ART|エスパス ルイ・ヴィトン東京『COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown』
LOUNGE / ART
2015年5月27日

ART|エスパス ルイ・ヴィトン東京『COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown』

エスパス ルイ・ヴィトン 東京|Espace Louis Vuitton Tokyo

ART|COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown

コズミック・トラベラーズ - 未知への旅

ルイ・ヴィトン表参道ビル7階にひらかれたアートスペース、「エスパス ルイ・ヴィトン東京」は、1月21日(土)から5月6日(日)まで、同スペース初のグループ展にして、初の日本現代アートシーンに的を絞った展覧会『Cosmic Travelers -Toward the Unknown (コズミック・トラベラーズ - 未知への旅)』を開催する。

Works: ©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat Courtesy of Espace Louis Vuitton TokyoPortrait: ©Louis Vuitton / Tadamasa IguchiText by SUZUKI Fumihiko (OPENERS)

5人の日本人芸術家がつくる旅

2011年1月のオープン以来、フランス人芸術家 グザビエ・ヴェイヤン、アメリカ人芸術家 アリソン・ショッツの個展を開催した「エスパス ルイ・ヴィトン東京」。その第3の展覧会は、日本人現代芸術家5人が会するグループ展となる――となれば、会場に5人それぞれの作品が並べられる、と思うものだが、さにあらず。この展覧会、7階のアートスペースに到達する以前からはじまっている。

というのも、ルイ・ヴィトンの店舗内のスペースでもあるビル1階に入ってすぐに、高木正勝によるアニメーション作品『Anyura』に迎えられるからだ。今回の展覧会を構築したインディペンデントキュレーター、西沢碧梨によれば、この作品はエレベーターにのって7階まで上昇する訪問者とともに、アートスペースへと光を導く役割をはたす。

7階に到着し、エレベーターの扉が開くと、訪問者はそこで、驚かざるをえない体験をすることになるだろう。目の前に佐藤允の作品『予兆』が展示されていて、これが視界に飛び込んでくるからだ。天の岩戸から神があらわれるイメージで描かれたというこの作品はつまり、エレベーターの扉を岩戸のように利用しているということだ。
店舗内のスペースであるはずの1階、そことアートスペースをつなぐエレベーター、さらにはエレベーターホールとでもいうべき空間までもが、貪欲に展覧会を構成する装置として使われていることを知り、訪問者はこの展覧会では通常の美術展の文法が、まったく成立していないことを知ることになる。

エスパス ルイ・ヴィトン東京 『COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown』 02

佐藤允『予兆』(2012年)この作品は未完である。2月6日、7日、8日と4月に公開制作という形をとって仕上げられる。

その、ある種、挑戦的ともいえる姿勢を裏付けるかのように、佐藤允の作品に、展覧会場としては異例といえる、あまりにも開放的なスペースが続く。

原口典之『Triad』(2012年)

塩保朋子『Flowing Sky』(2011年)

高木正勝『Anyura』(2011-2012年)

白壁のかわりに背の高いガラスに囲まれ、周囲の環境にひろがっていくかのような自然光溢れるアートスペースにとけこむのが、この展覧会の半分程度をしめる原口典之による工業製品を使った大インスタレーション『Triad』。そして塩保朋子による風や音をも感じさせる精緻を極めた切り絵『Flowing Sky』だ。どちらの作品も、その素材も表現も、まったく別物ながら、この特異な展示空間を作品の一部としているかのようだ。

スペースの中央には、仕切り壁によって区切られた一転して真っ暗な部屋がある。そのなかでは渡辺豪によるCGムービー『<ひとつの景色>をめぐる旅』が上映されている。わずか10cm程度の距離を180台のカメラが25分かけて移動した映像をひとつの旅の記録として提示するこの作品は、日常的な世界認識を混乱させる。
旅のはてに、暗い部屋を出ると、暗闇になれた目はスペースに溢れる光の強さに圧倒されることになるだろう。そして、それまで見てきたはずの展示が、そのせいでまた違った表情を見せることに気づく。

エスパス ルイ・ヴィトン東京 『COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown』 06

渡辺豪『<ひとつの景色>をめぐる旅』(2011年)

そう、これは旅の経験だ。
物理的にいえば、小さな展覧会でしかないこの展覧会には、旅のように、この開放的な場で成立した5人の作家の共演がみせる、多彩な表情と、発見が溢れているのだ。

