コレクションのイメージを増幅させるロケーション

2013年の北京、2014年の上海につづき3回目となる「ディオール オム」の中国でのランウェイショーは、広州市内のオペラハウスでおこなわれた。この建物は “建築界のノーベル賞” といわれるプリツカー賞の受賞歴をもつイギリス人建築家、ザハ・ハディッドによるもの。このオペラハウスの中でファッションショーがおこなわれるのは、はじめてだという。

クリエイティブ ディレクターのクリス・ヴァン・アッシュ自身が重きを置いているファッションとアートとのつながりを強く感じさせる、今回のショー。“オープニングナイト＆デイドリーミング” をテーマにしたパリでのランウェイを再現するのに、このロケーションは最適だった。まるで建物がショー全体を包み込むようなムードで、革新的かつユニークなシナリオを描き出す。この建物はディオール オムのもつ伝統とモダニティと、中国のもつコンテンポラリーな世界との、橋渡しとなったのだ。

© MATHIEU RIDELLE

インターナショナルモデルと中国人モデルをミックスしたランウェイでは、テクノミュージックなどの現代音楽と古典音楽を織り交ぜる独特のスタンスが注目される指揮者のトーマス・ルーセルによるタクトのもと、40人の広州シンフォニックオーケストラメンバーによる生演奏でミュージシャン「KOUDLAM（クドラム）」の楽曲を披露した。ハイライトでは、クドラム本人がサプライズでショーにあらわれ楽曲を歌い上げ、会場に集まったおよそ600人のゲストを湧かせた。

ショーを終えて、クリス・ヴァン・アッシュは今回の経験にたいして、以下のコメントを残した。

クリエイティブ ディレクターのクリス・ヴァン・アッシュ

「中国でふたたびショーをおこなうことができて光栄です。今回のコレクションではテクノとサルトリアルの共演が生むエレガンスを伝えていますが、広州を舞台におこなうことで、またあらたな視点で捉えてもらえたと思います。それは、モダニティとヘリテージを追求する私のクリエイションをさらなる高みへ導くとともに、多くのひとにどのようにブランドの個性をアピールするかを考えさせてくれました。中国がもつコンテンポラリーな魅力はどんどん増していることを、今回の経験で確信しました」

ショーの終演後も、オペラハウスのインテリアをダイナミックに活用したクロージングパーティにより、盛況のなか幕を閉じた。会場にはホストとしてクリスチャン ディオール・チャイナのプレジデントが来場し、国内外から訪れたセレブリティたちと歓談していた。世界が注目するマーケットの中国で、ビッグメゾンが大々的におこなう取り組み。ファッションシーンにおけるクリエイションの規模を、大きく拡張させるその動きから、目を離せない。

クリスチャン ディオール
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