松浦俊夫|Let's Dance! ダンスするよろこびを未来へ
松浦俊夫|from TOKYO MOON 6月17日 オンエア
Let's Dance! ダンスするよろこびを未来へ(1)
日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、おとなたちの至福のとき。そんな時間をさらに豊かにするのが、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』――。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激するおとなのためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて19時からオンエア。ここでは、毎週放送されたばかりのプログラムを振り返ります。今週は「Let’s DANCE署名推進委員会」呼びかけ人のひとり、中村和雄さんにお話を聞きました。
Text by MATSUURA Toshio
いま、ダンスする自由が奪われようとしている!?
昨年から関西地方のナイト・クラブを中心に規制・摘発がつづき、現在その動きが全国に広がりつつある風営法の“ダンス規制”について取りあげました。このたび、ダンスを表現の自由と文化として認めてもらい、規制対象から“ダンス”を削除することを求める署名活動をはじめた「Let's Dance 署名推進委員会」の呼びかけ人のひとり、弁護士の中村和雄さんにお話を伺います。
REVIEW|TRACK LIST
01. Bobby McFerrin / Dance With Me (Elektra)
02. Universal Robot Band / Dance and Shake Your Tambourine (Red Greg)
03. The Funkees / Dancing Time (P-Vine)
04. Atmosfear / Dancing In Outer Space -Lunar Mix Part 1 By Masters At Work (Disorient)
05. Bill Withers / Lovely Night For Dancing (Columbia)
06. Jazzanova / Dance The Dance -Atjazz Remix (Sonar Kollektiv)
07. Irene Reid / Moon Dance (Polydor)
松浦俊夫|from TOKYO MOON 6月17日 オンエア
Let's Dance! ダンスするよろこびを未来へ(2)
「ダンスを規制するのはおかしい」
松浦 5月29日の記者会見からこのLet’s Dance署名推進委員会の活動がはじまったわけですけども、まず10万人の署名を目指してスタートされている「ダンスを規制するのはおかしい」ということですがそこについてお話しをお聞かせください。
中村 じつは私自身、2月に京都市長選挙の候補者だったこともあり、1月にクラブ等で集会を行ったときに、いま非常に規制が厳しくなっていると、ダンスをすること自体がなかなか認めてもらえない大変な問題になっているという話しを聞きまして、それはちょっとおかしいんじゃないかとおもいました。京都はとくに若者の文化とかそういうことを大切にしなくてはいけないところなのに、どんどんダンスをしたりすることが規制されていることはおかしいということでいろいろ勉強しました。そして風俗営業法という法律のなかに、ダンスを営業させること自体を規制の対象にしてしまうということがずっと残ったままになっている……それは時代遅れだろう、と。どう考えても若者がダンスをしている、そのことが風紀を乱すというのは考えられないのに、その規制を利用して、クラブやシーンに規制がかかっていって営業できなくさせている。それを変えていこうと、皆で法律を変える運動をしようじゃないかと呼びかけまして、準備をして5月29日に署名活動がスタートしました。
松浦 風営法のダンスを規制するという部分は数十年前に作られたポイントですね。音楽というよりは、言ってみれば売春行為をおこなうにあたって……
中村 背景としては法律自体が昭和23年なんです。その頃にダンス行為が買売春の温床になっているということで、営業行為としてダンスをすることを規制しようという法律が作られました。いまのようなヒップホップでなく、チークダンス的なものが念頭にあったのだとおもいます。
一部ダンスは中学校の必修科目にも加わっているのに、なぜ?
松浦 いままでに何度か法律が見直されて来てはいるものの、昭和23年からダンスの部分が変わらなかった理由というのはなんなのでしょうか?
中村 よくわかりません。じつは社交ダンスが健全な社交ダンスとして教室もできてきて、映画『Shall we ダンス?』の流行の影響もあって、社交ダンスは健全だということが認められて、ダンス教室は規制から外れることになりました。ただそれは社交ダンスだけの話しであって、ヒップホップ系などは対象の外なんですよ。
松浦 皆さんが主張されている、中学の必修科目に武道と同じようにダンスもくわえられたのにもかかわらず、逆に法で規制することはナンセンスなんじゃないかというのも大きいと思いますが。
中村 今年の4月から、ダンスが中学の必修科目にはいったわけです。柔道などと並んでダンスが健全なスポーツということで文部科学省が推奨しているわけですから、一方でダンスを営業としておこなうということ自体が規制の対象というのはおかしい、ということですね。
松浦 自分自身は風営法についてそこまで詳しくはないのですが、皆さんがこの活動を立ち上げられるまでは、現行の風営法の問題というのが1984年に改正された「営業時間の規制」という、0時もしくは1時までに終了するようにという部分で規制を受けているという認識だったのですが、それはいかがでしょうか。
中村 規制についてはいろいろな法律があるのですが、たとえばカラオケで歌うこと自体は規制の対象になっていない。ですが踊ること自体を規制の対象にしているのが、この風営法ということなんですね。
松浦 歌はいいけど踊りはだめ、みたいに思えてしまうのですがいかがでしょうか?
