NIKE|世界の女性トップアスリートによる「THE LOOK OF SPORT:ホープ・ソロ」
FASHION / WOMEN
2015年8月12日

NIKE|世界の女性トップアスリートによる「THE LOOK OF SPORT:ホープ・ソロ」

NIKE|ナイキ

2012 サマーシーズン ナイキウィメン

THE LOOK OF SPORT:ホープ・ソロ(アメリカ女子代表ゴールキーパー)

ホープは、その粘り強さ、やる気、闘志をもって、たんなる世界ナンバーワンではなく、女性サッカー史上最高のゴールキーパーになった――2011年の女子ワールドカップでホープはUSAチームを2位に導き、同大会の最優秀ゴールキーパーという栄誉を得た。チームが凱旋帰国したとき、空港で写真やサインを求めてサッカー選手の卵たちが集まっていったのはホープだった。複数の雑誌の表紙を飾ったのも、深夜や昼間のトークショーに出演依頼が殺到したのも、そしてテレビ番組に誘われたのも、やはりホープだった。

Text by OPENERSPhotographs by NIKE

急激に高まるホープ人気。彼女はどんな性格の女性なのか?

ホープの突然の名声をそのルックスに求めるのはたやすい。身長175センチのすらっとした長身、魅惑的な目、ひとをほっとさせる穏やかな笑み――誰が見ても美女だ。しかしホープの魅力は外見に留まらない。大学時代のコーチのひとりであるエイミー・グリフィンはこう説明する。「ホープはすばらしいスポークスパーソンです。本心を話してくれるんです。ホープが好きなひとも嫌いなひとも、彼女がどういうひとなのかを理解できます」。

2007年、ホープはある重要な国際トーナメントのときに、彼女をベンチに戻し、代わりにチームのベテランゴールキーパーを入れたコーチの決定に公に疑問を呈した。コーチの説明は、そのゴールキーパーが年も上で相手チームとの経験も豊富だから、ということだった。よく語り伝えられているこの話はつぎにこうつづく。試合後のインタビューエリアでホープはコメントする。「あれはまちがった決定です。試合のことをわかっているひとなら誰でもそう考えるでしょう。私だったら絶対に守れていた自信があります」と。あくまでコーチの決定に対してのコメントのつもりだったが、この発言はチームメートに対する批判とも受け取られてしまった。ホープはチームから仲間はずれにされ、追い出されてしまった。メディアによる非難の泥沼にも引きずり込まれた。しかし皮肉にもこの事件によってホープの名は誰もが知るところともなる。

「自分のキャリア上、いまの立ち位置にとても満足しています。他人の手本となれるようなひとになりたいと思っているからです。とはいっても自分という人間を犠牲にせずに自分なりのやり方でやっています。女子スポーツによっていろんなことが変わりましたが、いまでもやはり女性は“チーム”がすべてで、仲の良い友だちであることが大事だと思いたがるひとはいます。でも、試合中はそんなものではないんです。互いに敬意を払い、フィールドに出られるのは最高の選手です。この段階では勝つことがすべてで、勝つことばかりじゃないと言うようなひとはプロのアスリートではありません」。

エイミーの共同ヘッドコーチ、レスリー・ガリモアもこう述べる。「ホープにかんして一番誤解されていることは、彼女はひとの言うことを聞かない、あるいは気にしない、ということです。でもじつは彼女はその真逆です。彼女はとても気を遣うタイプなんです。ただし自分自身の感情もとても大事にします。自分自身の意見をもっているという事実はしばしばマイナスに捉えられていますが、私はすばらしいことだと思います」。

ホープは恩師かつ親友としてエイミーとレスリーを挙げている。「このふたりは地球上で最高のひとたちだと思います」とホープは断言する。「自分に対して責任をもたせるんです。試合中でもそうでなくても、人生のあらゆる場面においてひとのもつ最高の部分を期待してくれるんです」。

ナイキウィメン|ホープ・ソロ 04

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フォワードからゴールキーパーへ。あらたなプレッシャーとの闘い

