BOGLIOLI|魅惑のコレクション――メンズウェアの最前線
FASHION / MEN
2015年3月12日

BOGLIOLI|魅惑のコレクション――メンズウェアの最前線

BOGLIOLI|ボリオリ

2010-2011 F/W Item Line Up!

ボリオリ|魅惑のコレクション──メンズウェアの最前線

毎シーズン新作モデルを発表するクラシックメゾンは稀有である。ボリオリは、ここ数シーズン、継続して新作モデルを送り出している。1990年代初頭まで、オーセンティックなジャケットファクトリーとして稼働してきたブランドが、はじめて手がけたティント イン カーポ(=製品製品洗い染め)加工のコットンジャケットにはじまるラインナップは今季、すばらしい充実ぶりを見せている。その真髄を堪能してほしい。

文=池田保行写真=ジャムアンドフィックス(静物)吉澤健太(ポートレイト)


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メンズウェアの流れを変えた革新的モデルの新作はいかに?

いわゆるクラシックを知るメゾンは、けっしてその構築性を損ねないよう、肩と胸の立体的な仕立てにこだわる。アイロンワークを駆使して殺した生地と、芯地とパットを組み合わせながらいかにフォルムを形成するかに苦心するのだ。しかしボリオリは、あっさりパッドを外した。このボリオリが投じた一石は、のちに大きな波紋を広げることとなる。

キャンバス芯のみで仕立てたフォルムはしっかりとテーラード調のスタイルを形成しながら、しかし格段に軽い着心地を実現している。こんな着心地のドレス服は、いままで存在しなかった。そのため、はじめて袖をとおした者は2着、3着とおなじモデルの素材ちがいを買い求めるのだという。

今回は今季の新作を一堂に会して、その魅力を再確認してみたい。

「B4302G」は1990年代以降、ボリオリの歴史の舵を取るきっかけとなったモデル「コート」の流れを汲んだコットンジャケットである。ラペル幅を細く設定し、着丈も短いコンパクトなダブルブレストのデザインに、ミリタリー風の半円メタルボタンを採用。パッチポケットにしたカジュアルなルックスが従来のダブルとは一線を画している。毛芯や肩パッドなど副資材を使わずに仕立てたジャケットに、製品洗い染め加工(=ティントインカーポ)をほどこし、独特の風合いが与えられた。

2003年、それまでのクラシックスタイルの常識を覆し、ウールのジャケットに“洗い染め加工をほどこす”という大胆な手法を取り入れた「Kジャケット」は継続モデルとしてラインナップされる。洗い染め加工による収縮を考慮したパターニングとステッチのパッカリング、白浮きしたユーズド感溢れる風合い。肩パットと毛芯を用いず、身返しのみで構築した仕立ての技法と、加工後に袖裏を縫いつけるという手の込んだ工程を経ることで、快適な着用感を備えている。

肩パットを用いず毛芯のみで仕立てられた“センツァスパリーナ”。いわゆるアンコンストラクション(非構築的)なフォルムを呈した「ワイト」は、ボリオリが導くクラシックスタイルの基軸を集約したもの。2008年に登場した「ドーヴァー」の後継として、よりエレガントなスタイルリングに対応するモデルである。素材のバリエーションが多彩なことでも知られ、こちらはヘリンボーン柄をプリントしたジャージー素材。ストレッチ素材ゆえの着やすさは高度な次元で結実する。

BOGLIOLI|ボリオリ 08

「Kジャケット」とおなじデザインながら、肩も身頃も完全なる一枚仕立てにした今季の新作が「ヴィネガー」である。ウール×シルクの混紡素材をティントインカーポによって生地目を縮絨させたうえ、生地表面はピリング状に加工されている。ラペルエッジにはダブルステッチをほどこし、ゴージラインは片伏せ仕上げ。洗い工程後に縫いつけられたフラシの袖裏など、ディテールにちがいが見られるが、なによりも一枚の布地を羽織ることの気軽さに刮目する。

