JOHN LOBB|ジョン ロブの新たなラインに見る、サスティナブルな靴作りとは。
JOHN LOBB|ジョンロブ
NEW CLASSIC
ジョン ロブの新たなラインに見る、サスティナブルな靴作りとは。
今春の登場以来、早くも話題となっているジョン ロブの「ニュークラシック ライン」。150年もの歴史を通し、紳士靴の最高峰を極めたジョン ロブ。同ブランドだからこそたどり着いた、その次代を担う新たなシューメイキングについて、ジョンロブジャパン松田智沖社長に訊いた。
Photographs by TANAKA TsutomuText by TAKEISHI Yasuhiro(City Writes)
次代のクラシックを創造する新たな試み
欧米では“Noblesse Oblige(ノブレス オブリージュ)”という精神が社会に息づいている。それは“高貴さには相応の責任が伴う”といった考え方であり、フランス語だが英国出身で19世紀に活躍した女優・著述家ファニー・ケンブルが最初に言及したことで広まった。
ジョン ロブがこの度リリースした「ニュークラシック」は、まさしくそんな欧米に根付く良心的精神を体現する新しいラインである。
「今回のニュークラシックは、ジョン ロブが企業として“サスティナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)”を追求することで誕生しました。こうしたサスティナビリティ(持続可能性)への取り組みは、これまでファクトリーでの省エネなどで行ってきましたが、同コレクションは製品に反映させた初の試みです」
資源を活かす卓越のシューメイキング
ジョンロブジャパンの松田智沖社長はこのように語る。
急速な社会的発展に伴い、いま世界では地球温暖化や環境破壊、資源枯渇といった問題が噴出。企業にもより高度なCSR(企業の社会的責任)が求められている。そうした諸問題に対する企業としてのひとつの答えが、ニュークラシックには込められているのだ。
「これまでジョン ロブでは、プレステージとクラシックの2つのラインを展開してきました。なかでも最高峰のプレステージは1足につき概ね5〜6のパターンで組み上げていきますが、ひとつひとつのパーツが大きいため、無駄になる革が少なからずあった。
なぜならパターンが大きい分、1枚の革から広い範囲にキズがない部分を選りすぐって採らなければならないからです。そうして余った革はこれまで使用することができませんでしたが、これを活かしたのがニュークラシックです。
通常の高級靴といわれているものは、12〜15パターンといわれていますが、ニュークラシックは同じく概ね15のパターンで構成されています。パターン数が多い分ひとつひとつは小さいため、プレステージやクラシックのパターン採り後に余った革からも、キズを避けてパーツを採ることができる。結果、貴重な革を最大限活かすことに成功したのです」
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NEW CLASSIC
ジョン ロブの新たなラインに見る、サスティナブルな靴作りとは。 (2)
靴作りへのこだわりと持続可能性を両立
それほどのパーツ数で構成されているとは思えない美しい仕上がりは、高度な技術力の賜物に他ならないが、そもそも松田氏が話すように、従来ジョン ロブは1枚のカーフレザーから1足の靴のみを作るという生産体制を維持してきた。
多くの紳士靴ブランドは1枚で3〜4足は作るということからも、その突出した贅沢さがうかがえる。ゆえに革のロスも多かったわけだが、そこにはジョン ロブの靴作りに対する比類なきこだわりがあり、そのこだわりこそがニュークラシックを生んだといえるのだ。
「ジョン ロブがプレステージのような大きなパターンを採用するには、理由があります。パーツが大きいと縫い目が減る分、耐久性が高まり、足へのストレスが軽減され、革本来がもつ復元力も大きくなるなど、メリットが多いのです。また、弊社では顔料系の表面加工を一切しないフルグレインレザーのみを採用しています。表面加工をすればキズを塗り込めて目立たなくし、革を無駄なく使えますが、それでは革が呼吸できなくなり、革のもつ復元力も損なわれてしまう。つまり、長く履ける靴を作るためにも、フルグレインレザーは理にかなっているのです」
かけがけのない地球の未来のために
抜群の履き心地と美しさを末永く保つ、最高峰の紳士靴を作り出すために編み出されたこだわり。そんなものづくりの哲学をブレることなく貫きながらもなお、時代が求める社会的責任を果たす。ニュークラシックの価格が抑えられているのは、あくまで革を無駄なく使えるため。それはサスティナビリティを追求した結果であり、ディフュージョンラインといった位置付けではけっしてないのだ。
そう、ニュークラシックは150年もの長きにわたり紳士の憧れであり続けてきた、ジョン ロブだからこそ生み出せたサスティナブルかつハイクオリティな靴であり、つぎなる150年へ向けた高貴なる矜持でもあるといえるだろう。
「ニュークラシックはパターンこそ多いですが、革はプレステージやクラシックと同じフルグレインレザーであり、木型やライニング、底材もすべて同じものを用い、英国ノーザンプトンの自社工房で同じ職人がハンドメイドで縫い上げています。縫製の簡素化なども行っておらず、パーツが多いからこそ活きる“オーバーラッピング製法”という職人的な遊びまで凝らすなど、職人の手間にいたってはむしろ既存ラインよりも多くなっている。
また余った革を使うのでどうしてもデリバリーは不定期になりますが、今後も続けていく方針です。なぜなら持続していくことにこそ意味があるラインであり、それはジョン ロブの未来にとっても、地球の未来にとっても必要なことと確信しているからです」