萩原輝美 連載 vol.147|「SEE NOW, BUY NOW」
デザイナービジネスの仕組み変えるか?
「SEE NOW, BUY NOW」
ニューボリュームとロングがトレンドとして登場した2016年秋冬コレクション。エルメスは新しい量感を盛ったフェミニンなコレクションを発表しました。
Text by Terumi Hagiwara
細ベルトで絞るエルメスのロングドレス
足元はマウンテンブーツで
2016年秋冬コレクションが行われた3月、「SEE NOW, BUY NOW」という言葉がファッション界に衝撃を与えました。「今、コレクションで見たルックを今、買う」という意味です。これまでは、「春に発表した秋冬コレクションは6か月後の秋に買う」という「SEE NOW, BUY LATER」です。ビジネスの仕組みが変わり、コレクションと店頭の商品が同時進行するブランドが登場することになります。
それに対して、多くのラグジュアリーブランドは「物理的に商品の生産が難しい。半年間じっくり待つことで商品を手にする喜びがあるはず」(KeringグループC.E.O)と言っています。たくさんのコレクションを見た後に、ゆっくり欲しい商品を選びたい。そんな気持ちも大切にしたいのですが…。
半年先の情報を売り物にしてきたメディアや先行するデザイナーブランドトレンドを後追いしてきたメーカーにとっては大問題です。
さて、この秋は新しいボリューム感と長さが新鮮です。その中で注目アイテムはロングコートとロングドレスです。ゆったりとした肩のボリュームとしなやかに落ちるロング丈。
エルメスは優しいトップグレイやピンクベージュなど定番的な色のコートにフレアースカートやドレスを合わせます。ダブルフェイスにウールカシミア、ニット素材が量感に軽さを添えます。お気に入りはグレイのウールカシミアのワンピースです。ゆったりとした長めのフレアースリーブに優しく揺れるフレアースカート。着こなしのポイントは細ベルトでのウエストマークです。コレクションではグレイのカーフブーツで品良くまとめていますが、今年っぽいマウンテンブーツなどを合わせてみたい。これにダブルフェイスのコートを合わせて…。となると、やっぱり「SEE NOW,BUY LATER」の時間が欲しい!メゾン・ミッシェルで予約したレースを重ねたフエルトの帽子を合わせて完成させます。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/