その「ワイト」のダブルブレストモデルが「ワイトドッピオ」。2010年SSに登場した「ワイト」のダブルブレストタイプとして今秋に登場したものだ。「B4302G」とおなじダブルブレストのデザインながら、こちらはウール素材でキャメルの芯地が用いられている。そのため肩まわりの仕様に構築性があり、ドレスジャケットとしての見栄えがするのである。王冠のエンボスがほどこされたブラックラッカーの足付きボタンが用いられ、洗い加工がほどこされていないリジッドなルックスはエレガンスを要するビジネススタイルへの着用も十分に果たしてくれる。

フィールドジャケットをモチーフにした「アッパー」は、チェンジポケットを備えた4つボタンのジャケット。セパレートのライナーを取り付けた仕立てには、これまで同様肩パットを用いずにブルゾン的なあしらいを可能にしている。ラフなスタンドカラーに着られる小襟のピークドラペル。狭いVゾーンが特徴的なスタイルは、カジュアルな着こなしを前提としたものだ。こちらの素材はニットを採用しているが、布帛地のものもラインナップされている。

ダブルブレストのニットジャケット「M4」は、ボリオリのあらたな方向性を示唆するデザインである。現に2シーズン前よりフルアイテムのコレクションを展開しており、このアウターニットもハイブリッドな存在といえるだろう。ローゲージニットに製品染めをほどこし、メタルの半円ボタンには紋章の刻印入り。袖の飾りボタン、袖裏もつかわず、腰ポケットもブルゾンニット的なスタイルを採用することから、カーディガン的な着こなしが期待される。

このほかにも、現行のコレクションには2008年に登場し爆発的に人気を博した「ドーヴァー」をはじめ、シャツ、ニット、パンツなど多彩のラインナップを有している。しかし来季はまたこのラインナップに大きな変更がくわえられる。すでにボリオリはクラシックブランドとしては語りきれないトータルメゾンへ変貌を遂げているのだ。


BUYER'S RECOMMENDATION OF BOGLIOLI!

鴨志田康人|YASUTO Kamoshita

鴨志田康人|YASUTO Kamoshita

ユナイテッドアローズ クリエイティブ ディレクター ユナイテッドアローズUA本部副本部長兼クリエイティブディレクター。自身のブランド「カモシタ」を手がけ、年2回イタリア・フィレンツェで開かれる世界最大級の紳士服展示会「Pitti Immagine UOMO」にも出展。

スタイルはもちろんですが、ティントインカーポによる風合いと生地感が、決して品を落としていないという点は他の追随をみないものです。品位、品格、品質はクラシック服にとって重要なファクターなのですが、ボリオリはそのどれもを疎かにしていません。次世代のクラシックを導くバランス力は、トータルコレクションを展開しはじめてからより発揮されています。シャツ、ニット、パンツまで、国内でここまでのラインナップを取り揃えるのはUAだけではないでしょうか。フルラインナップをご覧いただければ、ボリオリの様相はより理解できるのではないかと思います。


中村達也|TATSUYA Nakamura

中村達也|TATSUYA Nakamura

BEAMS クリエイティブ ディレクター。日本のメンズトレンドを左右するビームス クロージング部門バイヤー。欧米のクラシック服の傾向から独自の視点で選び抜いたバイイングは、ビジネスからカジュアルまで、毎シーズン的確なセレクトであらたな流行を生み出している。

15年ほど前ならば、クラシックなジャケットには毛芯、なかでも馬の毛を用いた本バス芯を用いていることが最良とされました。構築的であることが正義だった時代に、アンコンストラクションの軽い着心地を打ち出し、かつティントインカーポによる風合いの妙を添えたあたらしいジャケット。それはクラシック界の範疇を逸脱せずに、新風を吹き込んだパイオニアでした。今日、ドレスクロージングがカジュアル方向に振れているのは、ボリオリがつくった軌跡です。今後、この流れが揺りもどされるのか、それともまだ振れ幅が残されているのかすら、ボリオリはすでに読み切っていることでしょう。

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