BOGLIOLI|ピエルイジ・ボリオリ インタビュー
FASHION / MEN
2015年3月12日

BOGLIOLI|ピエルイジ・ボリオリ インタビュー

BOGLIOLI|ボリオリ

サルト発の急伸メゾン

ボリオリが描く未来図とは(1)

これまで見てきたボリオリの現在と過去。ここではこれから先の未来について、来日したボリオリ社正統の血筋を引くデザイナー、ジジことピエルイジ・ボリオリ氏にインタビューを敢行した。これほどまでに急拡大したボリオリの市場をどう捉えているのか、そしてボリオリはこの先、どこへむかうのか。そこには意外な未来図が描かれていた。

Text by IKEDA YasuyukiPhotos by YOSHIZAWA KentaPhotos cooperation by BOGLIOLI


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時代を読み解くピエルイジの感性

ピエルイジ・ボリオリは、創業者の直系3代目にあたる。長男のマリオは経営を、末弟の彼はデザイナーを務めている。カシミヤに洗いを掛けるという大胆な発想から生まれた「Kジャケット」も、一昨年登場し一世を風靡した「ドーヴァー」も、今年大人気となっている「ワイト」も、すべて彼の作品である。来日していた彼にインタビューする機会を得た。

──いま主流となっている、製品染め加工がほどこされた薄くて軽い仕立てのジャケットは、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

「80年代末から90年代にかけて、いわゆるクラシックスタイルにおけるフォーマル観が変わってきたように思います。ジャケットをデニムに合わせるようなダイナミックな着こなしも、年齢を問わずスピリットが若い人びとに支持される時代になりました。敏感に反応したのはカジュアルウェアのほうでした。当時、多くのメーカーやデザイナーがTシャツやセーター、パンツに製品染めをほどこし、着込んだ風合いの加工を手がけていました。時代の空気感だったのでしょう。しかしジャケットに製品染めをほどこしたものはひとつもなかった。そこでジャケットの専門メーカーだったボリオリが、最初に製品染めのジャケットを手がけたのです。それは染料や生地だけでなく、仕立てにもかかわるところが大きく、試行錯誤を重ねるうち、古いナポリ風のジャケットにたどりつきました。生地屋、染め屋、仕立屋、すべての協力があって、ボリオリのスタイルが生まれています」

学生時代は会計を学び、その後、いくつかのショップでファッションビジネスを体得すると、父親が経営するボリオリ社に入社。デザイナーとして頭角をあらわしたのは、90年代の「コート」ジャケットの誕生に携わったところにはじまる。

サルトの家系に生まれた頑固な職人デザイナーを想像していたのだが、この日の彼はTシャツにジャケットを羽織ったラフなスタイル。それを指摘すると「半分バカンス気分なので許してほしい」と笑いながら、エスプレッソを飲み干した。今回の来日は、アシスタントデザイナーのマルコ・レとともに、休暇を兼ねて日本の生地、ショップをリサーチすることが目的だ。メディアの取材は『OPENERS』一誌だけが許されている。

BOGLIOLI|ボリオリ 01

コレクションは、時代とともに変遷する

イタリアのファッション業界のみならず、世界中が時代の先を読むピエルイジ・ボリオリの動向に注目している。それは先の言葉にあらわれるように、決してつくり手主体の抽象的なコンセプトではなく、着る側の時代感を読み解く綿密なマーケティングに基づいているからである。インターナショナルにおけるボリオリのシェアは、イタリアについで日本が2番手。ドイツ、オランダ、アメリカ、スペインとつづく。

「日本人はコンフォートであることと、そして上手に着こなすことを知っていますね。そして、こだわりをもってモノを選ぶことができ、かつ物の良し悪しがわかるひとも多いと感じます。日本はボリオリの魅力を理解した、イタリア国外では最初の国です。やわらかいこのジャケットは、軽くて肩ひじの張らないスタイルに似合います。それが日本人の好みに近かったのだと思われます。

世界的に見ても、現代の若いひとたちは正統派の重厚なクラッシックスタイルを知らずに成長しています。そんな彼らにとってのフォーマルは、たとえジャケットを着ていても、旧来のクラシックとはまったくちがうものなのです。製品染めやアンコンストラクションのジャケットが、あたらしい世代のフォーマルにふさわしいジャケットであり、新時代の”フォーマル”を生み出したことは明らかでしょう」

クラシックの視点から的確に市場を読んでいる。クラシックメゾンでありながら、コレクションはデザイナーズモードのように華麗に変化しつづける。ピエルイジはデザイナーであると同時に稀代のMD(マーチャンダイザー)でもある。

──来シーズンのコレクションはどのようなものになるのですか?

「来シーズン、ワイトはコレクションに名を残しません。ワイトがお好きだったひとには、つぎのデザインを受け入れていただけると確信するモデルを提案しています。ドーヴァーは、もう少し手の込んだものになります。着心地やジャケットとしてのルックスを追及した結果、構築性をくわえたドーヴァー2Gというモデルに代わり、これがワイトを統合します。スタイルとしての世界観に変わりありませんが、より柔らかで、少し構築的になるのです。肩には小さなパッドやユキワタも入ります。素材はウールとコットンを用意して、2ボタンのジャケットもコレクションにくわわります」

BOGLIOLI|ボリオリ

サルト発の急伸メゾン

ボリオリが描く未来図とは(2)

Text by IKEDA YasuyukiPhotos by YOSHIZAWA KentaPhotos cooperation by BOGLIOLI


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ロベルト・ファルキとともに見据える次代

ボリオリ社の前身はルーカスモーダ社。創業者であるサルト出身の祖父ピエトロと父ジュゼッペが拡大した、伝統的なジャケットのファクトリーであった。社名を変更し兄弟で経営とデザインを手がけながら、一昨年からシャツやニット、パンツまでのトータルコレクションを展開している。

ほぼ同時期に大手ラグジュアリーメゾンで各国支社長を歴任したロベルト・ファルキ氏を迎え入れた。氏は日本赴任の経験もあり、欧米のみならずアジア圏のマーケットにも詳しい。
家族経営でつづけてきたファクトリーが、外部からの人材を受け入れることの意味はとても大きい。

──ボリオリにロベルト・ファルキ氏を迎えた理由は?

