Hysteric Glamour × Trygod|北村信彦が惚れた永瀬正敏デザインのジュエリー「Trygod」
FASHION / MEN
2015年5月11日

Hysteric Glamour × Trygod|北村信彦が惚れた永瀬正敏デザインのジュエリー「Trygod」

Hysteric Glamour × Trygod

北村信彦 × 永瀬正敏 対談(1)

北村信彦が惚れた永瀬正敏デザインのジュエリー

ブランド「Trygod(トライゴッド)」を主宰する永瀬正敏さんは、「北村さんにはじめてTrygodのインスタレーションを見ていただいたときにはこんなすごいことが実現するとは思ってもいませんでした」という、ヒステリックグラマーとの刺激的なセッション。独創的なモチーフと圧倒的なものづくりのクオリティの高さが共鳴した「Hysteric Glamour × Trygod」のジュエリーを語り合った。

文=OPENERS写真=原恵美子写真=jamandfix(ジュエリー)

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「足しもしない、引くこともない」というコンセプト

前例がない、つくれるはずがない、妥協、カテゴライズ化……Tryする前にあきらめてしまう思考放棄を乗り越え、音楽や街、アートや歴史、そして人びとから感じるままに、見てみたい、身につけたい作品を、つねに“壁をぶち壊しながら”それが人びとに伝わることを信じて進んでいくブランド「Trygod(トライゴッド)」。ヒステリックグラマーの北村信彦さんと永瀬正敏さんの出会いは、フジロック・フェスティバルからはじまった。

──「Trygod」のスタートはいつですか?

永瀬 ブランドは2005年にスタートしています。じつは僕の知人がジュエリーブランドをやっていて、当時そのブランドが苦戦していて……。僕がジュエリー好きと知っていた彼から「なにかアイデアはないか?」と相談を受けて。ちょこちょこっと作品のアイデアやブランドコンセプトのアイデアなどを出していたんですね。

でも結局彼が途中で投げ出すかたちで辞めてしまって。もう走りはじめていたので、いろんな業者さんにも迷惑がかかるし、「じゃあ本格的に僕がやる!」ってなったんです。そこから本腰を入れはじめました。

──永瀬さんの最初のデザインは?

永瀬 「Trygod」と入ったシンプルなデザインでしたね。

ヒステリックグラマー|トライゴッド 02

──ブランド名はとても印象的ですが、意味は?

永瀬 それはフッと出てきたものでしたね。響きも気に入って。「Hysteric Glamour」はどこから出てきたんですか?

北村 いろいろ好きな単語をならべていって、ヒステリックとグラマーが残って、それをくっつけた感じですね。

永瀬 カッコイイですね。

北村 「トライゴッド」も、Godだけだと意味がいろいろつけられるけど、Trygodになった瞬間に意味が深まって考えさせられるというか。

──おふたりの出会いは?

北村 お互い共通の友人はたくさんいたんですが、永瀬君と長い時間話したのは、フジロック・フェスティバルでしたね。

永瀬 そうでしたね。

北村 フジロックの開催中にヒステリックグラマーの撮影をしようという雑誌の企画で、ちょうどパティ・スミスも来るし、会場へ行こうと。それで永瀬君に写真を撮ってもらいました。会場で可愛い子を見つけて、お願いして、ヒステリックグラマーを着てもらうという。ふたりで会場を歩き回りました(笑)。

永瀬 丸2日やりましたね。ライブと撮影が混じっておもしろい空間でしたね。

北村 それから、フジロックではイギー・ポップにも会ったよね。

永瀬 僕は前にジム・ジャームッシュに紹介してもらっていて、北村さんは商品のやりとりがあって。

北村 控え室で会ったときは僕ら3人だけしかいなかった。

永瀬 そうですね。僕にとっては中学時代の神さまだったので、日本で北村さんと3人で会える瞬間があって、全員共通項があることが特別な感じでうれしかったですね。

Hysteric Glamour × Trygod

北村信彦 × 永瀬正敏 対談(2)

北村信彦が惚れた永瀬正敏デザインのジュエリー

一生懸命つくっているので、先入観なしに商品を見てほしい

──おふたりのコラボレーション「Trygod for Hysteric Glamour」が生まれたきっかけは?

永瀬 2005年にこっそりお披露目会を開いたんです。

北村 あれはすてきなインスタレーションでしたね。

永瀬 テーマは「最後の晩餐」と決めて、食事の代わりにジュエリーが皿に乗っているというインスタレーションを見ていただきました。

北村 会場では、キャンドルやグラス、皿などの装飾とジュエリーが主役でディスプレイされていて、「これは触ってもいいのかな?」と思うぐらい緊張感がありましたね。世界観もしっかり感じられてすばらしかった。

永瀬 ありがとうございます。それがあって北村さんから声をかけていただいて光栄でした。

北村 それで「Trygod for Hysteric Glamour」を、永瀬君が手がけていることを公表しないでスタートしました。

──公にしなかった理由は?

