松浦俊夫|須永辰緒×松浦俊夫、夜遊び談議
from TOKYO MOON 6月10日 オンエア
今年最大のパーティの全貌が明らかに!
須永辰緒×松浦俊夫、夜遊び談議(1)
日曜の夜、上質な音楽とともにゆったりと流れる自分だけの時間は、おとなたちの至福のとき。そんな時間をさらに豊かにするのが、DJ松浦俊夫によるラジオプログラム『TOKYO MOON』──。彼が世界中から選りすぐったすばらしい音楽や知的好奇心を刺激するおとなのためのトピックスを、毎週日曜日Inter FM 76.1MHzにて19時からオンエア。ここでは、毎週放送されたばかりのプログラムを振り返ります。今週は、“レコード番長”こと、DJ 須永辰緒さんをお迎えしました。
Text by MATSUURA Toshio
ついにあの“レコード番長”が動いた!
2週連続でゲストをお迎えしたTOKYO MOON。今回は“レコード番長”の異名を持ち、クラブシーンで長きにわたり活躍をつづけるDJ、プロデューサーの須永辰緒さんが登場。最近元気のないナイト・シーンに喝を入れるべく、総勢90名近い出演者を集め、東京から元気を取り戻そうと企画したイベント「moderno -Keep Going,TOKYO-」開催への想いから、ふたりが普段クラブで交わしているような他愛ない“よもやまばなし”まで、バラエティ豊かな内容のトークセッションとなりました。OPENERSでは放送を聴き逃した方々のために、誌上にてその模様を全篇公開します。音楽不況や風営法もなんのその。音楽とひと、そして酒を愛するふたりの熱い気持ちをそのやりとりから感じ取ってください。
REVIEW|TRACK LIST
01. Port Of Notes / Oasis - Mode For Kita-Horie Sunaga T Experience Remix (Crue-L)
02. Sunaga t Experience / It's You - Versione Tokyo Bossa by Nicola Conte (Afters or Records)
03. OCTET Sunaga t / キエフの空 (iTunes)
04. Sunaga t Experience / Cuba Libre (Flower)
05. Sunaga t Experience / Lylian Mode (Geneon Universal)
06. Tim Warfield / Lullaby for Nijee (Criss Cross Jazz)
from TOKYO MOON 6月10日 オンエア
今年最大のパーティの全貌が明らかに!
須永辰緒×松浦俊夫、夜遊び談議(2)
“カッ飛ばしていこうぜ東京!”
松浦 かねてより話題のあのイベントが、いよいよ今週の土曜日に開催となりますね。
須永 そう、「moderno -Keep Going Tokyo- at VISION」。4フロアもある渋谷の大きなイベントスペースVISION(ヴィジョン)に、総勢29名のプロフェッショナルDJ、60名のダンサーの出演を予定しています。
松浦 すごい人数ですね……。このイベントの開催を最初に言い出した時、隣にいたように記憶しています。いろんなDJがジャンルを超えて一堂に会する機会って最近なかなかない、って話をしていたんですよね。だったらmodernoでやればいいじゃん、というレベルからスタートした今回の企画。この話をしていたのも、たしかVISIONでした。それからあっというまに準備が進み、かなり早いうちから告知していましたよね。
須永 そうそう、たしか去年の秋にやった“生音ジャズ”のときだったよね。早くから告知していたのは、たんに話が進むとうれしくて、すぐみんなに言いたくなっちゃうタイプだから(笑)。
松浦 今回のイベントに対して、いろいろ想いがあるとおもいますが、開催を決めた理由とは?
