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2026年3月31日
漆と螺鈿がタイムピースに新たな表情を作り出す
Ressence|レッセンスTYPE 9 IKE
ベルギー発の独立系高級時計ブランド「レッセンス」が、工藝美術家・池田晃将氏との協業による特別仕様モデル『TYPE 9 IKE』を発表した。日本の伝統工芸と次世代メカニズムを融合させた新時代ウオッチだ。
Text by WASEDA Kosaku
「時間の把握」を芸術に昇華する
「TYPE 9 IKE」の特筆すべきポイントは、ダイヤルに施された漆の複層塗りと螺鈿技法だ。金沢を拠点に活動する池田晃将氏は、高品質の真珠母貝を極限まで薄く加工してダイヤルへと埋め込み、空想科学を想起させる近未来的な世界観を描き出した。
美しい装飾に、レッセンスの象徴である特許機構「ROCS(Ressence Orbital Convex System)」、曲面を描きながら複数のディスクが回転するという独自機構と螺鈿技法が組み合わさることで、静と動が重なり合う臨場感ある表現が生まれている。
池田氏が螺鈿を通して体現しようとしたコンセプトは「地動説」だ。
池田氏は「初めてTYPE 9の回転ディスプレイを見たとき、宇宙や銀河系を想起した。かつて天文学者が地動説を提唱したとき、多くの反発や違和感があったが、その既成概念を揺さぶるような緊張感もこのモデルには込められている」と語る。
螺鈿に使用する真珠母貝は本来、平面に近い素材であり、薄く加工すれば割れやすい。池田氏はこの課題に対し、貝を極限まで薄くした上で液体に浸し、ゴムシート上で徐々に成形するという独自の手法で曲面への配置を実現した。1点あたりの制作期間は約1か月ほど費やされたという。
制作工程では、貝のレーザーカットや図案設計にデジタル技術を取り入れているが、最終的な意匠の配置はすべて手作業で行われる。伝統とテクノロジーを融合させた池田氏の姿勢は、改修された金沢の町家に構える工房そのものにも象徴されている。
TYPE 9シリーズはレッセンスのコレクションの中でもメゾンを象徴するモデルで、シンプルに時間を把握する体験を追求したラインだ。「TYPE 9 IKE」ではその"純粋性"と意図的に対比させるかたちで、黒のDLCコーティングを施したチタニウム製ベゼル、ケース、ダイヤル、裏蓋を採用。光の角度によって異なる輝きを放つ螺鈿ディスプレイを際立たせている。ケースバックには池田氏のサインが刻まれており、作品としての性格を強調する。
レッセンスの創設者兼クリエイティブディレクターであるベノワ・ミンティエンス氏は、池田氏との協業について「初めて池田氏の作品を目にしたとき、伝統に根ざした技術と近未来的な世界観が融合する美しさに強く魅了された。この芸術的表現とレッセンスの機構が組み合わさることで、これまで存在しなかった"未来から現れた文化"のような感覚を体験していただけると確信している」とコメントした。
池田氏は漆、檜、螺鈿、金箔といった伝統素材を用いながら、過去と現在をつなぐ作品を生み出してきた工藝美術家だ。情報が飽和する現代において、「美は視覚的な形ではなく、人と物、そして"あいだ"に生まれる関係性の中に宿る」と考える池田氏にとって、本作もその哲学の延長線上にあるという。
TYPE 9 IKEは世界限定8本。工芸と機構、伝統と未来が交差する本作は、機械式時計における芸術表現の新たな可能性を示す1本だ。
池田 晃将
1987年千葉県出身。2014年金沢美術工芸大学 工芸科 漆・木工コース 卒業。2016年には金沢美術工芸大学大学院 修士課程を修了し、2019年金沢卯辰山工芸工房を修了。現在、金沢市内にて独立。
レッセンス TYPE 9 IKE
ケース素材|チタニウム(ブラックDLCコーティング)
ケースサイズ|径39㎜、厚さ11㎜
