Diary-T 95 ないものがある。
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2015年5月8日

Diary-T 95 ないものがある。

Diary-T

Diary-T 95 ないものがある。

文・アートワーク=桑原茂一

その昔、大帝国劇場という名のテレビ番組があった。

なかでも「純白の家」という連続ドラマが秀逸だった。

膝を詰めて話す男と女の真ん中に巨大なポカリスエットの缶が置いてある。

この感じは、ソフトバンクの白い犬がしゃべるCMに引き継がれている。たぶん。

ないものがある。ひとは、これに、弱いのだ。

眉間の上の三つ目の瞳。背中のコブ。頭のてっぺんの角。女の口ひげ。体内から出る石。こ、これらは又別の話だ。

いきなり古くからの友人「J」が、iphoneを使い始めたといって

facebookへの承認メイルが届いた。

なんでも「J」の家の玄関前三十センチ前まで津波が押し寄せてきたとか。

そんなとんでもない経験をしてしまった人々や、

福島原発から三十キロ圏内の人々には、

あの意表をついた白い犬の非日常的面白さはもう受けないのではないか?

簡単に価値観は変わるものだが、

変わらない方が良いと持っている大衆が存在することも事実だ。が今回ばかりは、

シュールで知的で強くて分かりやすい成功する広告のロジックも

あの津波によってすっかり流されてしまったかも知れないよ。

音楽プロデューサーの「J」が、あっ!としてiphoneで撮影して送ってくれた

シュールなこの写真をこねくり回すうちに、

私の価値観はもうとっくに水に流されてしまっている。と自覚するに至ったのだ。

だからさっきから私のDiaryがのろのろ運転してしまうのは

この台風の所為なんじゃないの?と追記しておくことにする。

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