MOVIE|大都会の傍らで消えゆく風景、人、生き物たち『ソレイユのこどもたち』
MOVIE|大都会の傍らで消えゆく風景と人、生き物たちを静謐に描き出す
奥谷洋一郎監督によるドキュメンタリー『ソレイユのこどもたち』
東京という大都会の片隅で野良犬とともに暮らす老人。その姿を追った奥谷洋一郎監督によるドキュメンタリー『ソレイユのこどもたち』が、7月20日(土)からK's cinemaでレイトショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
山形国際ドキュメンタリー映画祭で「アジア千波万波部門 特別賞」を受賞
見世物小屋一座を追い、昨年劇場公開された『ニッポンの、みせものやさん』で一躍脚光を浴びた、奥谷洋一郎監督の新作『ソレイユのこどもたち』。2011年、山形国際ドキュメンタリー映画祭のアジア千波万波部門で特別賞を受賞したものに、整音とあらたな音響効果をほどこし、完成度を高めた作品がいよいよ公開される。
奥谷洋一郎監督は岐阜県生まれの東京育ち。慶應義塾大学文学部卒業後、映画美学校ドキュメンタリー・コース研究科を終了し、ドキュメンタリー映画作家の故佐藤真氏と筒井武文氏に師事。『ソレイユのこどもたち』は、佐藤氏の遺した企画ドキュメンタリー映画『トウキョウ』の一遍として発想し、制作された。
「トウキョウ」をモチーフにした作品を撮影するため、奥谷監督が探したのは、いまの東京ではすでに見かけなくなった野良犬。カメラはそんな野良犬とともに都市の隙間で暮らす老人に迫ってゆく。
「ソレイユ」とともに廃船で暮らす老人
東京・多摩川の河口に、モーターボートの修理をしながら、捨てられた船で暮らすひとりの老人がいた。いつも犬を傍らに、川岸で近所に住む人たちと語らう老人。彼はその犬をフランス語で太陽を意味する「ソレイユ」と呼んでいた。
ソレイユを家族のようにいつくしむ老人の姿を映し出すカメラ。いつしか彼は時折カメラに向かって話しかけるようになっていく。そして、東京の片隅に暮らす老人と犬たちを見つめるまなざしは、忘れられた“東京”という街の記憶とも重なっていくのだった。
奥谷洋一郎監督があらたに紡ぎだしたトウキョウ・ドキュメンタリー。大都会の傍らで消えゆく風景と人、生き物たちが静謐に映し出されてゆく。