FASHION /
NEWS
2021年9月29日
エレガントな視覚の旅へ。著名な写真家たちがファインダー越しにみた景色を旅する、 LOUIS VUITTONの写真集｜LOUIS VUITTON
LOUIS VUITTON｜ルイ･ヴィトン
写真家の目を通した上質な旅がある。ガイドブックとはまったく違った視点、文字通り写真家の視点が導く街を体験することをしてみたい。コロナ禍で旅がままならないということもあるだろうし、なかなか足を向けることができない街もある。そんな視覚体験（ある意味バーチャルな）をする「ファッション・アイ」。エレガントな旅への誘いが一冊に！ファッショナブルでスリリングな旅のスタイル。
Text & Phote by KITAHARA Toru
以前、どこで見たのかは忘れてしまったのだけれど、旅行用のクロゼットがあって、こんな巨大なものまで作ってしまうのか、と驚いたことを覚えている。家のまま旅をするというイメージといっても過言ではないものだった、と。そのクロゼットはLOUIS VUITTONのモノグラムが巻かれ、重厚感のあるものだった。
LOUIS VUITTONの旅へのアプローチは想像以上なのかもしれない。旅を多角的に捉えようとするアプローチがあるのだ。
そんな奥深さをあるとき見つけてしまった。それがこの「ファッション・アイ」という写真集。そもそも、筆者はLOUIS VUITTONが本を編集していることを知らなかった。まずはそこにびっくりした。「ルイ･ヴィトン シティ･ガイド」と「トラベルブック」に続くこの第3のシリーズらしいのだが、まさに写真家の「Eye（アイ）」に焦点を当てた写真集のシリーズ。ラインナップの中に筆者が影響を受けた写真家が何人もいて、これは買うしかないと思った次第。
最初にパラパラとめくったセシル･ビートン(1904-1980年)の「ヴェニス」を買った。この一冊はどうしても欲しいと思う理由があった。一枚一枚の写真は普段は見られない（もしくは時代的にすでに見ることができない）景色が繰り広げられているのだが、それ以上に目を引いたのが中身のデザインである。
まるでセシル・ビートンが自分のアルバムにプリントを貼り付けていった（プリミティブな夏休みの宿題のような）デザインがページをめくるたびに現れるのだ。説明を読むとセシル・ビートンは日記を好んでいたようで、その感じがページから飛び出してくるようなのだ。単純に思うに、デザインもセシル・ビートンなのではないかと思うほど。手作り感がそのまま写真集になった気がするのだ。
この一冊を皮切りに好きな写真家をさらに3冊購入した。
サラ・ムーンは独特なトーンで「オリエントエクスプレス」を撮影。インスタンブールからパリへのオリエントエクスプレスの旅を撮り下ろしたものだ。彼女のミューズでもあるスザンヌが車窓を眺めるシーンに旅を擬似体験できる気がした。サラ・ムーンらしい景色の切り取り方にも注目したい。写真家と視界が同化できる気がして、楽しくなった。ちなみにサラ・ムーンは筆者の目標とする写真家のひとり。
もうひとり、目標にする写真家の一冊があったので、そちらも購入した。それがピーター・リンドバーグの「ベルリン」。ネットで見てもあまり資料がないのだが、説明がなくても楽しめる一冊。なんといっても風景なのにピーター・リンドバーグはピーター・リンドバーグを十二分に感じさせてくれるし、旅の写真というと単純に風景メインになりがちだが、やはりモデルを美しく撮ることが本領発揮とばかりにモデルカットも多い。なんでも得意技で勝負しないとダメなんだな、と心の師との会話ができた気さえするのだ。
そして、ソール・ライターの「ニューヨーク」。これはもう、ソール・ライターならではの世界としか言いようがない（他の方もそうなんだけれど）。ソール・ライターの作品を見ればそれがわかるというものだ。赤い傘ももちろん入っている。この一冊は最初のセシル・ビートンの「ヴェニス」とはまた違ったアプローチがあった。それは1988年にCOMME des GARÇONSが出していたフリーペーパー「Six」のページが再現されているのだ。ページをめくるとわかるのだが、それまでのページと違い、「Six」の表紙から始まる一連の流れは、なんと紙質を変えているのだ。「Six」の質感とは違うのだけれど、ここだけは違う雰囲気で一冊をまとめたい、という編集者？ デザイナー？ の心意気が嬉しい限り。
表紙も布地に写真を貼ったような（筆者の好きな）装丁に仕上がっていて、インテリアとしてもおしゃれに飾れるシリーズだ。
すでに在庫なしもあるようなので、古本屋市場が賑わいそうな予感。お早めにどうぞ。