GMによるあらたな低炭素社会への戦略

世界的に加速している、いわゆる代替燃料車の開発競争には、米国のメーカーも安閑としていられない。その先触れとしての発表だ。シボレーブランドを傘下にもつゼネラルモーターズの手によるボルト。米国ではすでに路上を走っており、着実にあらたな低炭素社会に向けてこの米国の自動車メーカーが歩を進めていることの証明だ。

米国で開発されたシボレー・ボルトの特徴は「航続距離延長機能をもった電気自動車」であること。「電気自動車のように公共充電スタンドのような社会インフラ整備を心配することなく安心して走れる」（ゼネラルモーターズ・ジャパン 石井澄人代表取締役社長）とする。

「シボレー・ボルトはいわゆる一般的なハイブリッドカーではありません。どのような気候の下でも最長379マイル（610km）の航続距離をもつ、他に類を見ない常時電動駆動の自動車です」。そう語るのは、マーティン・マレー氏。米国のゼネラルモーターズ傘下のGMインターナショナル・オペレーションズにおいてハイブリッド＆エレクトリック・パワートレイン・エンジニアリング部門に籍を置き、ディレクターの肩書きをもつひとだ。今回「パシフィコ横浜」で開催された「自動車技術展・EV技術展・人とクルマのテクノロジー展2011」におけるシボレー・ボルトの展示のために来日して、車両の説明を担当した。

ボルトが、一般的なハイブリッドカーではない理由

シボレー・ボルトは、電気モーター2基と1.4リッターガソリンエンジンを備える。リチウムイオン・バッテリーは家庭用電源からの充電式。さきに発表・発売されたトヨタ・プリウスαでも採用された、電気モーターへの依存度を高めた、いわゆるプラグイン・ハイブリッドだ。それがなぜ「一般的なハイブリッドカー」ではないのか。その理由は、駆動プログラムにある。

「ボルトは25～50マイル（40～80km）までは完全な電気自動車。搭載しているリチウムイオン・バッテリーの残量が30パーセントを切ると、はじめてエンジンが始動します」（マレー氏）

電気モーターとエンジンをつねに組み合わせながら、走行するTHS-IIというハイブリッドシステムをもつトヨタ・プリウスとこの点でことなっていることをマレー氏は強調する。「充電量が確保されていれば160km/hで走るときも電気モーターしか使いません」

大小のモーター、小排気のエンジンで構成されるパワートレイン

シボレー・ボルトのパワートレインを構成しているのは、2基の電気モーターと、ガソリンエンジンだ。電気モーターのひとつは駆動用として機能し、111kW（149hp）の出力と368Nmのトルクを発生する。もうひとつは小型の発電機兼用モーター。通常は大型の電気モーターで走り、巡航に移ったら大型は停止し、小型の電気モーターが作動する。これによって効率化をはかる。そしてエンジンは1.4リッター4気筒SOHC4バルブ。吸排気可変バルブを備えており、最高出力は63kW（84hp）/4,800rpmとなっている。これらのあいだにクラッチを設け、電子制御で切ったりつなげたりすることで、走行状況に応じて最適なパワートレインを選ぶようになっている。

最近のニュースでは、ゼネラルモーターズはボルトの増産と拡販に本腰をいれると報道されている。現在アメリカ合衆国の一部の州に限定されていた販売地域を年内には全米へと拡大。同時に海外への輸出もはじめる。まずは年内にカナダと中国、そして近い将来、欧州での販売をもくろんでいる。

日本では「まもなく実証実験をはじめる予定」（ゼネラルモーターズ・ジャパン広報担当者）というが、発売時期は「未定」。災害時に家庭へ電源を供給する蓄電池機能を有するかとか、地域の発電インフラと積極的な関係をもつかとか、電気自動車としての発展性については「可能性は大いにある。（車両が発電した電力を蓄電して家庭や工場などに分配する）スマートグリッドシステムへの対応も可能だと思う。近い将来を視野に、さまざまな可能性を検討していきたい」と、前出のマーティン・マレー氏は語った。

CHEVROLET VOLT｜シボレー ボルト
ボディサイズ｜全長4,498×全幅1,788×全高1,430mm
ホイールベース｜2,685mm
車輌重量｜2079kg
エンジン｜1.4リッター直列4気筒DOHC
最高出力（エンジン）｜63kW（84hp）/4,800rpm
最高出力（モーター）｜111kW（149hp）
最大トルク（モーター）｜368Nm
航続距離｜610km
燃費（エンジン走行時）｜15.7km/ℓ
燃費（エンジン、モーター混合時）｜25.5km/ℓ