青銅の門を開けると、そこはからはプライベート空間。時間が止まったかのような静寂が広がる。
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TRAVEL
2020年6月1日
古都鎌倉のハイダウェイ。ソーシャルディスタンシング旅に「鎌倉古今」|TRAVEL
TRAVEL|鎌倉古今
ひと晩ふた組まで。再生古民家の快適スイートに泊まり、爽快なイタリアンを愛でる
アフターコロナでは、旅のスタイルが変化していくはずです。その鍵を握るのはやはり、ソーシャルディスタンシング。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、他人と接触する機会はまだまだリスクと考えられるからです。ならば接触しなければいいのでは? プライベート空間で過ごすお籠りスタイルならば、社会的距離を保ちつつ、閉鎖感を解き放ち、旅気分を存分に味わえるのです。
Text & Edit by TSUCHIDA Takashi
贅沢空間で過ごす私的時間を「鎌倉古今」で取り戻す
緊急事態宣言が解かれ、徐々に以前の生活へと戻りつつある現在。日々の疲れを癒やして明日の糧とする「旅」についても、いち早く元通りになることを願っています。でも自体はそう簡単には収まらないことは、誰もが気づいているはず。少なくとも効果のあるワクチンが開発されるまでは、この特殊な状況下に準じた行動をとる必要がありそうです。
他人と接触する可能性があるならマスクをつける。そんなことは皆んな分かっています。でもそんな感じでリラックスなんてできますか? 私はやっぱり嫌だなぁ。それならプライベート空間に籠もって他人と合わないほうがよっぽどリフレッシュできます。
例えば、「鎌倉古今」。ひと晩でふた組までという宿泊スタイルは、まさにソーシャルディスタンシングな旅スタイルを実現します。しかも各部屋は玄関に対して左右に完全に別れ、ひとつ屋根の下でも、顔を合わせることがありません。小さな宿ゆえに少数のスタッフで運営しているので、各員の体調管理を含め、目が行き届いている安心感があるわけです。首都圏からのクルマでのアクセスも便利。移動中の接触リスクもありません。
閑静な住宅街に佇むこの宿は、築160年以上の古民家をフルリノベーションしたもの。外観を見渡すと古き良き時代の日本にタイムスリップした感覚を覚えます。しかし室内は快適そのもの。かつての古民家プロジェクトにありがちな夏暑く冬寒い、音が漏れる心配は無用です。天井と床に断熱材を張り巡らせ、壁の隙間は修復、万全の空調設備が導入されています。梁や天井、蔵の外観など、古民家らしさは生かされていますが、中身は21世紀というわけです。
部屋はそれぞれ個性が異なりますが、リビングにはソファ、寝室はベッド、バスルームには24時間温度調節機能付きのバブルジェットが備えられています。宿泊者はそれぞれの部屋に籠もってプライベート時間を過ごすことが念頭に置かれた設計なので、ソーシャルディスタンシング旅に無駄となるものは一切ありません。
TRAVEL|鎌倉古今
ひと晩ふた組まで。再生古民家の快適スイートに泊まり、爽快なイタリアンを愛でる(2)
そして鎌倉古今に付帯するイタリアンレストラン「Restaurant Cocon」も、ただいまソーシャルディスタンシング中です。もともとカウンター10席、個室1テーブル6席というCOZYな空間でしたが、さらに人数を絞り、カウンターは3組、個室1組で運営しています。
まさに経営努力の賜物ですが、利用する側としては美味しいものを安心安全にいただけるのですから、有り難い話とは思いませんか? カウンターキッチンは、対面ではなく同じ方向を向いて座ります。このスタイルだと話に夢中になりすぎず、料理に集中できることも好都合です。
レストランは、宿泊せずとも利用できますが、宿泊者はもちろん優先。せっかくなら、そのまま靴を履くことなく、自室の鍵を開けてゴロンと横になる贅沢まで味わい尽くしたいです。
しかもこのイタリアンは、あのアルケッチァーノの奥田シェフがプロデュースした注目店。現在、厨房を仕切るのは、奥田シェフのもとで6年間研鑽を積んだ池田シェフ率いる3名のチームです。
「Restaurant Cocon」はコースのみ。メニューは2カ月に一度、変わっていきますが、その一例を紹介しましょう。例えば春先の夜のコースが下記。食事から甘味まで、満足の皿数です。クライマックスは当然、和牛ですが、そこに至るプロセスとドルチェへと続く余韻に、「Restaurant Cocon」らしさが出ています。
Stuzzichino キャビアポレンタ
Antipasto 岩牡蠣
Primo Piatto 春野菜
Secondo Piatto 鯛と蛍烏賊
筍のアルフレッド風
