OPENERS宣言|住みやすい日本に変えよう!
FASHION / WOMEN
2015年4月9日

OPENERS宣言|住みやすい日本に変えよう!

ポスト3.11だからこそ見えてきた、エコでサステイナブルな社会って?

いまこそ、住みやすい日本に変えよう!

Text by NAKAMURA AkikoIllustration by MORII KENGOPhoto by Andrea Carter-Bowman / People Tree

これまでにも「サステイナブルな生活」の実現に向けて歩みはじめていた

エコ、オーガニック、ロハス、エシカル……今まで、私たちは身近な生活のなかで、これらのワードを捉えることが多かったように思います。朝起きてオーガニックな原料を使ったコスメでメイクをし、少しでも歩いたり自転車に乗ったりして通勤通学し、できるだけ身体や地球に優しい無農薬のナチュラルフードを選ぶ。ショッピングをするときは、それがチャリティにつながるものであることや、児童や女性の不当労働をしていないものかどうかを確かめ、しっかりとした基準で選びとる。空輸を減らして船便を積極的に使うなど、CO2削減のための努力をしているブランドにより注目をする。トレンドを追いかけるのではなく、気に入って長く使える良いものを選ぶ。この何年かで、賢い選択のできるひとは、確実に数を増やしつつあったのではないでしょうか。

「本当の豊かさってなんだろう?」とみなが考えることによって、サステイナブルな生活・社会の在り方を、まさに当たり前のこととして実践していく、そんな過渡期にあったように思います。

今こそもっと大きな社会の仕組み自体に注目し、変革を起こしていくチャンス!

3月に起こった東日本大震災は、日本に深い傷跡を残すと同時に、私たちが目指すべきあたらしい社会がどんなものなのか、考えるきっかけにもなりました。

まず、「消費の基準」がさらに変化したのはみなさんが実感しているとおり。以前からの課題である「サステイナブルなライフスタイルを実現するため」ということにくわえて、「どう経済を回しながら被災地復興を支援していくのか」について、深く考えるようになりました。衣食住、生活にかかわるものにおいて、被災地へのチャリティにつながるものを選ぼう──そんな機運が広がったのです。リサイクルする、シェアするという感覚もさらに拡がったのではないでしょうか。

私たちが“安全でいられる”ためには?

3.11から3ヵ月以上が経った今も、福島の原子力発電所からは放射線が撒きちらされていて、私たちは為す術もなく、半ば諦めにも似た境地でそれを見守ることしかできない日々がつづいています。起こってしまったものは取り返しがつきません。けれどもこれを繰り返さないための未来を築くことは可能です。今までCO2を排出しないがゆえに“クリーンである”と言われてきた原子力発電所の是非を改めて問うとともに、社会の根底から大きくシフトしていく、そんな大きな転機であると感じています。

今回OPENERSで大きく取り組もうとしているのが、この“エネルギー”を中心としたあたらしい社会の在り方です。そこで描かれる未来予想図とは──今までは電力会社から買う一方だった電力が、自分でも生み出すことができるようになり、よりインタラクティブなやり取りが可能になります。ソーラーパネルを使った太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーによる電力を各家庭やコミュニティで生み出す。そこではEV(電気自動車)が蓄電池の役割を果たして、必要なときに必要な電気を取り出すことができる。自宅の電気が余ったときには売電することもできる。そのうち「電気の貸し借りをする」といったご近所づきあいも、十分ありうるお話なのです。このエネルギー供給の仕組みの根底には、“シェアする”という感覚が深く根付いているようです。

インタラクティブなやり取りから広がる「シェア」の波

これまで受け取るだけだったエネルギーが、双方向にやり取りできるものになる。これは今までインターネットが普及することによって起こった現象とよく似ていると言われます。たとえば一消費者に過ぎなかったひとが、ネットオークション上ではバイヤーになる。今まで情報の受け取り手だったひとが、ブログやTwitter、FacebookやYouTubeを使って自分自身がメディアとして情報発信する。小さなコミュニティが無数にできて、そのなかで情報をシェアしていく。ここ何年かで情報社会に起こったことが、そのままエネルギーの社会において、起ころうとしているのです。

ひとと地域にやさしい町=「スマートシティ」

この仕組みを実現した街はしばしば「スマートシティ」と呼ばれます。ではこの「スマートシティ」で電力を相互にやり取りできるようになることがなぜ良いのか? それはつまりスマートシティが「オフセットが少なくてすむ社会の仕組み」だからだと思うのです。不要な電力は自然にカットされ、余剰分は必要なところに譲ることができる。もともとCO2排出量を最小限に抑える仕組みだから、あえてエコを意識しなくても、自然にエコな行動をとることができる。これまでにも育んできた、地球にやさしい行動をとりつづけることがより容易になる。そしてひとや地域とのつながりも深まる──そんなライフスタイルを実現することが可能なのです。

私たちが願うことは、とてもシンプルです。たとえば、朝露に濡れて光る草花や、深い緑から差す木漏れ日、空一面を赤く染める夕焼け。きれいなものを見て「きれいだ」と思うような、そんな当たり前の幸せを大好きなひとたちと一緒に感じることができるのであれば──つまり「安全な環境のなかで、地球の美しさとともにある生活を送ること」、ただそれに尽きると思うのです。私たち人間が遥か昔から感じとってきた幸せな光景。今の生活を維持しながら、より理想とする生活に近づけるのであれば、それってとてもすてきなことだと思いませんか。

最後に、偉大なる文豪、トルストイが残したことばをここで。

「私たちは踏みなれた生活の軌道から放り出されると、もうダメだ、と思います。
しかし、実際はそこに、ようやくあたらしい良いものがはじまるのです。
生命のあるあいだは幸福があります」
byトルストイ

※トップ画像の写真は、フェアトレード・ファッションを牽引するブランド「ピープル・ツリー」とイギリスの女優エマ・ワトソンとのコラボレーションによるコレクション“SoFT”より。エマ自身が、アイテムのカラーやファブリック、シルエット、ほどこす手仕事などコレクションのすべての企画段階からかかわって作りあげられたもの。
           
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