前回に引きつづき、「ファッション・テキスタイルデザイナー編」となる今回のゲストは、ファッションブランド「matohu（まとふ）」のデザイナー、堀畑裕之氏と関口真希子氏だ。

「纏う」という積極的な美意識で衣服を身にまとうようす、風をはらむ動作と静かな余韻を残すたたずまいを連想させる、日本語独自の概念。そして「待とう」という、性急に消費し捨てるのではなく、固有の美意識が成熟するのを待とうという呼びかけ。「matohu（まとふ）」というブランド名には、このような作り手の想いが込められている。

和装と洋装を独自の感性で融合させたコレクションからは、穏やかでありながら、新鮮な印象を受ける。味わい深い色彩や布の流れは、日本に生きる人びとの心の琴線に触れる。着実に成長をつづけるそのクリエイションは、海外からの評価も高い。

まとふ｜matohu
堀畑裕之と関口真希子による服飾デザイン・ブランド。「日本の美意識が通底するあたらしい服の創造」をコンセプトに、2005年デビュー。最初の5年間は「慶長の美」を大きなテーマに、織部、志野、かぶき者など、慶長年間（1596～1615年）の精神を服の造形に活かした大胆なコレクションを発表。2009年、毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。現在は「日本の眼」をテーマに、固有の美意識を現代に活かす服作りをさらに先鋭的に展開している。2012年、金沢21世紀美術館デザインギャラリーにて『matohu 日本の眼』展を開催。

ナガオカケンメイ｜NAGAOKA Kenmei
D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長、d design travel編集長。1965年北海道生まれ。日本デザインセンター原デザイン研究所を経て、2000年、東京・世田谷にロングライフデザインをテーマとするストアインフラをイメージした新業態「D&DEPARTMENT PROJECT」を開始。同時にデザイナーの目線で、一人称で書くトラベル誌『d design travel』を、47都道府県分を取材、執筆、発行。2011年から渋谷ヒカリエ「8/」のフロアディレクションと同時に、プロジェクトの総本山的な空間「d47」をオープン。ストア、ミュージアム、食堂を展開する。

平沼孝啓｜HIRANUMA Kohki
建築家。1971年大阪府生まれ。主な建築作品として、デザイン・リサイクル・ショップ「D&DEPARTMET PROJECT」のコンバージョン作品、2008年に東京大学 駒場キャンパスに設計した環境型建築「東京大学くうかん実験棟」など。コンセプチュアルな作品での実験的なデザイン提案が、海外でも高い評価を受ける。日本建築士会連合会賞、日本建築学会作品選奨ほか、グランドデザイン国際建築アワード（イギリス）、イノベイティブ・アーキテクチュア国際建築賞（イタリア）など10カ国で70を超える受賞歴をもつ。現在、大阪大学などで教鞭も執る。