パッチー ケーク イーターが、雑誌『ロフィシャル』ディレクターと共演|Patchy Cake Eater
FASHION / MEN
2015年4月10日

パッチー ケーク イーターが、雑誌『ロフィシャル』ディレクターと共演|Patchy Cake Eater

Patchy Cake Eater|パッチー ケークイーター

海外のファッションエディターを射止めた日本のブランド

ジャンルカ・カンターロ meets パッチー ケークイーター(1)

昨年のピッティ・ウオモにて「Patchy Cake Eater(パッチー ケークイーター)」に一目ぼれした、雑誌『ロフィシャル』ディレクターのジャンルカ・カンターロ氏。その後、同ブランド・デザイナーの森野重紀氏との親交がはじまり、ふたりはすっかり意気投合。作品作りでコラボレーションすることに。ミラノで再会したふたりがそれぞれの思いを語ってくれた。

Photographs by Giovanni SantarelliText by Miki Tanaka

ABOUT Parchy Cake Eater

デザイナーの森野重紀氏が2012年に立ち上げたブランド「パッチー ケークイーター」。 “つぎはぎだらけのやさ男” を意味する名前はまさにブランドの特徴をあらわしていて、さまざまな職を経験したのちにデザイナーになった森野氏のバックグラウンドや、上質素材や高いテーラリング技術をベースにヴィンテージや現代的テイストを入れたミックス感覚から“つぎはぎ”、女性が男性服を着たときのような感覚を男性服に活かした繊細なエレガンスを“やさ男” と表現しているのだとか。

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2015春夏シーズンのコレクション

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2013年には東京コレクションデビュー。イタリア・フィレンツェでおこなわれるピッティ・ウオモにも参加していて、世界的に注目されるジャパニーズブランドのひとつとなっている。

日伊にわたるコラボレーション

メンズファッション界でもっとも重要な世界的展示会のひとつである「ピッティ・ウオモ」。世界中から有数のブランドが出展し、業界トップのジャーナリストやバイヤーたちが集まるなか、その会場でいち早く「パッチー ケークイーター」に注目したのが、『ロフィシャル』ディレクターのジャンルカ・カンターロだった。その後、森野重紀との親交が深まり、ふたりのコラボレーションによるコレクション製作のプロジェクトをはじめることに。そんな彼らの出会い、友情、そしてこのコラボレーションについてジャンルカと森野が語った。

――おふたりの出会い、交流、そしてコラボレーションに至るまでの経緯を聞かせていただけますか?

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ジャンルカ・カンターロ(以下、ジャンルカ)  去年の1月のピッティで、パッチー ケークイーターのブースを訪ねたとき、まずは今日も着ているこのキャメルのアルパカのコートが真っ先に目に留まって、すごく気に入ったんです。それ以来、このブランドのことは注目していました。

しばらくして、知り合いのミラノ在住の日本人の方から「あなた宛ての荷物を預かっている」と連絡があって取りに行ってみると、なんとピッティで目をつけていた、あのコートが入っていたんです! それから森野さんと個人的に連絡を取り合うようになりました。

じつは、私は以前からずっと日本が大好きで、毎年、夏のバカンスの際には数週間日本を訪ねているので、次に日本に遊びに行くときにぜひ会いましょう、という話になり……。そこで今年の夏に日本を訪れた際に東京で再会し、食事をしたりしてほかのスタッフともすっかり意気投合しました。

みんなファッション好きですから食事の際にはやはりファッション談義になるのですが、そんななかで何かアドバイスをもらえないかと言われました。私自身も以前勤めていた雑誌『ルオモ・ヴォーグ』をちょうど辞めて、『ロフィシャル』に移行する段階だったので、ちょうどいいタイミングだったということもあり……。最初はあくまで友情からはじまったのですが、今回、いっしょにこのプロジェクトをやることになりました。