ガラス|両面ドーム状サファイアクリスタル、両面反射防止加工
ムーブメント|自動巻きROCS9(Ressence Orbital Convex System) モジュール(Cal.2892‐2)、31石、28,800振動/時、パワーリザーブ36時間、20個の歯車、ケースバックによる巻き上げおよび時刻調整
文字盤|DLCコーティング文字盤、手作業による螺鈿(マザーオブパール)および日本の漆(ブラックラッカー)仕上げ、ジュエルボールベアリング上に偏心配置された2つのサテライト(時表示サテライトは9.75°の傾斜)、エングレーブされた後にグレードAブルースーパールミノバが充填されたインデックス
ストラップ|ブラック シャイニー ホースレザーストラップ(20/18mm)、裏地は防湿レザー、チタン製尾錠付き
防水性|防滴構造1気圧
価格|651万2000円 (税込)
ケース素材|チタニウム(ブラックDLCコーティング)
ケースサイズ|径39㎜、厚さ11㎜
ガラス|両面ドーム状サファイアクリスタル、両面反射防止加工
ムーブメント|自動巻きROCS9(Ressence Orbital Convex System) モジュール(Cal.2892‐2)、31石、28,800振動/時、パワーリザーブ36時間、20個の歯車、ケースバックによる巻き上げおよび時刻調整
文字盤|DLCコーティング文字盤、手作業による螺鈿(マザーオブパール)および日本の漆(ブラックラッカー)仕上げ、ジュエルボールベアリング上に偏心配置された2つのサテライト(時表示サテライトは9.75°の傾斜)、エングレーブされた後にグレードAブルースーパールミノバが充填されたインデックス
ストラップ|ブラック シャイニー ホースレザーストラップ(20/18mm)、裏地は防湿レザー、チタン製尾錠付き
防水性|防滴構造1気圧
価格|651万2000円 (税込)
問い合わせ先
レッセンスの時計に対するよくある質問
Q. レッセンスのブランドストーリーを教えてください。
レッセンスは、ベルギー出身の工業デザイナー、ベノワ・ミンティエンス氏によって2010年にベルギーのアントワープで創業された独立系高級時計ブランドです。ブランド名は「ルネッサンス(Renaissance)」と「エッセンス(Essence)」を融合した造語で、「過去の経験をベースに、現在の技術で作り、未来のためにデザインする」という哲学を体現しています。時計のデザインはアントワープで行われ、製造はスイスのフルリエで行われています。創業時より「機械式時計の現状を打破する」をゴールに掲げ、針もリューズもブランドロゴも持たない独自のスタイルを確立。複数のディスクが回転しながら時刻を表示する特許機構ROCSを開発し、2013年にはジュネーブ時計グランプリにて「Horological Revelation賞」を受賞しました。
Q. 協業した工藝美術家・池田晃将氏はどのような人物ですか?
1983年千葉県出身。金沢美術工芸大学で漆・木工を学び、2019年に金沢卯辰山工芸工房を修了後、金沢市内で独立しました。漆、檜、螺鈿、金箔といった伝統素材を用いながら過去と現在をつなぐ作品を制作しており、「美は人と物、そして"あいだ"に生まれる関係性の中に宿る」という哲学のもと、伝統とテクノロジーを融合させた表現を追求しています。
Q. 「TYPE 9 IKE」に採用された螺鈿技法には、どのような独自の工夫が施されていますか?
螺鈿に使用する真珠母貝は本来平面に近い素材で、薄く加工すると割れやすいという課題があります。池田晃将氏はこれを克服するため、貝を極限まで薄くした上で液体に浸し、ゴムシート上で徐々に成形するという独自の手法で曲面への配置を実現しました。制作にはレーザーカットなどのデジタル技術も取り入れていますが、最終的な意匠の配置はすべて手作業で行われ、1点あたり約1か月の制作期間を要しています。