両親はホープがまだ幼いときに離婚した。父は留守のことが多く、安定して家にはいなかった。このような混乱のなかで彼女の生活のリズムを作ったのはサッカーだった。「スポーツのおかげでトラブルに巻き込まれずにすみました。サッカーをやっていると自分を哀れに思ったり家族の状況を直視したりせずにすんだんです。前へ前へと進みつづけることができました。一生懸命勉強し、そのおかげで大学にまで行けました――スポーツがなかったらすべて絶対に無理です。大学に行くことは絶対になかったでしょう」。大学に入るとホープはコミュニケーション科学を専攻し、サッカーでははじめての連盟選手権出場を果たし、国内でいくつもの表彰を受けた――そして、女子サッカー史上でおそらくもっとも重大な出来事だと思うが、ホープはフルタイムのゴールキーパーに移行する。

昔はフォワードを担当し、高校のときはチームを州の選手権へと導き、全米のスポーツ関連の賞をいくつも獲得した。「私にはゴールの特別な才能があることを皆知っていました」とホープは振り返る。「たぶん知らないのは私だけでした。その事実を受け入れ、没頭するようになるまでにはまるまる4年かかりました。サッカーであれ勉強であれ、私は何でもできると自負していたので、できる限りの努力をしようと思いました。少しずつこのポジションに敬意を払うようになり、ボールに触れても触れなくても、試合に影響をあたえることができるんだということを理解していきました」。

ホープに、ゴールキーパーであることの大きなプレッシャーにどう対処しているのかを聞くと、「プレッシャーには何段階もあります。私自身が自分に課すプレッシャーもあります。大舞台で、メディアや家族、友人たちの前でプレーをするというプレッシャーもあります。よくひとは、アスリートにプレッシャーはつきものだ、と言いますが、たしかにそうなのです。しかし、いろいろなレベルのプレッシャーがあります。ゴールキーパーとしてはそれは、かなりのストレスとなります」。

「試合前はかなりナーバスになります」と打ち明ける。「そのことを知るひとはあまりいないのですが。ただ、私はプレシャーがあった方が良いプレーができます。おそらくそれは、私がいつも何かを証明するためにプレーをするからかもしれません。私にはつねに批判者がいます。私の肩にはチップが埋め込まれていて、おそらくそれが私の人格の一部であり、私の闘いを助けるものの一部でもあります」 悟りと成功へのアプローチとして、頭で考えるよりは行動することを説く自己啓発の書籍を熱心に読む彼女だが、それも、責任の重さにもかかわらず落ち着きと冷静さを装うことのできる優れた才能を大いに説明するものかもしれない。

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最高のゴールキーパーでありつづけること

シアトルはホープが故郷と呼ぶ場所だ。カークランドに築70年の古い家を所有し、投資用物件として売るべきか、改装すべきか悩んでいる。家にはセントルイスに住みプレーしていた時代に救助した猫が2匹と、ゴールデンリトリーバーのレオがいる。レオは兄からのプレゼントで、名前の由来はホープの星座だ。ホープはひと月に3日ほど自由になる日があり、ささやかな楽しみとしてあることに参加する。長靴をはき、レオをドッグパークに連れて行くこと、テレビでバスケットボールかボクシングの試合を見ること、甥っ子と遊んだり、シアトルへ出向き有名な鮮魚市場でディナー用の蟹の足を買いに行く。おそらくそのディナーにはホームメイドのトルティーヤがゆったりとした音楽のなかで供されることだろう。

「とてもわがままなライフスタイルであるように見えるかもしれません。すべてがスケジュールにはいっています。遠征にいったり、ミーティングをしたり。好きなときに電話をすることもできません。誕生日や結婚式にも出られません。それを理解してくれるひともいれば、そうでないひともいます。大きな犠牲だと思います。ひととのお付き合いでもある程度までは行けますが、それ以上先へ進めることができない。自分のスポーツを最優先し、最高の選手になりたいと思うとそうなるのです」と彼女自身も認めている。

彼女はトップとしての地位を維持しふたつ目の金メダルを獲得するために闘う。「ホープはまちがいなく世界最高のゴールキーパーです」とエイミーは繰り返す。「彼女の調子が最悪のときでも世界最高のキーパーです。まだ誰も彼女の最高のプレーを見ていないと思います」と言う。

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