INTERVIEW|協和発酵キリン『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』特別対談 川上シュン×blanc.
LOUNGE / FEATURES
2015年2月6日

INTERVIEW|協和発酵キリン『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』特別対談 川上シュン×blanc.

研究開発型ライフサイエンス企業「協和発酵キリン」によるプロジェクト

音楽家たちが10のテーマを聴覚化する『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』

特別対談 川上シュン × blanc.

ライフサイエンス企業「協和発酵キリン」は、自社の取組みを音楽家たちとのコラボレーションを通して伝えるウェブコンテンツ『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』を展開している。今回はこのプロジェクトを企画した川上シュン氏と、アーティスト「blanc.(ブラン)」として参加したメイナード氏との対談をお届けする。当事者たちが語るこの実験的な試みの真意とは。

Photographs by SAITO RyosukeText by IWANAGA Morito(OPENERS)

コラボレーションのきっかけ

抗体技術など最先端のバイオテクノロジーを基盤とした医療用医薬品の製造販売をおこなう、研究開発型ライフサイエンス企業「協和発酵キリン」。現在、同社が掲げる10のテーマを音楽アーティストたちとの楽曲制作により伝えるコンテンツ『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』をウェブ上で配信している。

OPENERSは今回、このコンテンツのディレクションを担当したブランドデザインエージェンシー「artless Inc.」の代表・川上シュン氏と、アーティスト「blanc.」として参加した、ロックバンド「MONKEY MAJIK(モンキーマジック)」のメンバー、メイナード氏との対談を企画。ふたりの出会いから、10 SOUNDS OF LIFE SCIENCEという取り組みが行き着くところまで、話をうかがった。

 

川上 僕はメイナードのことを、MONKEY MAJIKではなくblanc.で先に知った。いまでもよく聴くんだけど「FreeTempo(フリーテンポ)」の『Sky High』という曲。blanc.名義でボーカルとして参加していたんだよね。

メイナード それがblanc.としての最初の活動です。自分のオルターエゴ(別人格)的にはじめたプロジェクトだったのですが、そのままファーストアルバムを作ることに。

川上さんを知ったのは、MONKEY MAJIKが拠点にしている仙台の事務所ででした。そのときは、アルバムのアートワークのプレゼンテーションにいらしていただいて。まだMONKEY MAJIKはメジャーデビューしたばかりのころでした。

川上 ファーストシングル『fly』からファーストアルバム『Thank you』まで、3作のジャケットのデザインをやらせてもらったんだよね。

メイナード もうプレゼンテーションの段階で、一発で川上さんのファンになってしまい、トータルのコンセプトまで監修していただきました。お互いの第一印象が作品によるもので、それがとてもよいものだというのは、ハッピーなめぐり合わせですよね。

川上 僕のなかでは、MONKEY MAJIKの音楽は“スタイリッシュなバンドサウンド”だった。

日本語と英語をミックスするバランスとか、すごく新鮮で。自分がやりたいグラフィックを直球で提案させてもらったんだけど、それを気に入ってくれたので、すごくやりやすかったし、楽しかった。

メイナード MONKEY MAJIKにたいして単なるポップミュージックではなく、アート性を感じてもらえているのであれば、それはビジュアルのおかげです。メジャーデビュー当初のアートディレクションによって、バンドのカラーを印象付けることができたと思っています。そのような経緯もあり、ソロプロジェクトのblanc.でも迷わず川上さんにCDジャケットとミュージックビデオをお願いしました。

川上 オファーがきたときは、すごくうれしかった。サウンドも単なるダンスミュージックというわけではなく、ファッションに近い空気感があるので、ビジュアルも上品でラグジュアリーなイメージでアプローチした。あのときはポジティブなディスカッションができて、現場の雰囲気もとてもよかったよね。

企業とクリエイターが自由にセッションできるフィールド

川上 今回の『10SOUNDS OF LIFE SCIENCE』では10組のアーティストが参加しているんだけど、最初からblanc.にお願いしようと決めていた。なにより、僕自身が新曲を聴きたかったから(笑)。

