トレードマークはジャガイモの花のブトニエール

ブランド名「パルマンティエ」は、飢饉におそわれたフランスを、ジャガイモの開発と普及で救済した農学者、アントワーヌ＝オーギュスタン・パルマンティエ博士に由来する。

リヒトがパリコレクションにモデルとしてデビューしたのは1996年。そのとき投宿したホテルの最寄りの駅名が「パルマンティエ」だった。メトロ3号線にあるこの駅のプラットフォームには、貧民にジャガイモを施すパルマンティエ博士の石像が展示されている――こんな話からプロジェクトはスタートした。

17世紀末、フランス国においてジャガイモは貴族階級にとっては美食の対象だった。が、一般大衆にとっては、味が物足りないという理由から、食物としてまったく普及していなかった。調味料や肉類をまったく手に入れることができなかったばかりか、パンをも買うことができないひとびとにとって、味の淡いジャガイモはそのまま食べるしかない。当時、飢饉におそわれていた状況においても、ひとびとはそれを口にすることはなかった。

そんななかパルマンティエ博士は、フランス国王ルイ16世の援助でジャガイモ畑を開墾。収穫時期に「このジャガイモは美味で栄養に富む。王候貴族が食べるものである。これを盗んで食べた者は厳罰に処す」と看板を立てた。その看板を見て、これまで好んでジャガイモを食べることのなかった付近に住む農民たちが、好奇心にかられ盗み食いをする。こんなユニークな方法で、ジャガイモの大衆への普及に貢献し、フランスの飢饉を救ったのだった。

祖国を救済した功績により、パルマンティエ博士はフランス国王ルイ16世に謁見。そのさい、ジャガイモの花でつくったブトニエールを国王に献上したという逸話がある。この洒脱なパリ市民に敬意を表し、ブランドの名前として採用。そしてこの秋、「エディフィス」からデビューすることが決定した。

パルマンティエのリリースは、創業20周年を迎えたフレンチシックの老舗セレクトショップ、エディフィスが、同社のウェブマガジン「エリメンツ（http://edifice.baycrews.co.jp/element/）」のディレクターをつとめる大住憲生とおこなう特別プロジェクトという側面ももつ。スタイルはクラシック・モダン。キイワードは洒脱にくわえ、知性、成熟、抑制。そして、銀色に輝くジャガイモの花のブトニエールがトレードマークである。

『ÉDIFICE web magazine Élément』
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