連載・松田智沖|操上和美が語る、ジョンロブの「By Request」
「ジョンロブは、水陸両用の靴」
操上和美が語る、ジョンロブの「By Request」(1)
今年2月末にBS日テレ「ブランドストーリー」という番組でジョンロブの特集が放映されたが、ジョンロブを履いている日本人として取材を受けたのが、写真家の操上和美さん。オンエアでは、今回履いている「By Request」のブーツについて熱く語った。「ジョンロブは、水陸両用の靴」という操上さんが語る、男の生きざまとは。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
触感と機能性が見事にかみ合わさって、恋に落ちた
松田智沖 その後、ブーツの履き心地はいかがですか?
操上和美 履きやすくて、とてもいいですよ。
──まず、操上さんとジョンロブの出会いを教えていただけますか。
操上 もう30年近く前になりますが、パリの『エルメス』になにげなく入ったら、なぜか靴が妙に気になって、手に取ってみたら、革の感触がとてもよくて、底もラバーソールで、仕事柄、靴に無理がかかる僕のためにあるような靴だと思い、その場で購入したのが一足目でした。
松田 これまでに何足くらい履かれていますか?
操上 この前、ならべてみたら7足ありました。たぶん10足は買っていますね。レザーソールももっているし、タキシード用の特別なモデルもこの前購入しました。
──ジョンロブの魅力は変わりませんか?
操上 パリでは出会うべくして購入しましたが、それ以来愛用しています。ジョンロブはただきれいなフォルムだけではない、道具としての機能性もふくめて、自分にぴったりだなと思っています。触感と機能性が見事にかみ合わさって、“Fall in Love”でした。それからは、どこかへ出かけるたびにジョンロブを探していますよ。
松田 操上さんは撮影にもジョンロブを履かれているとか。
操上 よほど悪い条件のロケ以外の、スタジオや都内ロケなどは、ジョンロブの靴を履いて撮影しています。撮影後にミーティングがあったり、夜の食事に出かけたりするときにそのまま履き替えなくていい。ジョンロブさんには悪い表現かもしれませんが、おしゃれなのに“水陸両用”の機能性がいいですね。
松田 ジョンロブに来られるスタイリストの方たちから、操上さんがどのモデルを履いているのかをよく聞かれます。皆さん、操上さんのスタイルに関心が高いですね。
──とても気になる存在なのでしょうね。
「ジョンロブは、水陸両用の靴」
操上和美が語る、ジョンロブの「By Request」(2)
松田 操上さんにとって“靴”とはどんなアイテムですか?
操上 男にとっての靴とはダンディズムに直結するものですね。男は相手の足もとを見るといいますが、それはそのひとのセンスを測るため。靴は、仕事と、遊び、そして酒を飲んだりするときの精神をコントロールするひとつの道具であり、自分にとってのダンディズムのシンボリックなものなので、靴がダサイと落ち着きませんね。男にとってはとても大切なモノでしょう。
松田 なるほど。精神性とも関係するわけですね。
操上 男のかっこよさは、ルックスじゃない。自分の意志がきちんとあるひとはカッコイイ。写真は、被写体にまとわりついている空気のような雰囲気、それをオーラというひともいますが、身体から発しているものが写ってくる。なにかを成し遂げたひと、挑戦しているひとなど、精神的なものが肉体の一部となって写ってきます。最近のショーン・ペンとかカッコイイですね。
松田 歳をとってどんどんよくなりますね。
操上 戦っているものがにじみ出てきて、ひととしての魅力が伝わってきます。それに比べて、いま、ニュースに出てくる日本の政治家は一人も撮りたくない。自信がなくて、言葉巧みにウソでごまかして、取り繕った言葉で、おどおどしている。政治家の顔がよくならないと、国が悪くなるんです。僕たちはなぜこのひとたちを選んだのかを考えないと。
松田 自分に信念をもってやっているひとは、男女限らず、いい顔をしていますね。
操上 自己責任での戦いをしているのが顔に出てきます。
「ジョンロブは、水陸両用の靴」
操上和美が語る、ジョンロブの「By Request」(3)
現行モデルにはないブーツ「Scott」
──今日の操上さんのブーツは、「By Request」でオーダーしたものですね。
操上 靴に限らずカスタムメイドは夢ですよね。パリの『エルメス』でジョンロブをオーダーしようと思って見に行ったこともありますが、自分にフィットする既製靴があったのと、この丸の内店でオーダーできるのを知って、初めてお願いしました。
──できあがってみて、いかがですか。
操上 30歳を過ぎたころは、洋服もオーダーでした。それから既製服のいいものが出始めて、次第にオーダーしなくなりましたが、オーダーはやはり究極の贅たく。身体と精神がフィットしているのがうれしい。靴は自分の足にあっているものを履きたいし、流行で大きく変わるものでもないので、ジョンロブさんのお薦めでブーツをつくりました。ワークっぽくなく、細身で履きやすいですよ。できてきたときはまず触りたくなった(笑)。
松田 ありがとうございます。気に入っていただけてうれしいです。操上さんのブーツは、現行モデルではない「Scott」というデザインです。
操上 靴は手入れをきちんとしていると傷まないし、ソールを替えれば一生もつ。ジョンロブは道具として美しいし、何年か履き込んで、いい味になっていくのが楽しみです。
松田 靴にはエイジングされていく魅力もあって、履き方でそのひとの仕事や性格まで見えてくるものです。
操上 本当にそうですね。自分が履いて行った場所や距離が靴にしみこんでいて、愛おしい。
いいものに出会うと得をする
──一般のひとは、“ここ一番”でジョンロブを履くひとが多いのですが、操上さんは、ジョンロブを“水陸両用”といわれるほど、遠慮せずに履かれているのがカッコイイですね。
松田 じつは、私もジョンロブは何足も履いていますが、皮膚感覚のようになじんでフィットするまで履いたのはまだ2足です。お客さまにはジョンロブを大事に履いていただいていてうれしいのですが、大概の方は、皮膚感覚まで達しないようです。
──「ジョンロブはグッドイヤー製法なので、履き込むと中敷きが足なりに沈み込んで、自分の足に合った履き心地が楽しめる」と言われますが、時間のかかるものなんですね。
松田 自分もそうでしたが、ある日突然、「ジョンロブの靴とはこうなんだ!」というのがわかります。
──人間関係のようですね(笑)。
操上 ジョンロブとは最初に出会ったときに恋して、それから離れられなくなっています。足を包むことは、肉体と精神を包んでいることです。いいものに出会うと得をしますね。これからもいい靴をつくってください。
松田 ありがとうございます。今後の展覧会などのご予定は?
操上 来年の9月から、恵比寿の『東京都写真美術館』で写真展を予定しています。
松田 楽しみにしています。今日はありがとうございました。
ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/