番外編|エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー 後篇
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月2日

番外編|エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー 後篇

TOYOTA PRIUS G Touring
Mercedes-Benz E 350 BlueTEC AVANGARDE
Volkswagen Golf TSI Trendline

番外編|エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー 後篇(1)

今回の長期リポートは前回にひきつづき番外編。リポート2号車のプリウスと、3号車のE 350 ブルーテック アバンギャルド、そして直噴エンジンとダウンサイジング・コンセプトにより低燃費を実現した話題のフォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドラインの3台を乗り比べました。目指すは新潟の荻ノ島。今なお茅葺きの住居が残る集落です。昔ながらの暮らしを残す荻ノ島へ、アプローチの異なる3台の最新エコカーで、いざ出発。

文=オウプナーズ写真=荒川正幸

燃費だけでなくCO2排出量にも注目を

担当A そもそも、エコカーの比較って燃費だけでは語れませんよね。メルセデスの本国オフィシャルサイトで調べたんですが、E350 ブルーテックのCO2排出量は180-188g/km。プリウスは89g/km、ゴルフは134g/km。これらはイギリスのオフィシャルサイトに載っていました。日本ではカタログを見ても10.15モード燃費しか載ってないんですね。星がいくつかなんてことより、CO2が何グラム排出されるのか、のほうが分かりやすいのに。

担当B いまはフェラーリ458のようなスポーツカーですらスペックにCO2排出量を表記する時代ですからね。

担当A ヨーロッパでは、パワーとかトルクとかと並んで当たり前のようにCO2排出量が表記されている。日本でも各モデルのCO2排出量を比較できるようなスペック表記が一般的になればいいですね。

エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー|30

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担当B ゴルフは上級のクラス並みに乗り心地が抜群にいい、燃費もそこそこいい、でも134gのCO2を排出している。ハイブリッドのプリウスは89kgですから。あくまでカタログ上の数値でありますが、このあたりが改善されるとエコカーとして、より完成度が高まりますね。

担当A 乗り心地でいうとプリウスは、ややハーシュネスが気になりました。もう17,000kmも走っているから不利かもしれないですが。タイヤもかなり減っているだろうし。

担当B でもまあ、プリウスが新車だとしても、そもそものクルマの方向性がゴルフとはややちがいますから。運転時の快適性や操安性を追求するモデルではなく、日常の便利な“足”としてのクルマですよね。

エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー|20

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担当A クルマづくりで目指すところがちがう。ゴルフはボディの剛性感も高かったなあ。コストダウンなどの結果、ドイツ車が総じて質実剛健さを失ってきた現在、フォルクスワーゲンはいまでも、往年のドイツ車のイメージを引き継いでいると感じました。こまかいところでいうと、たとえばサイドミラーのウインカーが運転席から視認できるデザインがほどこされているとか。

担当B かつてのドイツ車のように機能性がデザインに結実している。スペース効率も考え抜かれていて、ユーティリティもこれ以上ないバランスで構成されています。でも、もともとはゴルフって“ブレッド・アンド・バターカー”なんていわれるように極めてベーシックなクルマだったのに、走りといい、インテリアのクオリティといい、いまや紛れもなく高級車ですよね。

担当A パンとバターだけだったところに、ベーコンもソーセージもついてきて……(笑)。

エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー|25

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担当B そうですね。E 350 ブルーテックはディーゼルの豊かなトルク特性ゆえ非常にドライバビリティが高かったと思います。静粛性も高い。とくに低回転域で高トルクを発揮するだけあって、高速走行時は静かでしたね。ドライブトレインの完成度の高さには驚きましたよ。あとは、ボディサイズのわりに取り回しがよかった。Uターンするときにスイッと楽に曲がれました。ちなみに最小回転半径は5.3メートルです。

担当C 僕は、なんにも気になることがなかった。もとい、気に障ることがなかった。でもそれはすごいことですよね。今回、高速でしか運転しませんでしたが、E 350 ブルーテックでこのまま何百キロも行けと言われたら実際に行けちゃうような。

担当B メルセデスのリピーターってソコに魅力を感じているんだと思いますよ。空気を呼吸するように楽に運転できる。直感的に操作できるシートの形状をしたシート調整スイッチに象徴されるように。

担当A メルセデスのセダンならではの合理性は確実にありますよね。しかし、排気ガスに尿素を噴射するなんて大胆なことを高級セダンでやろう、スペアタイヤを取り払っても尿素タンクをいれよう、とやってしまうんですから、メルセデスのあたらしい時代を切り開こうという思い切りのよさには感服です。