須永 3.11以降、なんとなく楽しむことが憚られるムードがあって、いったんは回復したんだけど、かねてからの音楽業界の不況も相まって、だんだんシーンを覆っている空気が薄曇りになっている状況を感じていたんです。それでも東京は潜在的にクラブ人口が多いからまだ大丈夫なんです。優秀なDJもこの街にはたくさん集まっていますしね。とにかく気になるのは地方都市の元気のなさ! 昨今の風営法もあって……風営法自体が一概に悪いというわけではないんです。我われにも大いに反省すべき点はあるとおもいます。法律自体が悪いとか、ダンスする自由を取り上げるなとか、そういうのはちょっとちがうかなと僕は思っていて。まぁ、このことについては自分のなかでまとめて、ブログなどで語りたいとおもいます。
「これが最後だって気概で全員に声かけちゃったですよね(笑)」
須永 それよりなにより東京が元気がないと、地方都市がますます先細りになるということを目の当たりにして──それはDJみんな感じていることだとおもうけど、そこのところを一発打開したいなとおもったんです。そのためにはまず東京が元気になりましょう、というのが出発点。サブタイトルの“Keep Going Tokyo”は、“カッ飛ばしていこうぜ東京!”というイメージです。東京にはこんなすごいパーティがある、東京の夜ってすごいなって、全国から来たお客さんにおもってほしい。それを各自が地元へ持ち帰り、自分たちもやってみるか! とおもうくらいの超ド級のパーティをやりたかった。それなら、知り合いという知り合いのDJに声をかけて、みんなで“いっせーの、せ!”でやったほうがわかりやすいなと。
それに、地方都市では夜のきらびやかなイメージを想起させるバーレスクやポールダンス、ゴーゴー・ダンサーってなかなかないとおもうし、たとえばジャズ×バーレスクとか、あまり接点がないとおもわれる方が多いでしょう。だからそういうのもまとめてショーケースとして見てもらおう、そしてとにかく地方を元気にしたい、というのがこのパーティの狙いです。
松浦 今回はお客さんも多いでしょうけど、DJ、ダンサーだけですでに混雑するでしょうね(笑)。これだけ多くのジャンルを超えたDJが集まるわけですが、なかなか会って話す機会もなくなっているいま──辰緒さんや沖野さんだったり、会うひとにはちょくちょく会うけど、他ジャンルのDJとは互いのパーティに遊びに行くということも昔より減ったし、会わないひとは年に一度くらいしか顔を合わせる機会がない。だから今回いろんなDJが集まるというのは単純にうれしいし、せっかくだからみんなで話そうよ、というのが前提にあるように感じています。
「普段は接点のない各ジャンルのDJも、僕がお世話係をすることで集まれるんです」
須永 それももちろんそうですよ。みんなで集まると楽しいねって、松浦くんとは年に何回かそういう話をするよね。古くは僕のDJ20周年を記念してアゲハでやらせてもらったパーティとか、生音ジャズだったり。なかなか大勢で集まれる機会はないからね。たまたま自分のDJキャリアが長いということもあって、普段はあまり接点のない各ジャンルのDJも、僕がお世話係をすることによって、こうして集まれるんですよね。
たとえばDJ KAORIとMAYURIって接点ないじゃない。でも、KAORIはもともと僕のパーティのお客さんで、MAYURIは僕の同級生、とかってつながりがあったりね。あとタサカくん、彼はいまや日本を代表するテクノDJですけど、彼ももともと僕がヒップホップDJ時代にパーティに通ってくれていたひとりだし、スタジオアパートメントの森田くんはオルガンバー初期に通ってくれてて、レギュラーパーティを任せた後輩だったりするわけで。FPMの田中くん、TAKU(TAKAHASHI)くん、沖野くん、松浦くんとか、しょっちゅう会うひとたちもいるけど、これが最後だって気概で全員に声かけちゃったんですよね(笑)。
from TOKYO MOON 6月10日 オンエア
今年最大のパーティの全貌が明らかに!
須永辰緒×松浦俊夫、夜遊び談議(3)
他ジャンルのDJたちと意見交換できる貴重な機会
松浦 僕は後輩という位置づけだと思いますけど、辰緒さんと出会ったのは僕がまだDJもやっていないハタチくらいの頃、辰緒さんが新宿でやっていたパーティに、それこそMUROくんと一緒に遊びに行っていたんです。いつもハイスツールの椅子にウィスキー片手に腰かけた状態で、ドアを開けるとすぐ辰緒さんがいて、飲まないと入れないという謎な状況で(笑)。
須永 ははは、ドアマン(笑)。
松浦 パーティが終わってから原宿に移動して、デニーズ……いや、ロイヤルホストだったかな? 飲み直しながら、タバスコの飲み合いとかしていた記憶があります(笑)。1980年代の終わりでしたけど、あのころをおもうとジャンル関係なく、遊びの文化華やかなりし時代だったのか、誰もが音楽をふくめライフスタイルに対して貪欲に興味を抱いていた気がします。いろんな理由はあるにせよ、事実そういったものが薄れてきているように感じるんですよね。あの時間を知っている我われふくめ、ほかのDJたちも思うところはおなじだと思うので意見交換したいですね。
先ほど話にあった風営法のことも機会があればこの場でみなさんと話してみたいですね。風営法については、僕としては反対するだけじゃないなにか──イエス or ノーというだけでなく、どうしていくべきかを話すことが第一に必要だとおもうんです。どこが問題なのか、なにをどうすれば改善されるのかなど、みんなで意見を出し合っていきたい。そういう意味で、この夜はクラブトークができるのではと期待しています。
そもそもクラブっていろんな音楽やひとに触れる場であって、お客さんにはあたらしいなにかを見つけて帰ってほしいし、やっぱり元気になってほしい。辰緒さんが最初に言っていたように、東京が元気でないと日本が元気にならないだろう、ということもあるので、この夜は僕も気合いを入れて遊びに行きたいなとおもいます。
この夏、ひと味ちがう「夜ジャズ」シリーズ最新作がリリース!