鎌倉古今 厳選和牛
Digestivo カンパリのグラニテ
Dolce 抹茶と山椒
Antipasto 岩牡蠣
Primo Piatto 春野菜
Secondo Piatto 鯛と蛍烏賊
筍のアルフレッド風
鎌倉古今 厳選和牛
Digestivo カンパリのグラニテ
Dolce 抹茶と山椒
ひと皿ずつ説明していきます。一口前菜(Stuzzichino)の「ポレンタ」とは、トウモロコシの粉を使った料理。一般的には粥状に仕上げてドロっとさせますが、Coconではカリッと揚げて、キャビアを添えていました。サクサクとした食感と、キャビアの上品な塩気がこの日の先制パンチ。
続く前菜(Antipasto)の「岩牡蠣」は、牡蠣本来のクリーミィさにチーズのグラニテで追い打ちをかけます。そこに柑橘のキリッとした酸味と氷の冷たさが加わり、口の中に旨味が広がるひと品。このシャキッとした舌触りは、カンターキッチンの賜物と言えそうです。出来たての瞬間を逃さず、シェフがカウンター越しに提供してくれるのですから、氷が解ける直前のタイミングを逃さず頬張ることができるわけです。
そして奥田イズムの真骨頂を感じたのが「春野菜」。野菜の種別に火入れを変え、それぞれの野菜がベストな状態でハーモニーを奏でています。しかもドレッシングは温かみのあるもの。昆布と鶏の濃厚スープにほうれん草のペーストを加えてまとめています。このまろやかな味わいが、春野菜の苦味を消すことなく、その力強さを引き立てているのです。
「鯛と蛍烏賊」につづく「筍のアルフレッド風」ですが、こちらは平たいフィットチーネにパルミジャーノをたっぷりと使ったチーズィな一品です。それに旬の筍を合わせていました。筍の食感とパスタのもっちり感をつなぐチーズの力強さ。これはもう病みつきです。「“アルフレッド風”とはアメリカで流行ったイタリア料理なんです」と、池田シェフが話をしてくれました。料理の背景をカウンター越しに聞けるのもカウンターキッチンの醍醐味。池田シェフは料理中でも、その手を休めることなく、ふとした質問に快く答えてくれます。
さらに間違いのない「和牛」グリルが続き、「カンパリのグラニテ」を挟んで、ドルチェへ。「抹茶と山椒」って!? 甘さと痺れのマリアージュ、ぜひ「Restaurant Cocon」で楽しんでください。やっぱり外食の楽しみは、驚きと発見に尽きます。
一夜明けた、翌朝。鎌倉古今の朝ごはんは和食の膳となっています。山形つや姫の土鍋炊きごはんは、まさにつやつや。築地の一夜干し鯖をメインに、地元のお豆腐屋さんが作るがんも、釜揚げしらすの大根おろし、旬のサラダなど、身体に優しい食材が並びます。
さて、ひと晩にふた組だけの「鎌倉古今」。2020年の旅ニーズにパーフェクトに答えている宿泊施設ではないかと思うのですが、皆さんはどう思われますか? お籠りスタイルというと、以前は敷居が高いと思われがちでしたが、いまはこうしたデスティネーションを積極的に選んで正解と考えます。
貸別荘とも違って、スタッフが滞在中のサポートをしてくれるので、日常のスイッチを完全にオフにできます。市内に外出するなら、宿専用車が無料送迎。コンビニへの買い出しも、リスクを減らして行動する手段が提供されています。
つまり、この宿の良さは、しっかりと籠もれるところ。浴衣着で暮らすように籠もる安心感は、何物にも代えがたいです。古民家という非日常空間も新鮮かつ快適。冷蔵庫にはビールやジュースを含め、飲み物が無料(※ワインボトルは別途)というから、もう外に出る理由がありません。閉塞的な日常からひと時離れ、セルフケアする。安心安全に、イタリアンを堪能する。そんなソーシャルディスタンシング旅に、出掛けませんか?
鎌倉古今
住所|神奈川県鎌倉市二階堂836
ゲストルーム|古今メゾネットスイート101号室、蔵メゾネットスイート102号室(ともに定員4名 ベッド&和布団)
チェックイン/チェックアウト|15:00/11:30
料金|4万8000円(2名利用時の1名料金)、3万8000円(3名利用時の1名料金)、3万3000円(4名利用時の1名料金) ※すべて朝食付き、税別
ディナー|1万2000円(18:00〜20:00LO)
住所|神奈川県鎌倉市二階堂836
ゲストルーム|古今メゾネットスイート101号室、蔵メゾネットスイート102号室(ともに定員4名 ベッド&和布団)
チェックイン/チェックアウト|15:00/11:30
料金|4万8000円(2名利用時の1名料金)、3万8000円(3名利用時の1名料金)、3万3000円(4名利用時の1名料金) ※すべて朝食付き、税別
ディナー|1万2000円(18:00〜20:00LO)
問い合わせ先
鎌倉古今
Tel.0467-81-4435
https://www.kamakura-cocon.jp