A.ランゲ&ゾーネCEO ヴィルヘルム・シュミット氏インタビュー|A.LANGE & SÖHNE
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2015年12月24日

A.ランゲ&ゾーネCEO ヴィルヘルム・シュミット氏インタビュー|A.LANGE & SÖHNE

A.LANGE & SÖHNE|A.ランゲ&ゾーネ

CEO ヴィルヘルム・シュミット氏インタビュー

2015年は、ドイツの最高峰ウォッチブランド「A.ランゲ&ゾーネ」にとって、1990年の復活、1994年の復活・新生第1弾コレクションの発表に匹敵する記念すべき年となった。創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲの生誕200周年という節目であり、しかも8月末に待望の新工房が落成、稼働を開始したのだ。これを機にブランドはどこに向かうのか。9月末の香港でCEOに今後の方向と戦略を聞いた。

Text by SHIBUYA Yasuhito

ブランド復活以来、最も大きな決断

「3年前の2012年、私たちは大きな岐路に差しかかっていました。小さな工房のままで仕事を続けるのか。それとも、復活以来、最大級の設備投資を行って、スペースに余裕のある新工房を建設するのか。最終的に私たちは新工房の建設を選択しました。それはとても重大な決断でした」

A.ランゲ&ゾーネのCEO、ヴィルヘルム・シュミット氏は、完成・稼働を開始した新工房を建設するに至った理由を語り始めた。

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「当時、私たちが抱えていたいちばんの問題。それは、納得できる時計作りのための充分なスペースがないことでした。ひとつの工程を終えた部品を、次の工程に移動させる。そのために部品を一度、屋外に出さなければならないという状況でした。そのため、時計師をはじめ工房のクラフツマンたちには、大きなストレスがかかっていました。この状況を変えるためには、新工房を建設するしかありませんでした」

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そして3年後の2015年夏、ついに新工房が完成。8月26日、ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏、ドイツ・ザクセン州知事スタニスラフ・ティリッシュ氏や、A.ランゲ&ゾーネが所属するリシュモン・グループの総帥であるヨハン・ルパート氏らの臨席のもと、壮大な落成式が行われた。

「新工房には約5400㎡という充分なワークスペースがあり、時計師たちが快適に、安心して働ける環境が整っています。労働環境は大幅に改善されました。また、生産効率の問題もこれで解決されました。よりよい時計を作るための環境がこれで整いました」

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シュミット氏は満面の笑顔で語る。

新工房はまた“地球に優しい”工房でもある。空調は地中熱とヒートポンプを使った最新のもので、温度も湿度も完璧に管理できる上にゼロ・エミッション、つまり環境負荷ゼロを達成。現代の時計工房の中でも、従業員にとって最良のものと言える。

「落成式にメルケル首相閣下とザクセン州の知事閣下にご臨席、そしてスピーチをいただけたことは、非常に光栄なことでした。それは、私たちが雇用を創出して人材を育成するなど、ドイツに、ザクセン州に対する貢献を認めていただけたということでもあります。私たちはそのことに自信と誇りを持っています」

一切変わらぬ、時計作りの哲学

では新工房の完成・稼働で、A.ランゲ&ゾーネの時計作りは何がどう変わるのか?

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「高級時計の世界では、新工房を作った時計ブランドのCEOは、必ず次のような質問を受けます。『新工房は、生産本数を大きく増やすためですよね?』『もっと、幅広い顧客から受け入れられる時計を作るためですよね?』と。しかし、どちらについても、私たちの答えはNoです。私たちが新工房を作るいちばんの目的は時計師をはじめ働く人々が働きやすくするためで、生産数を大きく増やすことなど、まったく考えていません。製品の性格を大きく変えるつもりもありません」

そしてシュミット氏は、自社製品を次のように位置付ける。

「私たちのお客さま、A.ランゲ&ゾーネの腕時計を購入される方は、時計について深い造詣と愛情を持ち、一見すると控え目なデザインや芸術的なメカニズムの価値を理解してくださる、みなさんです。私たちはこれからも、そんな方々のために時計作りを続けていきます。無理に売ろうとは思っていません。価値をご理解いただける方々に、納得してご購入いただく。それが私たちA.ランゲ&ゾーネのビジネススタイルです。時計作りの哲学も、販売に関するこのポリシーも一切変えることはありません。生産数も大幅に増やすようなことはありません。すでに3〜5年後の製品と生産計画は固まっています」

“新しい挑戦”で、さらに魅力的な時計を

新工房の最大の成果は、時計師をはじめクラフツマンたちの「時計作り」へのモチベーションが高まったことだとシュミット氏は語る。
「新工房ではグラスヒュッテの時計作りの伝統と哲学を反映した、さらに素晴らしい時計作りへの情熱が、さらに高まっています。ごく近い将来、『奥ゆかしい、派手さはないけれど、品格のある、いつまでも変わらぬ価値のある』さらに魅力的な時計が新工房から誕生するでしょう。CEOとして私はそのことを、顧客やファンのみなさんにお約束します」

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問い合わせ先

A.ランゲ & ゾーネ

Tel.03-3288-6639

http://www.alange-soehne.com/

           
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