MUSIC|現代ジャズの快作 グレゴリー・プリヴァ『Tales of Cyparis』
MUSIC|フランス領マルティニーク出身のピアニスト
現代ジャズの快作
グレゴリー・プリヴァ『Tales of Cyparis』
2012年、デビューアルバム『Ki Kote』で、全世界の現代ジャズファンを魅了したピアニスト、グレゴリー・プリヴァ。11月3日(日)、前作からの予想をはるかに超える、待望のセカンドアルバム『Tales of Cyparis』をリリースする。
Text by IWANAGA Morito(OPENERS)
マルティニーク島の伝説を、壮大なスケールの音像で描き起こす
1984年、フランス領マルティニークに生まれたグレゴリー・プリヴァは、カリブを代表するグループ「マラヴォワ」のピアニストでもあるホセ・プリヴァを父にもつ、カリビアン・ジャズ・ピアニストだ。幼少期よりクラシックピアノを学び、ジャズクラブでのライブ、ジャムセッションで腕を磨きながら、2005年にはマルティニークのジャズフェスティバルにも出演した。
その後グレゴリーは、パリのジャズシーンで活動を開始。カリブ海に浮かぶグアドループ島の伝統打楽器をジャズに取り入れ、特有のメロディセンスで、オリジナリティに溢れたサウンドを打ち出す。さまざまなバンドで活動しながら、多くのコンペティションでその名を轟かせた。2012年にデビューアルバム『Ki Kote』をリリース。その名声は、日本を含む全世界に届いた。
そして2013年、世界的に注目度の高いフランス屈指のレーベル「プリュ・ロワン」からリリースするセカンドアルバムが『Tales of Cyparis』だ。
本作は、1902年にマルティニーク島の街を壊滅させ、住民3万人が犠牲になったプレー山の大噴火の際に、独房に監禁されていたことで生存者となった黒人囚人、オーギュスト・シパリの伝説をテーマに製作されているという。
その物語をマルティニークのクレオール詩人、ジョビー・ベルナベが楽曲にのせる。クレオールとは、中南米やカリブ海の植民地生まれのヨーロッパ人、及びそれに付随する諸々の文化的背景を指す。ジョビーがクレオール言語とフランス語を駆使して参加した4つのトラックは、アルバムの要点で登場し、作品に歴史的な背景を色濃く反映している。
バンドメンバーには、注目の若手からすでに大きな実績のあるミュージシャンまで、高い演奏力とポテンシャルを備えた面々がそろう。2人の打楽器奏者によるマルティニーク特有のリズム、ベースが作り出す渦巻くグルーヴ、絶妙な世界を演出するギターの音色、物語を描きながら高みへ駆け上がっていくようなピアノ――それぞれが絡み合い、豊かな音の情景を生む。作曲と即興とが共存する美しい楽曲のなかで、マルティニーク島の伝説を描き起こしたおよそ1時間の物語が展開される。