TOYOTA PRIUS G Touring
Mercedes-Benz E 350 BlueTEC AVANGARDE
Volkswagen Golf TSI Trendline

番外編|エコカー3モデル乗りくらべ新潟ツアー 後篇(2)

あたらしい機能のために失うものもある

担当A 先ほども言いましたが、ハイブリッドもクリーンディーゼルもトレードオフがあると思います。今までになかった機能を追加するために、重量的な負荷やコストというネガを負うことになったり。ゴルフはそういったものがない。

担当B そのあたり、価格にあらわれているかもしれませんね。ゴルフのベーシックなトレンドラインで257万円。プリウスはなんだかんだで購入価格は270万でしたよね。

担当A プリウスはしかし、抜群に燃費がいいですね。トヨタのハイブリッドにかんする技術はまちがいなく世界一でしょう。

担当B 新型はヨーロッパ市場にうってでるってことで高速燃費にも力をいれています。エンジンを1.6リッターから1.8リッターに大きくして、遠距離走行が多いヨーロッパで重要視される高速燃費を向上させている。高速走行時の動力性能も申し分ない。

担当C あの、センターメーターにあるエコドライブモニター。あれはついつい見てしまいます。登り坂でアクセルを踏むと、あっ、「パワー」ゾーンに入ってしまった! というふうに、とても気になります。

担当B 燃費を向上させるべくクルマをうまくコントロールしようとすると退屈しませんよね。日本的というか、ゲームっぽい装置です。

担当A そこはトヨタの狙いどおりでしょう。ハイブリッドの最先端の機構、エコドライブモニターの効果、あとは使いやすいナビゲーションシステム。やはり、日本人に合ったクルマなんですねプリウスは。

今回の3台のエコカー、そしてこれからのエコカー

担当A 今回は乗り心地の面でややツメの甘さを感じた2モデル、クリーンディーゼルとハイブリッドは、これからもっと洗練されていくと思う。

担当B 今後も10年や20年は、いろんなエコカーへのアプローチは一本化されずに、それぞれ進化していくんでしょう。クリーンディーゼルも軽量化されて、さらに静かになるでしょうし。

担当A ハイブリッドも重量面と、そしてコスト面でも改善されるはず。その答えのひとつが、ホンダのIMAに代表される、よりシンプルなハイブリッドシステムかもしれませんね。また、2011年にはメルセデスからディーゼルハイブリッドも発売されると聞くし。ゴルフも2013年にはハイブリッドと電気自動車がデビューする予定らしいので、これは絶対に乗ってみたいですね。

各メーカーの取り組みにより、これからもエコカーが劇的な進化を遂げる可能性は十分にある。ハイブリッド、クリーンディーゼル、TSI、ディーゼルハイブリッドに電気自動車、そして燃料電池車。さらにあたらしいアプローチが登場するかもしれない。長期リポート車であるハイブリッドカー トヨタ・プリウスとクリーンディーゼル車 メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテックの、あらたなよさを発見しながら、エコカー最前線にこれからも注目していきたい。

080507_eac_spec
TOYOTA PRIUS|トヨタ プリウス
ボディ|全長4,460×全幅1,745×全高1,490mm
ホイールベース|2,700mm
車両重量|1,310kg
エンジン|1,797cc 水冷直列4気筒DOHC
最高出力|73kW(99ps)/5,200rpm
最大トルク|142Nm(14.5kgfm)/4,000rpm
トランスミッション|電気式無段変速機
CO2排出量|89g/km(トヨタUKサイト)
価格|270万円

Mercedes-Benz E 350 BlueTEC AVANGARDE|
メルセデス・ベンツ E 350 ブルーテック アバンギャルド

ボディ|全長4,870×全幅1,855×全高1,455mm
ホイールベース|2,875mm
車両重量|1,910kg
エンジン|2,986cc V型6気筒 DOHC
最高出力|540kW/1,600~2,400rpm
最大トルク|55.1kgm/1,600~2,400rpm
トランスミッション|電子制御7速AT
CO2排出量|180-188g/km(メルセデス本国サイト)
価格|798万円

Volkswagen Golf TSI Trendline|
フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン

ボディ|全長4,210×全幅1,790×全高1,485mm
ホイールベース|2,575mm
車両重量|1,270kg
エンジン|1,197cc 直列4気筒 SOHC
最高出力|77kW(105ps)/5,000 rpm
最大トルク|175Nm(17.8kgm)/1,550~4,100rpm
トランスミッション|自動7段(前進)1段(後進)
CO2排出量|134g/km(フォルクスワーゲンUKサイト)
価格|257万円

           
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