戸田恵子 連載|『今の私をカバンにつめて』大阪千秋楽、無事終了!
戸田恵子|大阪公演シャワーのような拍手に包まれて
『今の私をカバンにつめて』大阪千秋楽、無事終了!(1)
東京公演を終え、10月15日からスタートした大阪公演。残念ながら日程は少し短めでしたが、それでも短期間に2ステージを2回もこなし、初日の昼間は入念なサウンドチェックもありとなかなかハードスケジュールでしたが、とにかく総じてまずよく身体がもったということです(笑)。
文=戸田恵子
じつはかなりのセリフ劇
歌って踊って喋って。セリフも通常のミュージカルよりはるかに分量が多く、ちょっとしたセリフ劇でもある……いや、じつはかなりのセリフ劇なのだ。厳密に言うと、歌うときとセリフを喋るときの声帯の使い方はちがうように思う。かといって使い分けてるのか!? と問われればまったく意識はなく、自分の身体が自然に対応してくれるのだと思います。これがうまくいかないと喉をつぶしかねない。声帯のありとあらゆる部分を駆使して今回は乗り越えた感じです。
もともと喉が強いと言われてきた私ではありますが、過信は禁物。以前はあまりしなかった本番前の発声練習やストレッチも、数年前からは必ずやるよう心がけています。
大好きな大阪公演。劇場が変わるとその会場に慣れるまでに時間がかかるのはつねですが、今回はキャパシティというよりも、私たちから見た客席の景色──とくに客席うしろの壁の色のちがい(黒→白)がとても影響力がありました。いつも明るいっ(苦笑)。
大阪初日はいままでの初日に比べて本当に不安な幕開けでした。カーテンコールでは大きな拍手をいただいたものの、芝居中は本当に静か。“アレ!? ここ大阪? もしかしてお気に召さない!? やッちゃったかな!?”なんて想いがよぎりました。曲ごとの拍手の有無ではなく、感じ方の問題ですかね……。関係者の皆さんがおっしゃるには、「年齢層が高い方たちでした」とか、「ミュージカルをあまりご覧にならない方たちだったのかも」とか……。たとえそうであったとしても、なにか自分のなかで納得のいかないモヤモヤが残りました。静かななかにも、お互いなにかを感じ合える舞台でないと!
私たちはお客さんに熱をおくり、そしてお客さんからも熱をいただく。総合芸術=相互芸術。芝居中に、「呆気にとられてひとつになれるじゃない」というヘザーの笑える台詞がありますが、本当にそれでもいい。ひとつになれればと思う。
私たちの熱がとどかなかったのか……反省しっぱなし。残念ながら大阪初日は淋しい気持ちでいっぱい。ベリーナーバス! しかしそんな夜にも演出家G2さんは力強いお言葉をくださいました、「大丈夫です!」と。
戸田恵子|大阪公演シャワーのような拍手に包まれて
『今の私をカバンにつめて』大阪千秋楽、無事終了!(2)
私まだ『アニー』が演れるんじゃないかと本気で思っています(笑)
ところがそんな不安な気持ちは2日目からはまったくどこかにフッ飛んでゆきました。“やっぱりここ大阪やんか~!”……まったく単純ですね(笑)。
いつもどおりのラテンノリの反応。おかげで過酷なスケジュールも乗り越えられました。大千秋楽は客席全体でスタンディングオベーション。まるで拍手のシャワーを浴びているようでした。本当にうれしくて、思わずウルッとしましたね(泣)。大阪の皆さん、ありがとうございました。唯一心残りは期間が短くて行きつけのお店に繰り出せなかったこと。ぜひまた今度!
クラブシンガー ヘザーの役どころは、シンガーとしても女としてもそしてひとりの人間として大きな分岐点に立っている役柄でした。そのなかの要因のひとつに、“年齢”というものをハッキリと謳っている作品でもありました。
一般的に戯曲のなかの役柄で、誰が何歳だとかは滅多に語らないものなんです。今回私が演じたヘザーは、実際には私の実年齢よりはるかに若い設定ですが(ほかのキャストは何歳なのかわからない(笑))、精神年齢や技量を考えると、自分よりもはるかに若い役を演じるぐらいでちょうどいいのだと、ニューヨークブロードウェイの役者さんの談を聞いたことがあります。
私自身もそう思っていますし、多くの役者がきっとそう思ってますね。まあ、見た目は自分で見るわけではないので……ダメならまわりのスタッフが止めてくれると思います(笑)。そう思うと、昨年の『Sunday in the Park With George』でのドット役のほうがはるかに若かったんですけどね。