英国靴の雄ガジアーノ&ガーリング 松尾編集長インタビュー
FASHION / MEN
2015年4月7日

英国靴の雄ガジアーノ&ガーリング 松尾編集長インタビュー

Interview with GAZIANO&GIRLING

新鋭シューズブランド『ガジアーノ&ガーリング』のトニー・ガジアーノ氏、ディーン・ガーリング氏が来日。Men’s Ex松尾健太郎編集長に、お二人との会話から『ガジアーノ&ガーリング』のディテールについて語っていただきました。

文=松尾健太郎(Men's EX編集長)Photo by Jamandfix

クラシック・シューズ界に現れた黒船!?

メンズ・イーエックスのようなコンサバ・ファッション誌の編集長をやっていて、一番困るのは、やっぱりネタがないこと。扱っているのがクラシックなスーツや靴だから、カタチも色も、そんなにころころ変わらないし、新しいブランドも出てこない。毎回重箱の隅をつつくような特集で、なんとかしのいでいるのです(そんな世界で、よくぞ今まで15年も続けてきたなぁ…)

でも今シーズンの靴業界においては、大きなトピックがあって、ひと安心。それがこのガジアーノ&ガーリングです。ここの魅力を一言でいうと、どう見てもウン十万クラスのビスポークシューズとしか思えないのに、お値段はその半分以下におさまっていること。ウチの副編の堀川なんか「クラシック・シューズ界に現れた黒船だ!」とまでいい、大騒ぎしています。

左から、トニー・ガジアーノ氏、松尾編集長、ディーン・ガーリング氏

二人の魅力が靴の魅力となっている

この日は、そんな注目ブランドをクリエイトするお二人、トニー・ガジアーノさんとディーン・ガーリングさんにお会いできるとあって、ちょっと緊張していました。場所はペニンシュラホテルのスイートルーム。初めてあったお二人は、所狭しと並べられたサンプルシューズのなかで、忙しそうに動き回っておられました。

「コンニチハ、はじめまして、松尾です。英語が下手ですみません」と情けなく切り出すと、
「いやいや、僕の日本語よりマシさ。今習っているんだけど、難しいね」とやさしくフォロー。
お二人とも、いいひとそうでほっとしました。
「僕たちの靴の六割は日本向けなんだ。だからなにかアイディアを出すときは、まず日本のことを考えるよ」
なんて嬉しいお言葉を頂戴したのは、主にデザインを担当されているトニー・ガジアーノさん。いかにもアーティストといった風体です。
「そうだね、日本はいいね。みんな靴のことよく知っていて、びっくりするよ」
というのはホンワカキャラのディーン・ガーリングさん。彼はもともと靴職人で、技術面を担当しています。

ガジアーノ&ガーリングは、イタリア靴の流麗なデザインと英国靴の朴訥とした雰囲気をあわせもっているところも魅力なんですが、これはお二人のキャラに由来していると見ました。

松尾 日本の靴ファンは本当にすごいですよね。ウチの編集部にもたまに電話がかかってきて、すごくマニアックなことを聞かれるので困ります

トニー 日本のカスタマーの知識は世界一だね。でも最近では日本の靴ブームが飛び火して、アメリカでもすごくマニアックなファンが増えているんだ

ディーン そうそう、彼らはネットで靴のことについてチャットしているよね

松尾 へーそんなサイトがあるんですか!

(調べたら本当にありました。www.styleforum.net)

トニー 僕たちの靴についても書かれているよ。底材がどうだとか…

ディーン イングランドの古い古い、二千年以上の歴史をもつタンナーがなめした革を使っているんだ

松尾 知っています!J&F.J.バーカーですよね。昔、取材したことがあります(最高級靴読本Vol.1にて)

トニー えっ知っているの?

ディーン バーカーじゃなくてベイカーって発音するんだよ

松尾 あ、そうなんですか…(しまった、靴読本では思いっきりバーカーと書いてしまった)

トニー ベイカーのソールを使うのは、普通はビスポーク店だけ。既成靴で使っているのは世界中でわれわれだけなんだ

ディーン 柔らかいのに丈夫で最高なんだけど、高いからね

松尾 それにしても、このウエスト部分のくびれがセクシーですね…たまりません

トニー ありがとう。このラインを出すのは本当に難しいんだよ。アンティークシューズで研究したんだ

ディーン ウッドシャンクの上に、レザーのフィドルを…

と話はおそろしくマニアックな方向へ向かってしまい、私の知識ではついていけなくなったので、いつもの薄ら笑いでごまかして、インタビューを終了しました。

話していて思ったことが二つあります。
一つ目は、お二人ともとてもマジメなお人柄で、靴を愛しているんだなぁ、ということ。高品質なのに価格以上の価値があるのは、ひとえに彼らがヘンな下心をもっていないからです。
二つ目は、彼らはゲイなのだろうか? ということ。だって欧米のファッション関係者は本当にゲイばかりだし、ブランド名もなんとなくドルチェ&ウンタラに似ているし…

妄想はとめどなく広がったのですが、その後の食事会で、トニーさんには奥さんが、ディーンさんにもフィアンセがいることがわかりました。ひと安心です。邪推してしまい、お二人ともごめんなさい…でも、いい靴です!


10月号表紙

Men's EX
毎月6日発行(世界文化社)
定価760円
http://www.mens-ex.jp/

           
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