須永 クラブシーンに対する最後の奉公、というつもりで必死に頑張ります(笑)。今回は東京のDJ以外にも、ロンドン、福島、あと福岡からもドラムンベースユニットが来ますね。これはすっごい隠し球です! 4フロアありますからね、楽しみ方はそれぞれ。全国から遊びに来てもらって、“東京の夜ってこんなにすごいんだ!”と、いろんなものを持ち帰ってもらいたい。それは出演者全員おなじ気持ちでいてくれるとおもっています。
松浦 当日、僕は何時にどのフロアを担当するのか、じつはまだ聞かされていないのですが……。
須永 もう決まってますよ、松浦くん、沖野くん、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)は4時から僕とラウンジだよ(笑)。あ、持ち時間ずっとマイクで喋ってもいいよ、今回は許す! 踊りたいひとはほかのフロアに行けばいいわけだし。
松浦 イベント以外に、最近の活動は?
須永 「夜ジャズ」シリーズの新作リリースを7月に予定しています。今回はシカゴで生まれた黒人による黒人のレーベル「Vee Jay」の音源をコンパイルした“Vee Jayの夜ジャズ”というのを作りました。リー・モーガンやエディ・ハリス、ウェイン・ショーターなど、みんな「Vee Jay」にたくさん残しているんですよね。音源は自分のレコード棚を探ったり、レコード屋で発掘したものですが、かっこいい曲がいっぱいありました。また、音も抜群にいい。いつもの「夜ジャズ」はヨーロピアンな雰囲気だったりするんだけど、今回は様子がちがうとおもいます。なんか、ぶっとい感じ。あらためて黒人ジャズの底力を感じました。あと、TRI4TH(トライフォース)というバンドのプロデュースをしているのですが、先日レコーディングが終わり、ものすごくかっこいいアルバムが完成しました。こちらは8月のリリースを予定していますので、ぜひ聴いてみてください。
from TOKYO MOON 6月10日 オンエア
今年最大のパーティの全貌が明らかに!
須永辰緒×松浦俊夫、夜遊び談議(4)
「好きじゃないことは一個もやってないんです(笑)」
松浦 渋谷であらたなパーティもはじまったとか?
須永 以前のシスコレコードの上階にできたカフェで、「喫茶スマイル」というラウンジパーティをやっています。このカフェ、オルガンバー初期の頃を思わせるアングラな匂いがしてなかなか好き。きっと松浦くんも気に入ると思うよ。
松浦 辰緒さんといえば、3.11直後から積極的に活動されていますよね。たぶん、もっともアクションが早かったのではないでしょうか。
須永 いまは笹塚ボウルというボーリング場を貸し切って、チャリティイベントを年2回おこない、収益を各方面に送っています。酒飲みの吉田 類さんと、いとうせいこうさん、渡辺 祐さん、あとスカパラダイスオーケストラの方々と、メンバーはずいぶん増えました。いまは “復興レベル”を上げていけるように義援活動を定期的におこなっていますし、今後も継続的にやっていこうと、みんなとも話しています。
松浦 週末のmodernoもそうですが、こちらも番組リスナーやOPENERS読者の方々にぴったりなパーティだとおもいます。ちがう場所に行けるおもしろさといいますか、音楽があって、ひとがいて、おもしろいものが必ずそこにある──そういったところが辰緒さんの活動には共通しているようにおもいます。
DJ 須永辰緒にとって、音楽とは?
