Diary-T 116 制限を超えて動きを求めようとするとき
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2015年5月8日

Diary-T 116 制限を超えて動きを求めようとするとき

Diary-T

Diary-T 116 制限を超えて動きを求めようとするとき

文・アートワーク=桑原茂一

たとえば、どうして手首は一定の角度以上に曲がらないのだろう。

それは手首がその制限を超えて動きを求めようとするとき、

身体の他の部分の動きを協調的に促すためである。

勅使河原三郎「鏡と音楽」より 生物学者 福岡伸一 動的な美 十選 ◇8 一部抜粋日経朝刊文化

ダンスの美についてのこのフレーズに私たちが生きる上での真理を発見した。

利他性というのは他者との関わりだけではなく、己自信の欲望の先を鏡に写すことでもある。と、

先日、活版レシピ「はじめての鋳造」に参加した。

「参加者の皆さんにはひとりずつ活字の鋳造を体験して頂くことが今回最大のミッションでした。何故なら普段活字ケースにしまわれている冷たい金属の活字は、出来立ての瞬間だけほんのり温かいからです。これは必ず全員にご自身の手で触れて頂きたかったのです。澤辺由記子」

澤辺さんの活字への深い思いに感銘を受けた。

糊の利いたワイシャツに拘りを感じる色と素材のエプロンをトラッドな着こなし
ピンと背筋を伸ばした姿勢からこぼれる笑顔や無駄のない言葉には神聖なオーラが宿っていた。

それは活字の神様の使者のようでもあり日本神道の巫女さんのようでもあった。

いってみればそこは印刷工場なのだから、油と湿気のくすんだ匂いが染み込んだ

上品な場所ではない。

しかし、その場を凛とした佇まいに感じさせるのはやはり彼女の活字への神聖な想いだろう。

「活字は生まれた時に温かく、拾う時に人の手によって温め直され、組版する時にまた人の手によって温め直され、印刷する時には版を直接触りながら温め直されます。そうしてようやく印刷物が生まれます。澤辺由記子」

まるで音楽のリズムのように一定のリズムを保つ鋳造機の動きに

機械のリズムに息を合わせ作動させる一瞬の緊張感に、私は神社にお参りするような厳粛さを感じた。

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