OKUJUN|2000年の古都「紬のさと」を訪ねる
OKUJUN|奥順
女優故高峰秀子さんが結城紬に惚れ込んだ訳
2000年の古都「紬のさと」を訪ねる
室町時代に始まる結城紬。「着物は日本のクチュール。その技術とセンスを世界に広めたい」と結城の老舗、奥順が挑戦します。パリに進出、ラグジュアリーブランドへの生地提供、そして初の直営店…。茨城・結城を訪ねて、その思いに触れました。
Text by Hagiwara Terumi
重要無形文化財をリアルに変える「澤屋」
結城紬(ゆうきつむぎ)の老舗、奥順が直営のセレクトショップ「澤屋」をオープンしました。結城紬は、2000年の歴史を持つ、日本最古の絹織物です。明治40年創業した結城紬製造卸問屋の奥順は、広い敷地に登録有形文化財の5つの建造物を所有、そこで「つむぎの館」を一般公開しています。東京駅から新幹線で45分、今では東京への通勤距離圏です。のどかな田畑の道を車で走りついた「つむぎの館」は繭で始まり、繭で終わる絹の世界でした。
結城紬はもともと男の織物でした。撚りをかけない無撚糸を糊付けして織るためごわっとした仕上がりですが、糊を落として着れば着るほどに洗えば洗うほどに人に馴染んでゆく織物です。華やかさはなく普段着使いに見えますが、その丁寧な工程と精緻な職人の技が、評価されて国の「重要無形文化財」「伝統的工芸品」に指定されています。
女優の故高峰秀子さんは、結城紬愛好者としても知られていました。65才の時黒の着物を2枚注文。1枚は家紋を入れて喪服に、1枚は花紋(しゃれ紋)を入れてパーティー着にしたそうです。「結城紬のシャリ感は立っているときに姿勢がよくみえるの。立つ時間の長い葬儀やパーティーには姿勢をカバーしてくれる紬の着物は最適」ということでした。着物業界では考えられなかった個性的な着こなし。そんなエピソードを話してくれたのは4代目社長の奥澤武治さん。そして「形式やしきたりにこだわらず、高峰さんのように着物を楽しんでくれる人たちのためにオープンしたのが澤屋です」と奥澤社長。
澤屋は着物以外の小物も取り揃えて着物初心者にも親しみやすいお店です。ちょっと足を伸ばして、繭の世界に浸ってみませんか。大量生産、大量消費に背を向けて、衣服を着継いでゆく幸福感が味わえるはずです。
結城 澤屋
営業時間|平日12:00~17:00、土、日、祝10:00~17:00
定休日|火曜日
茨城県結城市結城12-2
Tel. 0296-33-7047
www.yukisawaya.com
つむぎの館
営業時間|9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日|火曜日
Tel.0296-33-5633
茨城県結城市大学結城12-2