永瀬 演じるときもそうなんですが、背景をあまり語らないというか、純粋に演技を、可能な限りその作品のなかの役柄の人物で見てほしいと思っているんです。「Trygod」にかんしても、まず商品を見て気に入ってくだされば、手にとってほしい……そういう想いがあったんですね。一生懸命つくっているので、先入観なしに純粋に商品を見てほしいと思ったんです。

北村 そこが永瀬君ぽいよね。自分がやっているというと、つくったものの上からなにかを塗っているような。そこをあえてストイックにもっていって、かたちになったものが主役というのが永瀬君らしい。

ヒステリックグラマー|トライゴッド 03

──デザインはどうつくっていくんですか?

永瀬 最初から手描きで、スタートしたばかりのころは、2次元のものがどうかたちになっていくんだろうと思いながら描いて、原型ができあがって気に入ったものだけを採用していました。

いまは、手描きは変わりませんが、いつもおなじ原型師さんにお願いしていて、その原型師さんのつくる原型が大好きで、そのひととの出会いが大きかったですね。いま「Trygod」をつづけているのもそのひとの存在があるからです。その方は、腕がいいのはもちろん、ここまでやらなくてもいいというところまで気を配ってくれるんです。

──あたらしいデザインの発想は?

永瀬 とくにノルマは決めていなくて、友人との会話のなかから生まれたり、「ピアスがほしいんだけど」と頼まれて、そこから膨らませたり。音楽や映画、アート作品から刺激を受けたり、単純に日常生活を送りながら、ふと思いついたり。その年毎に大テーマを決めてからデザインにかかったりします。デザインのバリエーションを増やしてもしょうがないので、真ん中にもってくるデザインを考えて。

──ヒステリックグラマーとのコラボレーションは、その真ん中が、スカルなんですね。

Hysteric Glamour × Trygod

北村信彦 × 永瀬正敏 対談(3)

北村信彦が惚れた永瀬正敏デザインのジュエリー

スカルにヘッドフォンのキーチェーンを買っていったミュージシャン

──それにしても美しいハイエンドのジュエリーですね。

北村 ヒステリックグラマーにヘッドフォンをつけているスカルのデザインがあって、「これをジュエリーにしたらおもしろい」と永瀬君と話をして。

永瀬 北村さんとはお互いに音楽好きだし、つくる商品にそういう部分が反映しているのもおもしろいなと。スカルなので耳がないのに、ヘッドフォンをしていますからね(笑)。

──このスカルヘッドフォンキーチェーン、スカルヘッドフォンペンダントともにシルバー925をベースに、1000ピースにおよぶ天然ダイヤとブラックダイヤでつくられていて、アートピースのようですね。

永瀬 しかも、職人さんの「ポロッと1個とれちゃうのはダメでしょう」ということで、宝石を接着ではなく、爪を立てて留める「パヴェ留め」にこだわっています。職人さんたちのそういう手間のかかる作業も、作品にとってはありがたいですね。

──この「Trygod for Hystericglamour」シリーズは、バイオーダーなんですね。

永瀬 そうですね。職人さんが魂込めてつくっています。最初にできてきたときはうれしかったですよ。

ヒステリックグラマー|トライゴッド 07

ヒステリックグラマー|トライゴッド 08

北村 ヒステリックグラマーの青山店で某大物外国人女性ミュージシャンが買っていきました。

永瀬 それを北村さんから聞いたときはうれしかったですね。

北村 しかも、お店で見て一目惚れして、一回帰って考えて、翌日買いに来たんですよ。その一晩悩んでいるのが想像できて可愛いよね。

永瀬 いいひとですね(笑)。アルバムちゃんと聴かなきゃ。

──永瀬さん、これからのデザインは?

永瀬 こういうものはデザインを詰め込みすぎてもいけないし、やれるところまではぎりぎり挑戦もしたい。いろいろやっていきたいですね。バイオーダーなので、職人さんの愛情も感じてほしいですね。

北村 「Trygod for Hystericglamour」は、ヒステリックグラマーでは、バングルやネックレスなどフルラインを置いています。永瀬君の「Trygod」を見ていて思うのは、気持ちはかたちにあらわれるということ。僕の仕事も、素材、縫製、プリントなどの加工などに携わるひとたちのちからを編集するもので、デザイナーはエディットの能力が必要。いまはとくにそういう作業が重要視される。腕のいい職人を生かすも殺すもこちら次第なんですよ。ものをつくるという行為は進化したくなるもので、去年より今年のほうが絶対よくありたい。だからつくる工程もおもしろいけど、街で服を着ているひとを見るほうが、最近はしみるかな。

永瀬 北村さんの話は勉強になりますね。

北村 「Trygod」には、永瀬君のナイーブで、ストイックで、ニヒルで、シャイでしかも男っぽい、妥協したくないところと、あと密かにフェミニンな女心が感じられます。

──ありがとうございました。

           
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