森野重紀(以下、森野) 普段は1月と6月のピッティでしか会えないわけですが、8月にジャンルカさんが日本に遊びに来たときに何度か会ってゆっくり話しているうちに、彼のファッション観やアドバイスが、自分にとても合うものだと思ったんです。最初は洋服が大好きな人間が集まったなかでのただのおしゃべりだったので、仕事に結びつくとは思っていなかったのですが……。

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ジャンルカさんのファッションにたいする考え方を聞いているうちに、こういう人から学びたいと思いはじめました。たしか、夜中の2時とか3時に蕎麦屋でしゃべっているときにそんな話がはじまったのではなかったかと思います(笑)。

――お互いのどのあたりに惹かれたのでしょうか?

ジャンルカ パッチー ケークイーターのよさはテーラー仕立てのテイストのなかに、エキセントリックさがあるところ。ものづくりのクオリティの高さとモダンさがマッチしているのがいいですね。私はこの手のテイストが大好きなので、はじめて見たときから一目ぼれしました。

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森野 ジャンルカさんのファッションへの造詣やセンスを評価するのはもちろんのこと、彼の体型も自分の服に合っていると思ったんです。ジョギングやサッカーをしてこのスリムな体型を維持しているという本人の努力もすばらしいですよね。

ジャンルカ いやいや、仕事が忙しくて夕食抜きがつづいて痩せたんですよ(笑)。

森野 だからこういう人をモデルに服を作って、その服を彼に実際に来てもらえたらハッピーだな、という――“贅沢な趣味” みたいなものですかね。

Page.2: 完成したコラボレーションジャケット

Patchy Cake Eater|パッチー ケークイーター

海外のファッションエディターを射止めた日本のブランド

ジャンルカ・カンターロ meets パッチー ケークイーター(2)

 
――実際のコラボレーションモデルの製作はどのようなかたちで進めるのですか?

森野 私はコレクション製作において常に素材にこだわっているのですが、今回のコレクションも2015-16秋冬シーズン用の生地があがってきたところからこのプロジェクトは動きはじめています。エクスクルーシブの日本製のものを使っています。まずはあがってきたいくつかの生地のなかから、いっしょに彼の好きな生地と色を選び、サンプル的なモデルを基に、相談しながらシルエットやフィット感、ディテールなどを調整していきます。

――具体的にはどんなやりとりがあって、どんなものに仕上がるのでしょうか?

森野 テーマとして、こてこてのトラッドではない大人の男のスクールテイスト的なものや、ハウンドトゥースやグレンチェックなどを使った、ヨーロピアン的なシリアス過ぎないフォーマルスーツのようなイメージがありました。あがってきた生地見本の中では24金の糸や多色使いでストライプがほどこされているウールの生地や、各種のチェック柄がよかったので、その辺りをメインにジャンルカさんと色を選びました。

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ジャンルカ エレガンスを感じるユニフォームスタイルや遊び心のあるヨーロピアンなフォーマルというテーマは、私も好きです。“ツイードラン” のようなイメージでヨーロッパ、またはブリティッシュな大人の崩しを入れたり、アメリカに渡ったブリティッシュカレッジスタイルのような、ガチガチには堅くない感じ。スリーピースにして、ジレだけちがうマテリアルにしたり、コントラストの効いた色づかい、フォーマルな形を素材で遊ぶのもいいと思います。

その際にはスリーピースにあえてノータイ、というのもいいですね。コーディネート的には例えば、オレンジブラウンを使ったスリーピースのチェックのスーツにライトピンクやライトブルーのシャツを合わせるとか、スクールテイストのジャケットにはバーガンディやネイビーのパンツにダークグリーンのベストなど、クラシックカラーのコンビとか。

