秒である。
次に、充電サービスの無償提供が行われる。BMWが提供する公共充電サービス「ChargeNow」が日本に導入され、新型BMW i3では、最初の12カ月間無償で利用できる権利が付帯される。ChargeNowは提携パートナーである日本充電サービスの充電ネットワークが利用でき、すでに全国で約 1万4,000基の充電ステーションが利用可能だ。
生野氏は、「これにより、ドライバーは安心して長距離ドライブに行け、また、マンション等に住んでいて、自宅に充電設備がないユーザーでも安心して電気自動車に乗ってもらうことができるようになるでしょう」とコメントする。
また、ChargeNow利用のユーザーには専用のスマートフォンアプリ「ChargeNow」が提供され、どこに利用可能な充電ステーションがあるのか、そこに何台あるのか、そしていまそこが空いているのかを調べることが可能になる。
さらに、新型i3では、3年分の法定点検や消耗品の交換を含んだメンテナンスパッケージに、タイヤ補償とキー補償を加えた、BMWサービス インクルーシブ プラスが標準で付帯されるようになった。
新型i3では、新色のプロトニックブルーを追加した計6色のボディカラーに加え、インテリアには新しくインテリアデザインパッケージとして、ATELIERとLODGEを追加。従来のSUITEと合わせ3つのデザインラインが用意される。このデザインラインとレンジエクステンダーの有無を含め、合計6モデルをラインナップ。
エントリーモデルとなるATELIERのレンジエクステンダーなしのモデルでは、一部装備を変更して499万円と、これまでのBMW i3とまったく同じ価格で提供。クリーンエネルギー自動車補助金の適合により36万5,000円の補助金が受けられるので実質的には 462万5,000円からとなり、これまでのi3よりも安い値段で購入することが可能になった。