「私たちはファミリーで現在のレベルに到達しましたが、ここから企業としてさらに成長するためには、セールスやマーケティングにあらたな取り組みが必要です。つぎの段階に移るためには、あたらしい風を吹き込める人物が必要なのです。ロベルト・ファルキ氏と手を組むことで、国際的に発展する足がかりになると考えます。彼はアジアやアメリカのマーケットを熟知しているので、ボリオリが国際的な地位を構築してディストリビュートにおいても、さらなる拡大ができることを期待しています。

将来的なプロジェクトとして、ボリオリのオンリーショップを考えています。やはりミラノからだと思いますが、海外展開も早期に実現させたいですね。当然、日本にも。まだ準備はできていませんがコレクションが充実してくれば、ミラノコレクションへの参加もあるでしょう。長期的なプロジェクトとしては、ファッションショーを成功させるということも視野に入れていますから」

小さなサルトからはじまったボリオリは、インターナショナルメゾンへ離陸する。すでに地図は描かれ、どこへ着陸するか、旅程はピエルイジが握っている。

最後にひとつ、数多あるボリオリのコレクションのなかで、日本人にもっとも似合うジャケットはどれなのか? と聞いてみた。驚いたのは、その答えがかつて筆者がナポリの仕立て服屋で「私に似合うジャケットはどれ?」と尋ねたさい、店主が返した言葉とおなじだったからだ。

「私から言うことはありません。お客様がなにを欲しているかを聞くことが私たちの仕事ですから」

ピエルイジ・ボリオリはサルトのDNAをも、しっかりと受け継いでいる。


BUYER'S RECOMMENDATION OF BOGLIOLI FROM THE WORLD!

BOGLIOLI|ボリオリ 香港 01

BOGLIOLI|ボリオリ 香港 02

Mr.Alan Nam – Samsung – KOREA

1. なぜ、ボリオリは人気なのだと思いますか?

はじめてボリオリを知ったのは、2007年のピッティ イマジネ ウォモ。そこで韓国内ではじめてボリオリを買い付けました。ビジネスにはもちろん、リラックスしたシーンにも着用できる汎用性は、韓国のお客さまも気に入っていらっしゃいます。袖を通せばオーダーメイドのような完璧なシルエットでありながら、フォーマルジャケットのような堅苦しさは一切ありません。現在のグローバルなカジュアルトレンドとも一致しているといえるのではないでしょうか。

2. 一番、好きなボリオリのジャケットは何ですか?

私もよく着用している、製品染めのジャケットがボリオリの代表的な存在だと思います。とくにそのクリエイティブなカラーセンスは、私の個性を引き立ててくれるので大好きです。お気に入りのヴィンテージワインのような色なのですが、ボタンダウンシャツやTシャツなどに合わせて着ているときはいつも、「そのジャケットはどこの?」と、聞かれるほどです。

3. ボリオリへのメッセージをどうぞ

これまでどおりクリエイティブでありつづけてください!


BOGLIOLI|ボリオリ Sugar 03

BOGLIOLI|ボリオリ  Sugar 04

Mr.Giuseppe Angiolini – Sugar – Italy

1. なぜ、ボリオリは人気なのだと思いますか?

エクスクルーシブ素材とサルトリア技術との融合によるものだと思います。ボリオリは、「WORN LUXURY(着るラグジュアリー)」を提案した最初のブランドです。そこには飾らないディテールとヴィンテージの雰囲気が備わっているので、気楽に着用することが可能です。

2. 一番、好きなボリオリのジャケットは何ですか?

カシミヤに洗いをほどこしたKジャケットは、決して高級素材をひけらかすことのない、控えめなルックスで、これぞ真のラグジュアリーの象徴です。またコットンツイルのジャケットは週末のレジャーにも最適です。そのコンセプト自体が、とてもモダンだと思います。

3. ボリオリへのメッセージをどうぞ

ボリオリとしてのアイデンティティを、さらにたしかなものにしてほしいと思います。またさらに、素材開発へも飽くなき研究もつづけていただきたいです。


BOGLIOLI|ボリオリ San Carlo 05

BOGLIOLI|ボリオリ San Carlo 06

Ms.Giorgina Siviero – San Carlo – Italy

1. なぜ、ボリオリは人気なのだと思いますか?

まず第一にコンフォートであること。アンコンジャケットは、腕や肩の動きを邪魔することなく、からだを包み込んでくれます。そして素材開発と中間色づかいが巧みな点もボリオリの魅力だと思います。

2. 一番、好きなボリオリのジャケットは何ですか?

Kジャケットですね。発想がユニークで、コンフォートジャケットにセンセーションを巻き起こしました。

3. ボリオリへのメッセージをどうぞ

素材開発とフィット感にかんしては、他の追随を許さないほどの強みとなっていますが、さらに突き詰めていってほしいと思います。

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