中村 法律のなかでダンスというのがいかがわしい、というまま来てしまっているんですね。ダンスクラブという言葉を使ったときに、50代60代の方と30代の方では全然違うイメージなんですね。ヒップホップやロック系のダンスだと一人で踊ってみんなで集まってと思っているんですが、年をとった方には高級クラブのなかで男性が女性と踊るというイメージがあります。そのイメージの違いも、ずっといままでつづいてきてしまったことが大きな背景かとおもいます。
松浦俊夫|from TOKYO MOON 6月17日 オンエア
Let's Dance! ダンスするよろこびを未来へ(3)
「クラブは音楽に出合って、人生を学ぶ場でした」
松浦 中村さんたちが風営法の改正を求めているのは「時間」のことではなく、踊るという規制を外してほしいという一点にかぎっているという認識でよろしいでしょうか?
中村 未成年の方が夜中の2時3時までいるのは健全だとは私たちもおもってません、これにはべつの規制が必要です。覚せい剤や麻薬が使われているということがもしあるとすれば、それは取り締まっていかなければならないとおもいます。大多数のクラブは健全に踊るだけのために若者が集まっているわけですから、一緒くたにしてはいけない、踊るということ自体を規制の対象にするのはやめようじゃないか、と言っています。
松浦 自分自身、クラブは音楽に出会って、人生を学ぶ場だった。クラブがあったから音楽という職業を選び、音楽をもって世界中を旅することもできた。扉を開いてくれた場所だったというおもいが強くて、皆さんにもそれを伝えたいとおもっています。今回皆さんが活動をはじめてくださったことで、いろいろな方がこの問題に関して興味をもってくれたのはとても大きいことだとおもいます。まずは8月の終わりを目途に第一次、年内を第二次として活動をされているということですが。
中村 夏はイベントが多いので、署名を集めて国会にもっていこうという相談をしているところです。
クラブ自体に誤解があるなら、改善していかなければならない
松浦 理想のクラブはこういうものだ、という大人の意見をお聞かせください。
中村 付近の住民の苦情、騒音が激しい、そういうことには対面をしなければいけない。また偏見があるとすればちゃんとしたものに変えていかなければならない。法律で規制するのは、目的に沿ったものだけを規制するのであって、踊るということ自体を規制の対象にするのはまずいとおもいます。ただし、薬物などの問題がもしあるとすれば、私たちの運動に入ってもらいたくない、一緒にやりたくない、とおもっています。たくさんの著名なアーティストがご賛同していただきましたが、いま世界的に有名なアーティストもはじめから有名だったわけではなくて、小さいクラブやシーンで育ててもらったという想いがすごくあって、そういうところをひとつひとつ大切にすることで文化は変わっていくし、活躍ができる場が生まれていったということがあります。こういう文化をつぶしてはいけないと訴えていただいています。
松浦 20数年前は大人ばっかりで聞いたことのない音楽が流れて、怖かったのですが、そのなかで学んでいけたというのは大きかったですし、仕事として携わっているなかで、クラブ側もIDチェックをしっかり対応していたりする。騒音の問題についてもスタッフが静かにしてくださいと声をかけたり、まわりの住民の方とも話をしたりしていますね。そのようなことを積み重ねてクラブが文化として語られるようになっただけに、ダンスというところだけで取り締まられることに違和感を感じます。皆さんと話しあっていきたいです。今回だけではなくて、またお話しを聞かせていただくこともあるとおもいます。
中村 法規制だけでなく、クラブ自体をきちっとしたものとして位置付けてもらうようにしていかないといけない、と考えています。
松浦 DJもいまでこそ認められているところはあるのですが、90年代は「なんだよDJかよっ」というのが世の中的にはすごくあって、何度も嫌な思いをすることがありました。だからこそきちんとしなきゃという思いもすごく強かったのですが、クラブというものを今回をきっかけにいろいろな方が、さまざまなところで意見を交わし、文化としてクラブが認められるようになっていけばいい、そのために自分もがんばろう、と。これからも応援しています。今日はありがとうございました。
中村 ありがとうございます。
中村和雄|NAKAMURA Kazuo
1954年千葉県生まれ。弁護士。水俣病京都訴訟、労働問題など行政、労働問題を中心に活動。
著書に『21世紀弁護士論』(有斐閣、共著)、『「非正規」をなくす方法』(新日本出版、共著)などがある。
http://neo-city.jp
Let's Dance 署名推進委員会
今年5月29日から風営法の規制対象から「ダンス」を外すことを求める署名活動をはじめたグループ。法改正を目指し、請願書へ全国10万人の署名を集めることを目標に活動している。詳細な活動内容やWEB署名、請願書ダウンロードなどは下記サイトにて。
http://www.letsdance.jp/
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日24:00~24:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp
Inter FM 76.1MHz
www.interfm.co.jp