松浦俊夫|独創的な楽曲とパフォーマンスで人びとを魅了するデュオ、エゴ・ラッピン
松浦俊夫|from TOKYO MOON 4月21日 オンエア
独創的な楽曲とパフォーマンスで人びとを魅了するデュオ、エゴ・ラッピン
DJ松浦俊夫による、大人のための音楽番組『TOKYO MOON』。日曜の夜23:30から、InterFM 76.1MHzにてオンエア中です。世界中から選りすぐった“フレッシュ”な音楽や、大人の知的好奇心を刺激するトピックスをご紹介。ここではオンエアされたばかりの内容を振り返ります。アーティストについて深く掘り下げたり、関連した楽曲を紹介したり、さらにはその曲が購入できたりと、『TOKYO MOON』を目と耳で楽しむ連動連載です。今週は番組で紹介したなかから、類いまれなるセンスで人びとを魅了しつづける、エゴ・ラッピンにスポットを当ててお届けします。
Text by MATSUURA Toshio
2年半ぶりに新作をリリース!
先日、2年半ぶりに8枚目となるフル・アルバムを発表したばかりのエゴ・ラッピン。1996年の結成以降、ジャズ、ロック、スカ、ブルーズ、そして昭和歌謡まで、あらゆるジャンルの音楽を飲み込み、ヴォーカルの中納良恵とギターの森雅樹の類いまれなるセンスで唯一無二のサウンドを作り上げてきました。そして、ライブでは個性的な衣装や、感情をあおり立てるようなパワフルなパフォーマンスで人びとを魅了するふたり。
わたしが彼らの音に出合ったのは、1999年に2枚のミニ・アルバム『His Choice Of Shoes Is Ill! 』、『Swing For Joy』を発表したころでした。特に後者に収録された「A Love Song」は、夜明け前のナイト・クラブのクロージング・テーマとして有名になりました。そしてその直後「色彩のブルース」で人気が爆発。日本では珍しく個性的であることに胸を張り、貪欲なまでに様ざまな音楽とアート、文学を日々吸収しているであろうことは、彼ら自身から発せられているオーラですでにお気づきかとおもいます。
いまも印象に残っているのは、2002年秋に来日したフランスのシャンソン界の国民的ヒーロー、アンリ・サルヴァドールの公演会場でふたりに出くわしたこと。まさかここまで聴き込んでいるとはおもいもよりませんでした。心の中で脱帽した瞬間です。
さて、今回紹介した楽曲、「女根の月」は2006年発表の『On The Rocks!』でアートワークを手がけた、現代美術家の大竹伸朗が作詞を担当。練られた詩とエゴ・サウンドは見事にマッチングし、情緒的な世界を生み出しています。
「女根の月」
作詞:大竹伸朗
作曲”EGO WRAPPIN'
生温(ナマヌル)い沖の砂浜、月海揺らぐ汐風のキネマ
逆光の裸女(ラジョ)、波間の夜光虫とノタリポカリユラリルラ
寝返れば垂直の山影、忍び寄る背徳の岩襞(イワヒダ)
女根(メコン)の引力、宙吊りの熱帯重力
とろける宇宙と妄想の速度、対岸の灯(ヒ)、貝殻の孤独が残響
ああ、また空(クウ)の彼方にポカリ情炎(ジョーエン)
濡れて染まる舌先のリズム、島色の柔肌、滑り落ちる極彩の星屑
ビバップボップシュビドゥビデュッブ
踊れ踊れ原子の渦に
舞われ舞われ原始に抱かれ
リリルルラ ララロリル
混沌の椰子の実、ケンタウルスと磯に戯(タワ)むる
逆光の裸男(ラダン)、背(セナ)の砂、ザラつく夜想と忍び逢い
モランディーグレーの岩肌、滑り吹く闇女(ヤミオンナ)の甘い吐息
女根(メコン)の微睡(マドロ)み、多肉熱葉(タニクネッパ)のしとね
忘却舐めるサボテンの花、恍惚色のよこしまな蜜が降る
ああ、また空(クウ)の彼方にポカリ情炎(ジョーエン)
濡れて染まる舌先のリズム、島色の柔肌、滑り落ちる極彩の星屑
ビバップボップシュビドゥビデュッブ
女根(メコン)の月影、マグマの見る夢は何処
駆け抜ける無常の音(ネ)、憂いの肩越しに銀河系ブルージャングル
ああ、また空(クウ)の彼方にポカリ情炎(ジョーエン)
濡れて染まる舌先のリズム、島色の柔肌、滑り落ちる極彩の星屑
ビバップボップシュビドゥビデュッブ
踊れ踊れ原子の渦に
舞われ舞われ原始に抱かれ
リリルルラ ララロリル
夜闇のたう島影のワヤン、虚空刹那(コクウセツナ)に流星ひとつ
逆光の裸島(ラトウ)、インディゴのしじまにむせぶ 浮きの桟橋
ルナの葉陰、今宵夜風に星色の残り香
一方、大胆にアフロ・ビートを取り入れた「10万年後の君へ」では2年前の震災を受け、処理が困難な放射性廃棄物を暗示させる歌詞で、聴く者にこの問題について考えることを提示しています。
最新作『steal a person's heart』では、変わらずソリッドな部分を残しつつも、円熟味を増しながら柔らかくなっていく一面を見せた彼ら。エゴ・ラッピンが進化する過程を我われファンは楽しむことが出来るのです。
REVIEW|TRACK LIST
01. Jean-Claude T. / A Trubute To Donald Byrd (Philadelphia International)
02. Nannie Porres & Claes-Goran Fagerstedt Trio / It Ain't Necessarily So (Tramp)★
03. Ego Wrappin' / 女根の月 (Mekon No Tsuki) (Toy's Factory)★
04. Ego Wrappin' /10万年後の君へ (10 Mannego No Kimi E) (Toy's Factory)★
05. Angelique Kidjo / Cold Sweat (P-Vine)★
06. The Rift Valley Brothers / Mu Africa (Soundway)★
07. Mulatu Astatke / Yegelle Tezeta (Buda Musique)★
08. Don Blackman / Holding You, Loving You (GRP)★
09. Tyler The Creator / Treehome95 (Odd Future)★
10. King / In the Meantime (King)★
11. Inc / The Place (4AD)★
12. Bonobo / Heaven For The Sinner (Ninja Tune)★
13. Gold Panda / Trust (Yoshimoto) In Sequence
14. Rhye / Hunger (Polydor)★
15. Boom Clap Bachelors / 5øren (Music For Dreams)★
今週の「TOKYO MOON on iTunes」
これまでに紹介した楽曲のなかから、選りすぐったものをここで購入できます。気になった楽曲がすぐ入手できる喜びを味わってください。今回はこれまでに番組で紹介したエゴ・ラッピンの2作品をご紹介。1曲はTVアニメ『ルパン三世』のカバー集。そしてもう1曲は前作『ないものねだりのデッドヒート』に収録されたナンバーです。
あらかじめ「iTunes」ソフトをインストールのうえ、お楽しみください。
Ego Wrappin' And Gossip of Jaxx / Love Theme 2010.3.7 ON AIR
Ego Wrappin' / love scene 2010.10.24 ON AIR
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日23:30~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
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