VIKTOR & ROLF|デザイナーデュオ ヴィクター&ロルフにインタビュー
VIKTOR & ROLF|ヴィクター&ロルフ
4年ぶりに来日したヴィクター・ホスティンとロルフ・スノラン
デザイナーふたりが語る「現在」(1)
オランダのアムステルダムを拠点とするファションブランド ヴィクター&ロルフ。デザイナー のふたりヴィクター・ホスティンとロルフ・スノランが4年ぶり来日し、自分のクリエションとファッションについて、“いま”の心境を明かしてくれた。
Text by Winsome Li (OPENERS)Photographs by JAMANDFIX
平穏、静けさを追求、“いま”を楽しめる
オランダのアーネム芸術アカデミーで知り合い意気投合したふたりは、卒業とともにキャリアをスタート。1992年にパリへ移り、翌年に初のオートクチュールコレクションを発表した。最初のコレクションは、フランス・エレスで開催された若手デザイナーコンテストで3賞を受賞した。ファッションブランド「ヴィクター&ロルフ」はそれを機に誕生し、ウィメンズとメンズのレディ・トゥ・ウェア(RTW)もはじめた。ブランドを発足してから21年、「ヴィクター&ロルフ」はどのように変化してきたのか。
「ブランドは一回りした。オートクチュールでスタートして、メンズとウィメンズのRTWも続き発表し、昨年はまたオートクチュールのコレクションに復帰した。そして、いくつかの香水もローンチした」
2000年にオートクチュールコレクションはいったん休止となり、昨年の7月に2013-14年の秋冬クチュールコレクションに復帰。2013年はブランド創設20年を迎える年でもあり、13年ぶりに発表する記念すぺきオートクチュールは日本の“禅ガーデン”をモチーフにした。その理由はふたりの心境に繋がるという。
「禅ガーデンをモチーフにしたのは、その美しさよりも、禅ガーデンは“serenity(平穏、静けさ)”のシンボルであることだ。禅ガーデンより安らぎをあたえられる場所はないと思います。このカムバックコレクションを通じて、“serenity”というメッセージを伝えたかった。僕たちは20年も働き続けていて、“ワーカホリック”になった。そろそろ落ち着いて“いま”を楽しむべきだと思って、いつも次のゴールに追いかけるよりも、現在のライフを満足したいです」
ファッションデザイナーになる前にコンテンポラリーアートも携わったデザイナーのふたりは、現在でもファッション以外の活躍もしている。その中、一番注目されているのは彼らの過去のコレクションルックをモチーフにした人形のインストレーションである。2008年には、人形の「The House of Viktor & Rolf(ハウス オフ ヴィクター&ロルフ)」展をロンドンのバービカン・センターで開催した。デザイナーのふたりは人形シーリズについてわくわくしながら話してくれた。
「ブランドの15周年に、バービカン・センターから個展のオファーをいただき、それをきっかけに人形作りをはじめました。過去のコレクションから代表的なルックをセレクトして、高さ70センチの人形に縮小するのです。いまは全部で80個ぐらい作りましたが、どんどん増やしていきたいですね。人間の洋服より、人形の洋服を作るほうがハードルが高いです。洋服はすべてダウンサイズするため、刺繍やプリントなど全部手作業で作らなければならない、とても繊細なプロセスです」
“禅ガーデン”をモチーフにしたオートクチュールも、人形で再現し、オランダ・ロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館で、現在開催中の「The Future of Fashion is Now」展に展示されている。彼らにとって、いちばん大切なコレクションでもあるこのオートクチュールを見ることができる貴重な機会だ。
また、ヴィクター&ロルフの世界観を奇妙なおとぎ話とイラストで表現する絵本「Fairy Tales」も過去に出版されている。ふたりはファッションにとどまらず、さまざまな形でクリエテイビティーを見せてくれる“ストーリー テラー”ともいえる。
「ランウェイ上だけではなく、僕たちはいろいろな形で自分を表現するのが好き。自由で、可能性を感じることがとても大事なのです。僕たちは“ストーリー テラー”あり、絵本の『Fairy Tales』もそうです、そして、フレグランス作りもストーリーを伝えるひとつの手段だと思っています」
VIKTOR & ROLF|ヴィクター&ロルフ
4年ぶりに来日したヴィクター・ホスティンとロルフ・スノラン
デザイナーふたりが語る「現在」(2)
Text by Winsome Li (OPENERS)Photographs by JAMANDFIX
ふたりの強い友情はインスピレーションの源
長年の友達、仕事のパートナーとして、ブランドを進化させつづけ成功させたふたりは、ほとんど喧嘩することがなく、つねにアイデアを交わしながら服作りをしている。毎シーズン固定されたスタイルにとどまらず、必ずサプライズをあたえる“ビッグ”なテーマで展開するのがヴィクター&ロルフの魅力のひとつだ。デザインのインスピレーションとモチベーションについて、ふたりの間にしか生み出せないケミストリーをうかがった。
「ブランドをはじめるときから、すべてが自然にはじまった。僕たちはいい友達でもあり、いつも一緒に話し合って、そこからアイデアが湧いてくる。僕たちの友情はインスピレーションの源かもしれない。だから、コレクションのテーマは僕たちのその当時の心境を表しています。
“美しいものを作ること”はひとつのモチベーションですね。モノ作りに限らず、美しいアイデアを作り出す。僕たちのクリエションは“コンセプチュアル グラマー”だと思います。極端なアイデアをもとに創造して、その結果ひとつのコンセプトが生まれるというプロセスが好きです。僕たちにとって、ロジカルな概念をもつことが美しいと言える。それと同時に、グラマラスな要素も必要となる。素晴らしいアイデアだけでは足りない、ビジュアル的な魅力ももたさないといけない」
ブランドの将来について、思い悩むことなく、目の前の創造に集中するのはいまのヴィクター&ロルフ。仕事でも、人生においても“バランス”を取ることがとても大事と語ったふたりの“いま”に注目してほしい。
ヴィクター&ロルフ/スタッフ インターナショナル
Tel.03-5794-9931