ドアを開ければ、ちょっぴり不機嫌顔のクロエが迎えるアイロニカルな世界へ

1996年春夏広告キャンペーンモデルを務めたクロエ・セヴィニーが、この秋冬、ふたたびミュウミュウの顔を務めることとなった。一見すると無邪気そうな、でも不可思議な雰囲気をもつクロエの存在感は、観る者の好奇心を掻き立て、曖昧ながらそれとわかるサイケデリックな快楽をほのめかす。この魅惑と刺激に満ちたポートレイトギャラリーを手がけたのは、ファッションフォトグラファーとしていまもっとも注目を集めるマート・アラス＆マーカス・ピゴーのふたり。一連のポートレイトを通じてアイロニーを表現したのだという。

厚みのある絨毯にモダニズムを感じさせる椅子、1970年代をイメージさせる部屋のなか、スーツのシャープで男性的なラインと、印象的な幾何学模様が生む万華鏡のような視覚的コラージュはダンディな幻想世界を作り出し、ついにはジェンダーを超えていく。そこでは登場人物の個性が強調され、観る者と意味ありげな視線を交わし、親密さをわかち合う。

クロエ・セヴィニー、マート・アラス＆マーカス・ピゴー、そしてミュウミュウの三者による共演、その舞台裏をとらえたショートビデオも公開された。ニューヨーク出身の男女2人組によるデュオ、ファントグラムの音楽にのせ、クロエがつぎつぎに衣装を変え、表情を変え、部屋中を自在に動きまわる。ミュウミュウの秋冬コレクションがずらりと並んだクローゼット、足もとに転がるシューズの数々……暑さにかまけてファッションをさぼっていたひとも、これを観ればたちまちおしゃれがしたくてたまらなくなるはず。ファッション暦でいうなれば、季節はすでに秋。気分を秋冬モードにスイッチしたら、あたらしい季節へのドアをノックしよう。

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