COSMIC TRAVELERS -Toward the Unknown (コズミック・トラベラーズ - 未知への旅)
東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル 7F
期間|2012年1月21日(土)~5月6日(日)
時間|12:00~20:00
電話|03-5766-1094
Web|www.espacelouisvuittontokyo.com

西沢碧梨|NISHIZAWA Midori

西沢碧梨|NISHIZAWA Midori
1982年よりアキライケダギャラリー/東京に勤務し、1992年よりアキライケダギャラリーのニューヨークでのディレクターとして、ニューヨークに移住。1994年にはポーラ・クーパーギャラリーと連携してロバート・ウィルソンの初めての大掛かりなインスタレーションによる展覧会を企画。1996年より独立し、日本の戦後美術および欧米の美術を専門とするインディペンデント・キュレーター、ディーラーとして活動を続ける。2011年にはニューヨーク、マリアン・ボエスキーギャラリーで「Masked Portrait Part II」展を企画。

原口典之|HARAGUCHI Noriyuki

原口典之|HARAGUCHI Noriyuki
1946年、神奈川県横須賀市生まれ。日本大学美術学部美術学科卒業。60年代後半から美術家としての活動をはじめ、1977年、ドイツのカッセルで4年ごとに開催される国際的な美術展、「ドクメンタ6」に初めて日本人作家として選ばれ、高い評価を得る。続いてパリ市立近代美術館での「第10回パリ青年ビエンナーレ」に参加し、1978年にはデュッセルドルフのGalerie Alfred Schmelaで海外での初個展。2009年、横浜のBankART1929のStudio NYKで国内では初となる、新作を含む大規模な回顧展「Noriyuki Haraguchi: Society and Matter(原口典之 社会と物質)」を開催。

佐藤允|SATO Ataru

佐藤允|SATO Ataru
1986年、千葉県生まれ。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科先端アートコース卒業。2007年、ニューヨークのメーアギャラリーにて初の個展「ATARU SATO: His Sea」を催し、2009年には広島市現代美術館の「どろどろ、どろん 異界をめぐるアジアの現代美術」展に出品するなど、在学中から作家活動をはじめる。2011年、「ヨコハマトリエンナーレ2011:OUR MAGIC HOUR – 世界はどこまで知ることができるか?-」(横浜美術館・日本郵船海岸通倉庫-Bank Art Studio NYK)に参加。大規模なウォールドローイングをはじめて発表。

塩保朋子|SHIOYASU Tomoko

塩保朋子|SHIOYASU Tomoko
1981年、大阪府生まれ。京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業。2004年、京都市立芸術大学の卒業展でオリジン賞を受賞、2005年には第6回Spiral Independent Creators Festivalにてグランプリを受賞する。2008年には東京のSCAI THE BATHHOUSEで個展「Cutting Insights」を開催、また同年、五島記念文化財団五等記念文化賞美術新人賞を受賞。海外でのグループ展にも出品している。

高木正勝|TAKAGI Masakatsu

高木正勝|TAKAGI Masakatsu
1979年生まれ。音楽家、映像作家として、2001年より音と映像を融合した特異な作品を発表し、美術館での展覧会、世界各地でのコンサート、映像フェスティバルヘの参加など、国内外で多彩に活動する。2001年、第7回イスタンブール・ビエンナーレ(トルコ)のクロージングイベントとして行われたライブパーフォーマンス、2002年には8カ国18都市をめぐるヨーロッパ・ライブツアーを開催。2010年には初のピアノソロツアー「Ymene」を開催、全国7カ所で公演。

渡辺豪|WATANABE Go

渡辺豪|WATANABE Go
1975年、兵庫県生まれ。1999年、在学中に13名のメンバーとともに「art space dot」を愛知県西春日井郡に設立し、作家活動をはじめる。2005年に豊田市美術館でのグループ展「very very human」展に出品した後、2007年には現在のアニメーションの基盤となる作品を含む個展、「境面」をARATANIURANOで開催し、国立台湾美術館(台中市)で「Have You Eaten Yet? – 2007 Asian Art Biennial」に参加するなど、国外でも注目を浴びるようになる。2010年、愛知トリエンナーレの一環として愛知県美術館での個展において「現代美術の発見VII渡辺豪 白い話 黒い話」を発表。

           
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