須永 ただね僕、自分が正直すぎるなっておもうのは、好きじゃないことは一個もやってないんです(笑)。チャリティ活動もそのひとつで、自分が本当にやりたいとおもうこと、いま必要だとおもうことだけしかやっていないので、たまに当てが外れることもあります(笑)。
松浦 だからこそつづけられることってあるじゃないですか。なにかに合わせてやっていくって、やっぱりどこかでひずみが生まれるとおもうんです。だからこそ辰緒さんも凄まじく長いDJライフを送ってこられたのではないでしょうか(笑)。
須永 “凄まじく”長いかね(笑)?
松浦 ええ、凄まじく(笑)。 最後に、辰緒さんの人生を変えた一曲、または最近のお気に入りの一曲を教えてください。そして辰緒さんにとって、音楽とはひと言で言うとなんですか?
須永 また難しいこと言うね(笑)。最近気に入ってるのは、TIM WARFIELD(ティム・ウォーフィールド)で「Lullaby for Nijee」。そして僕にとって音楽とは、世の中と自分をゆっくりつなげてくれる“ハブ(中継点)”です。
松浦 ではまた今週末、VISIONで会いましょう。ありがとうございました。
日本屈指のDJたちが一堂に会す、一夜限りのビッグパーティ!
須永辰緒のレギュラーパーティ“moderno”。彼のライフワークともいえるイディオムを禁じ手とし、広義のジャズアラウンド“ディープハウス”“テックハウス”“ラテンエレクトロ”などのダンスミュージックを軸に、そのコンセプトに共感するトップDJをゲストに招聘。さらには一流ポールダンサーによるステージ、並木橋や新宿2丁目を席巻するドラッグ・クイーンがホストをつとめるほか、首都圏No.1のバーレスクダンサーのショーなど、すべてが唯一無二の空間が作り出される。今回休止期間を経て、今までの集大成ともいえるパッケージで送る音楽とデカダンスの一大絵巻をプレゼン。多様なフロアを活かして今まで登場したトップDJたちが競演する。どのフロアにおいても世界レベルのパフォーマンスが展開される、2012年最大級のイベントが幕開けする。
Hysteric Glamour presents moderno -Keep Going Tokyo- at eleven
日程|6月16日(土)
オープン/スタート|23:00~
料金|3000円(前売り/e+にて発売中)、3500円(当日)、女性 2000円
会場|SOUND MUSEUM VISION
東京都 渋谷区 道玄坂2-10-7 新大宗ビルB1F
DJs|EITESU TAKAMIYA (Flower Records) / EVOLVE (BASSRAIN | Black Mix Juice | Fukuoka) / FORCE OF NATURE / HIROSHI NAKAMURA (i-dep) / DJ KAORI / KAY SUZUKI / KO KIMURA (FUTIC RECORDINGS TOKYO) / K-PRINCE (BBPNY) / MASANORI MORITA (STUDIO APERTMENT) / MAYURI/ DJ MARCY (Record shop Little Bird from fukushim) / MURO / DJ NORI (GALLERY | SMOKER | VOYAGE)/ SHACHO (SOIL & “PIMP” SESSIONS) / SHUYA OKINO (KYOTO JAZZ MASSIVE)/ SHINICHI OSAWA/ ☆Taku Takahashi(m-flo | Block FM) / DJ TASAKA / TOMOYUKI TANAKA (FPM) / TOSHIO MATSUURA / TOSHIYUKI GOTO / YOICHIRO ITO a.k.a. AKAKAGE / TATSUO SUNAGA / YOSHIJIRO SAKURAI / YUSUKE YOSHINAGA / Nao nomura / DJ Niche
DANCERS|POLE DANCE&BURLESQUE DANCE&DRUG QUEEN
YOU MUST BE 20 AND OVER WITH PHOTO ID TO ENTER
SOUND MUSEUM VISION
Tel. 03-5728-2824
www.vision-tokyo.com
松浦俊夫『TOKYO MOON』
毎週日曜日19:00~19:30 ON AIR
Inter FM 76.1MHz
『TOKYO MOON』へのメッセージはこちらまで
moon@interfm.jp
Inter FM 76.1MHz
www.interfm.co.jp