萩原輝美 連載 vol.161|時代を超えた服作りに挑むデザイナー
着る人にショックを与える服が作りたい――noir kei ninomiya/二宮啓
時代を超える服――ユーギ・ペルスーン
2017年春夏、私が選ぶこの1点
パーツでフォルムを作る服。そんなクチュールテイストのコレクションを発表しているnoir kei ninomiyaの二宮啓さん。毎シーズン、私のワードローブに選んでいます。90年代にもそんな服と出会いました。ユーギ・ペルスーンです。デザイン活動を休止していた彼が、10月久しぶりにパリに戻ってきました。時代を超えた服作りに挑むデザイナーふたりです。
Text by Terumi Hagiwara
秘密を探りたくなる服「noir kei ninomiya」
毎シーズン、世界中で100以上のコレクションを見て展示会を回っています。その中で印象に残り、自分のワードローブに取り入れているのが「noir kei ninomiya」です。コム デ ギャルソンから2012年にスタートしたブランドで、パリコレクション期間中にアトリエでショー発表をしています。
ブランドの名前通り作品は全てnoir(黒)です。そこにパール、スタッズ、糸などの付属が、服のフォルムを作り込んでいきます。そのひとつ、ひとつが手技で施されていて間近で見ると新たな発見がある服。裏返してみたい、秘密を探りたくなる服です。「テクニックをフォーカスするために色を排除したブランドになりました」とデザイナーの二宮啓さん。実際にnoirのアトリエではミシンで縫う以外の手法が多く、金づちで叩く音などトンカンと賑やかだとか。繊細なディテールが作り出す存在感のある服です。今、そんなクチュールテイストに惹かれます。
17年春夏コレクションはシフォンを割き、モチーフでつなぐしなやかでボリュームのあるドレスからスタートしました。肩から袖の丸みにスタッズが沿うコート、半円パールが骨格のようにボディを描くドレスなど、パーツがフォルムを浮かび上がらせます。今シーズン、私がワードローブに選んだのは肩にボリュームをもたせたフレンチスリーブのスタッズドレス。シンプルに着たい1点です。
ユーギ・ペルスーンはアントワープ出身、90年代に活躍したデザイナーです。そのカッティングの技と運針が走る手技で作るフォルム服に当時夢中でした。そのユーギが10月パリコレクション期間中、『ダスト』(カルチャー誌)とのコラボレーションでTシャツを発表、久しぶりにパリに戻ってきました。ユーギの服は今でも大切にクローゼットに収めてあります。どうしても手放せないものばかりです。2017年、今年もそんな服にたくさん出会いたいです。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/