メイナード 楽曲を発表するのは4、5年ぶりですからね。オファーがきたとき、これはblanc.を復活させるためのチャンスだと思ったんです。もう、ふたつ返事でした。

川上 この「グローバル・スペシャリティファーマ」というテーマも、blanc.にフィットしていると思う。ほかとは一線を画した特殊な分野でグローバルに活躍する企業、それが協和発酵キリン。メイナードの音楽もそこと重なるものがあるのかな、と。言語の面だけでなく、文化への理解という点でもグローバルな視点をもっている。そのいっぽうで、仙台から拠点を動かさないような個性的な一面もある。ふつうだと、東京に来るとかニューヨークに移住するとかあるでしょう? だけど故郷のカナダに帰るわけでもなく、日本の仙台という地元を愛している。すごく大切にしているのが、伝わってくるんだよね。

メイナード ありがとうございます。今回制作した楽曲のタイトル「Closer」には、グローバルであればあるほど世界は小さくなる、という意味を込めています。それは、僕が大切にしている仙台というローカルからの発想なんですよ。ローカルから生まれた「個」がスペシャリティになり、「世界」との距離を近づけてくれるコミュニケーションのツールになる。

川上 仙台のスタジオに行って、ビデオのインタビューをさせてもらったときにデモを聴かせてくれたよね。

メイナード やっぱり川上さんに一番に聴いてほしかったんですよ。好きな音楽やアートワークも共有できる間柄なので、フィードバックも的確にもらえるし。

川上 すごく新鮮な印象のサウンドで、確実にblanc.は進化していると思った。メイナードは、blanc.のエレクトロミュージックとMONKEY MAJIKのバンドサウンドを行き来できるフレキシブルなアーティスト。それがスペシャリティだと思う。

メイナード このプロジェクトに参加できたことを光栄に思います。素晴らしいアーティストのチームに参加できることが、純粋にうれしい。協和発酵キリンさんは、音楽としていいものを作ることを大前提にしてくれましたし、川上さんも10のテーマをうまくそれぞれのアーティストに振り分けていますよね。僕も「グローバル・スペシャリティファーマ」に秘められたコンセプトは、自分のなかにもっているものだったので、制約ではなく、発想を飛躍させてくれるような、そんなテーマでした。

川上 このプロジェクト、実はゴールが見えていないんだよね。それはポジティブな意味で。いい音楽を作ろうと思ってアーティストが集まって、それが完成したとき、どうなるのかは計り知れない。自分のキャパシティをどれだけ越えてくれるのかはわからない。みんな、いい意味で裏切ってくれるからね(笑)。

メイナード 僕は今回の「Closer」を早く現場で披露したいです。まだSoundCloudでしか発表していませんしね。MONKEY MAJIKの武道館ライブが終わったら、blanc.を本格的に再始動したいと思っています。

<About 10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE>
『10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE』は、生命をみつめ、生命に向き合いつづける研究開発型ライフサイエンス企業「協和発酵キリン」が、10の視点から10のアーティストとともに10の音楽に紡ぐプロジェクト。その有機的な営みを、美しい音にのせてお届けする。「世界一、いのちにやさしい会社になる」という情熱と志を胸に、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジー技術を駆使して画期的な新薬を創出、グローバルな展開を通して世界の人びとの健康と豊かさに貢献している。本企画は、アートディレクター/アーティストの川上シュンが代表を務める「artless Inc.」によるプロデュースのもと、展開される。

10 SOUNDS OF LIFE SCIENCE
http://www.kyowa-kirin.co.jp/10_sounds/

blanc.|ブラン
ロックバンド「MONEY MAJIK」でヴォーカル、ギターを担当するMaynardによるソロプロジェクト。2003年より「FreeTEMPO」の作品への参加で活動をスタートし、2008年にはオリジナルアルバム『new world』をリリース。エレクトロサウンドとオーガニックな生音が融合したハウスミュージックを展開し、業界関係者から大きな注目を浴びた。その後も意欲的に活動をつづけ、2009年には2枚目のアルバム『canvas』をリリースした。MONEY MAJIKでのバンドサウンドとは、また異なるMaynardの音楽性を表現する場となっている。
http://www.musiqueblanc.com/

川上シュン|KAWAKAMI Shun
artless Inc. 代表。1977年生まれ、東京都江東区深川出身。アートとデザインを基軸に、ブランディング、デザインコンサルティング、企業やブランドロゴ、映像、建築まで、ジャンルやカテゴリーに縛られない活動を続けている。ポンピドゥー・センター(パリ)、ルーブル宮内フランス国立装飾美術館、ミラノサローネ、TENT LONDON、BODW(香港)など、国内外でのフェスティバルやエキシビション、カンファレンスにも多数参加するなど、グローバルな活躍が目覚ましい。
http://www.shunkawakami.jp
http://www.artless.co.jp

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