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2015年1月7日
MOVIE│シベリアを脱出し歩きつづけた男たちの物語『ウェイバック -脱出6500km-』
MOVIE│リアリズムにこだわるピーター・ウィアー監督が映画化
『ウェイバック -脱出6500km-』
シベリアを脱出しインドまで歩きつづけた男たちの物語
第二次世界大戦下、シベリアの強制労働収容所から1年あまりをかけて6500キロを踏破し、インドへとたどり着いた男たちの物語『ウェイバック -脱出6500km-』が9月8日(土)から銀座シネパトスほか、全国ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
監禁状態という“顕微鏡”に置いた人間の本質を描く
物語の主人公のモデルでもあり、ポーランド人兵士として、実際にシベリアの強制労働収容所から脱出を果たしたスラヴォミール・ラウイッツ。彼の真実の物語を、6度のアカデミー賞ノミネートに輝き、『いまを生きる』『トゥルーマン・ショー』などで人間の本質を描きつづけてきた名匠ピーター・ウィアー監督が映画化した渾身の一作がこの秋公開される。
主人公ヤヌシュには『ワン・デイ 23年のラブストーリー』のジム・スタージェスが抜擢され、過酷な運命に翻弄されながらも必死に生き抜こうとする男を熱演。共演にはたしかな演技力をもつ『ザ・ロック』のエド・ハリス、今夏公開の話題作『トータル・リコール』のコリン・ファレル、『裏切りのサーカス』のマーク・ストロング、さらに若手実力派として名高い『ハンナ』のシアーシャ・ローナンが名を連ねる。
徹底的にリアリズムにこだわることで知られるピーター・ウィアー監督は、今回の映画でも俳優陣に収容所についての知識を深めさせるとともに、サバイバル・キャンプを経験させ、飢えと疲労によってどのように身体が変化をしていくか、どう精神状態が変わっていくかを体感させたという。『トゥルーマン・ショー』『マスター・アンド・コマンダー』といった作品同様、監禁状態という“顕微鏡”の下に人間の本質を置いたウィアー監督。ふつうの人びとを異常な事態や環境にさらし、外面を剥ぎとり、登場人物も観客をも自分自身の内面に向き合わせてしまう力作だ。
凍てつく森を抜け、灼熱の大地を歩きつづける6500キロの旅路
1940年、ソ連・スターリンの恐怖支配に巻き込まれ、無実の罪でとらわれたポーランド人兵士ヤヌシュ(ジム・スタージェス)は、極寒のシベリアにある矯正労働収容所に護送された。夏はうだるように暑く、冬はひどく寒く、そして、ブタの餌よりもひどい食事。人間が人間らしくいられない環境にくわえ、その「シベリアそのものが収容所。シベリアそのものが看守」といわれた過酷な自然から“自由”を求めて脱出しようとするヤヌシュ。
彼は仲間をひそかに募り、ある吹雪の夜、6人とともに収容所を脱出。雪と闇にまぎれ、なんとか追っ手はまいたものの、この先彼らが進まねばならない道のりはじつに厳しいものだった。食料も装備もほとんどなく、目指す方向も不確かななか、凍てつく森を抜け、灼熱の大地をわたる6500キロの旅路。想像を絶する苦難に直面する彼らがしたことはただひとつ。歩いて、歩いて、歩きつづけることだった。そして、彼らの旅路の果てに待っているものとは――。