生地にかんしては、森野さんが提案してくれたなかで、グレーのストライプのシリーズがとくに気に入りました。ストライプは細すぎず太すぎず、シリアスになりすぎないけどクラシックで。このライトグレーのトーンはドレスアップしてもカジュアルにも両方で使えそうです。白地にストライプもちょっと “華麗なるギャツビー” 的なイメージでドレスアップするならいいかとも思ったのですが、やはりトゥーマッチになりました。着ていく場所を選びますよね。

森野 生地を決めたあとは、すでに作ってあったベースになるジャケットのサンプルを彼に試着してもらい、シルエットを相談しました。スクールジャケット的な3ボタンのモダンなジャケットをまずは試着してもらったのですが、そのフィット感などをお互いで微調整しながら最終的な “ジャンルカモデル” になる型を決めていきました。

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ジャンルカ シェイプは、フィット感はあるけれど、あまりスリム過ぎないコンフォータブルなものがよいと思いました。テーラードテイストでありながらイージーに着こなせる着心地の良さがパッチー ケーク イーターの魅力ですから。それは各所にハンドメイドが入っているところにあると思います。だから採寸の際、私のサイズに合わせて多少は詰めてもらったりもしましたが、シルエット自体が大きく変わってしまうようなリクエストはしませんでした。

森野 その後、細部のディテールを相談して微調整をしながら、最終的な仕上げをしました。例えば、スクールジャケットということでブレザー風の金ボタンという考えもあったのですが、最終的には私は普通のジャケットよりちょっと厚めのあるシンプルなボタンにしようと思っていました。ジャンルカさんもその意見には賛成してくれました。

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ジャンルカ そうですね、24金のストライプの入っている生地を使うとしたら、金ボタンはやりすぎ。グレーの生地なら金ボタンもありですが、ライトでクールなイメージを出すためにはレギュラーボタンに賛成です。いっぽう、袖口のボタンにかんしては、ステファノ・ピラーティによる「エルメネジルド・ゼニア」のコレクションのように、あえてボタンホールなしにしたり、中に隠しボタンのようなものをつけたりするのも、ユニークでおもしろいかな、と。個人的には普通のボタンホールのほうが好きですが(笑)。

――共演してみた感想、そして今後の予定は?

ジャンルカ 私も今回の企画自体、おしゃべりしているなかから生まれたもので、仕事になるとはまったく思っていませんでした。ふたつのビジョンがクロスして形になっていくプロセスは非常に楽しいものでした。

森野 今回の企画は、遊んでいて生まれたものだったのにもかかわらず、ジャンルカのようなファッション感覚をもった人とコラボできて、とても勉強になりました。このモデルは1月のピッティ・ウオモでお披露目しています。日本では4月にエクスクルーシブで展開するのでお楽しみに。

 

パッチ― ケークイーター×ジャンルカ・カンターロのコラボレーションジャケットを先行販売

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今回のインタビューを終えて、当日は試作段階だったコラボレーションジャケットが完成した。グレーの生地に金の2ボタン、袖口にはレギュラーボタンといった仕様。広めに間隔をとった赤いストライプとスマートなシルエットが相まって、個性的でいてシックに使える一着となった。このジャケットは、“遊びゴコロある着崩しを楽しむファッショングルマン(服道楽)の店” をテーマに、南青山であらたにオープンするショップ「L'ECHOPPE」にて、受注販売される。

L'ECHOPPE
4月25日(土)オープン
東京都港区南青山5-5-4
Tel. 03-5778-3522

Neit PR
Tel. 03-3405-8836
http://www.patchycakeeater.com

GIANLUCA CANTARO|ジャンルカ・カンターロ
ファッションエディター。雑誌『L'Officiel Italia』『L’Official Homme Italia』ディレクター。『fashion』『D la Repubblica』などイタリアのファッション誌を経て、2007年より『L’uomo Vogue』編集部へ。同誌でヴァイスディレクターを務めた後、2014年9月より現職に。その傍ら、カトリカ大学、ドムスアカデミーなどにおいてファッションやコミュニケーションにかんする特別コースで教鞭をとる。

           
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