フランク・ミュラー/ロングアイランド・カラードリーム
フランク・ミュラー/ロングアイランド・カラードリーム グラデーション
柔らかな色のグラデーションが生む奥ゆかしい表情
フランクの定番時計「ロングアイランド」は、1920年代のノベチェントスタイルにアールデコの要素を取り入れた、フランクらしいケースへのこだわりが発揮された時計だ。今年その新作として、巧みなインデックスの色使いが目を惹く「ロングアイランド・カラードリーム グラデーション」が発表された。
文=野上亜紀
従来のケースの重厚感、そしてダイヤルのサンレイブラッシュの繊細さはそのままに、この時計ではこれまでの明白な個性とはちがう、新しい優美さを追求している。それが、このビザンツ数字のインデックスに施されたグラデーションのカラーリングだ。昨年まではビビッドなマルチカラーのインデックスが特長だったこの時計も、今年は緩やかに変化する色をあしらうことで、その大胆な表情にどこか奥ゆかしさを携えている。
1時位置のインデックスが12時へと向い、ホワイトからパステル、そしてパープルへと、少しずつ色を載せていく――冷たい大地が穏やかに熱気を帯びていくように変化するグラデーションだが、最後の12時位置のパープルにいたっても深みある濃厚な色味なので、温かみのある優美さは決して崩されることがない。
メンズのモデルには謎めいたパープルのグラデーションを、一方レディスのモデルにはやさしいピンクのグラデーションをセレクトしている。しかし、この新しいグラデーションを使っているロングアイランドは男女ともにこの1色ずつのみ。多色ではなくあくまでも1色を軸に多様な色へと広げていく姿は、時計のディティールにこそこだわって開発を続けてきたフランク・ミュラーらしい考え方である。
グラデーションカラーの美しいこの時計は、この11月に日本に上陸する。やさしさと大胆さ、パラドクサルな個性が宿るこのマスターピースをぜひ手にとってみてはいかがだろう。