萩原輝美 連載 vol.157｜ディオールとヴァレンティノ、デザイナー交替によるコレクション
マリア・グラツィア・キウリが見せる新しい女性像――クールでフェミニンな新生ディオール
ヴァレンティノのクラシックを柔軟に広げたリアルエレガンス――ピエールパオロ・ピッチョーリ
2017年春夏パリコレクション
今シーズンもデザイナー交替によるコレクションが話題を呼んでいます。初めての女性アーティスティック・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリによるディオールはぐっとモダンになりました。ピエールパオロ・ピッチョーリのヴァレンティノは、今までより自由な発想でポップなコレクションを発表しました。
Text by Terumi Hagiwara
マリア・グラツィア・キウリが見せる新しい女性像
――クールでフェミニンな新生ディオール
2017年春夏パリコレクションです。今シーズンはデザイナー交替のメゾンが相次ぎました。とは言え、最近ラグジュアリーブランドでは毎シーズン行われています。
話題はディオールです。ヴァレンティノの二人組デザイナーだったマリア・グラツィア・キウリが初めて女性でアーティスティック・ディレクターに抜擢され、ぐっとコンセプチュアルに今の女性像を描いたコレクションを発表しました。フェンシングのコスチュームジャケットをイメージしたトップスには７分丈パンツを合わせます。軽快で力強い。真っ赤なハートの刺しゅうは心臓の鼓動を表しているとか。女性の息使い、躍動感を感じさせます。アイコンのバージャケットには大きなアウトポケットが付けられ、チュールのロングスカートを合わせます。レースアップのペタンコブーツ、太いストラップで斜めがけしたレディ ディオールのバッグを合わせて完成です。
La Lune(月)、L’etoire(星)という文字とモチーフを刺しゅうしたニットは、今すぐ着たいリアルアイテムです。フィナーレの十二星座を刺しゅうしたロングドレスは完璧な手仕事の技で素朴さを表現しています。新生ディオールから目が離せません。
ヴァレンティノのクラシックを柔軟に広げたリアルエレガンス
――ピエールパオロ・ピッチョーリ
ヴァレンティノは、今シーズンからピエールパオロ・ピッチョーリがひとりで引き続きアーティスティック・ディレクターを務めることになりました。コレクション会場に選んだのは自然光の入る邸宅です。今まで以上に、色、ディテール、デザインに幅を持たせ自由に表現されたコレクションです。ウエストから広がるプリーツは色のコントラストで遊び、ボディが動くたびに風と光によって表情を変えます。優しい素材はある時は量感を、ある時は静けさを表現します。大人のローズピンクが素敵。スーツやドレスが多かったヴァレンティノですが、今までにないシャツとパンツのコーディネイトなどリアルなスタイリングも登場しています。
萩原輝美｜HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/