MOVIE|4人の巨匠によるオムニバス映画『ポルトガル、ここに誕生す』
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2015年4月6日

MOVIE|4人の巨匠によるオムニバス映画『ポルトガル、ここに誕生す』

MOVIE|ヨーロッパ映画界を牽引する4人によるオムニバス映画

鮮やかな“発祥の地”の記憶『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』

“ポルトガル発祥の地”として知られるポルトガル北西部の古都ギマランイスが昨年、欧州文化都市に指定されたのを記念して、ヨーロッパ映画界の4人の巨匠が競演したオムニバス映画『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』が日本に到着。9月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開される。

Text by YANAKA Tomomi

欧州文化都市に指定されたことを記念した一大プロジェクト

1143年にポルトガル王国が誕生し、初代国王アフォンソ1世の生地であることから“ポルトガル発祥の地”と呼ばれるギマランイス。いまも歴史的建造物が多く残る旧市街地は“ギマランイス歴史地区”としてユネスコの世界遺産にも登録。さらに昨年、EUが提唱する欧州文化都市にも指定されたことを受け、さまざまな記念行事が開催されるなか、一大プロジェクトとして製作されたのが『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』だ。

このオムニバス映画に集結したのは、ヨーロッパ映画界から、世界にその名を知られる4人の巨匠たち。北欧フィンランド出身ながら20年以上もポルトガルに在住のアキ・カウリスマキ、隣国スペインからビクトル・エリセ。そして、本国ポルトガル代表はペドロ・コスタと、なんと104歳を迎えたマノエル・ド・オリヴェイラのふたり。彼らの手によってスタイルもトーンもまったく異なる独創的な4つの作品がつくりあげられた。

それぞれの視点で切り取られた4つの歴史物語

アキ・カウリスマキ監督が手がけたのは歴史地区にあるバーで働く男を主人公にした『バーテンダー』。孤独な男の1日を、セリフなしで淡々と描き出し、ペーソス溢れる喜劇に仕上げられた。

一方、現代映画の最先端をいくペドロ・コスダ監督は、アフリカ移民のヴェントゥーラが1974年のカーネーション革命に参加した亡霊かもしれない兵士と語り合う異形の会話劇『スウィート・エクソシスト』を製作。ギマランイスに端を発した企画でありながら、“いかにしてギマランイスで撮影しないか”という動機に基づき、ほぼ全編がエレベーターのなかで展開される類まれな作品となった。

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また20世紀初頭にはヨーロッパ第二の紡績繊維工場へと発展しながら2002年に閉鎖され、いまは“割れた窓ガラス工場”と呼ばれるその跡地を訪ねた『割れたガラス』は、『マルメロの陽光』で知られるビクトル・エリセ監督の最新作ドキュメンタリーだ。

そして現役最高齢となる104歳のマノエル・ド・オリヴェイラ監督は、しんがりを飾る『征服者、征服さる』でギマランイスの起源でもあるアフォンソ1世のエピソードを紹介。しかし、彼ならではのユーモアで堅苦しい歴史物語を忌避し、アフォンソ1世の銅像をめぐる痛快な掌編をみせている。

昨年のローマ国際映画祭でワールド・プレミアされた後、第13回東京フィルメックスで特別招待作品として上映され、会場に詰め掛けた多くのファンを虜にした本作。4人の監督たちはその個性を十分に発揮し、ひと癖もふた癖もある作品で観客たちを唸らせる。それぞれの視点から切り取られた、ギマランイスが語る4つの歴史物語は、知的な発見と映画を見る喜びを与えてくれることだろう。

MOVIE|ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区 02

『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』

9月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開
監督・脚本|『バーテンダー』 アキ・カウリスマキ/『スウィート・エクソシスト』 ペドロ・コスタ/『割れたガラス』 ビクトル・エリセ/『征服者、征服さる』 マノエル・ド・オリヴェイラ
2012年/ポルトガル/96分
http://www.guimaraes-movie.jp/

           
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