なにかを決断するときに、上質な靴が自信をもたらす

聖クリスピンは、クリスピヌスとクリスピニアヌスという双子の兄弟のことを指す。なぜ彼らが靴の聖者とされるのかは、その生きざまにある。貴族の生まれながらキリストの布教活動に励み、迫害から逃れるようにしてローマからソワソンという街にたどり着いた。その地で彼らは布教を広めつつ、靴づくりにいそしみ、貧しい人々に与えていたという。

彼らの聖名祝日となっているのが、10月25日である。この日が人びとに知られるようになったきっかけが、シェイクスピア作の『ヘンリー5世』に登場するアジャンクールの戦いの直前に披露された演説。「今日という祝日をもって死せず帰還したものは、この日が特別な1日となるだろう。そして老いたのちに、後世に誇らしげに受けた傷を見せることができる。聖クリスピン祭こそが、我々にとっての記念日となるのだ」。これを聞いた兵士たちは劣勢を覆し、勝利を収めた。

戦を目前に控えた兵士たちは、なにをおもったのだろう。足元を見つめ、これまでを振り返り、約束されない未来に向かい、自身を奮い立たせることしか、きっと彼らにはできなかったのではないだろうか。土ぼこりにまみれた、その視線の先には自身の靴があったはずだ。戦を終えて、ふたたびこの地に立つことはできるのか。それを確実なものにするためには、奮起するのは自分しかいない、そう兵士たちは靴を見ながら覚悟を決める。

なにか重大な決断を前にしたとき、男は上質な靴を選ばなくてはならないのだ。

特別な戦士だけが手にすることができる靴

この聖クリスピンの祝日を称えて、ジョン ロブは1996年からイヤーモデルをつくり続けている。その2015年のモデルとして登場するのが「FOWEY（フォーウィ）」だ。毎年のことではあるが、イヤーモデルと称するからには、そこにジョン ロブがもつ技術の粋が注ぎ込まれている。

この「フォーウィ」も然りで、2枚の美しいミュージアムカーフを用いてつくられており、随所に職人技を見ることができる。そのひとつがエプロンからシングルアイレットへとなだらかな稜線を描くハンドステッチで、イノシシの剛毛に糸を巻きつけて縫合したもので、この作業だけでも2時間を要するという。

またこの靴が特別な限定モデルであることを象徴するのが、トゥの部分に施されたスキンステッチ。2枚の革を結ぶ縫い目をなめらかな一枚革のように見せる技術は数少ない職人にしか成せないもの。その美しさによって「フォーウィ」は、イヤーモデルとしての際立った魅力を放っている。

そしてソールはプレステージラインならではの、手作業で削られたヴェヴェルドウエストが男を惹きつけるカーヴを描き、整ったウェルトが靴好きを魅了する。これらの技術の数々によって、2015年のジョン ロブのイヤーモデルは、彫刻のような全方位的な美しさをもつ仕上がりとなった。

「フォーウィ」は現代におけるビジネスパーソンにとって、自身を奮い立たせるための靴として、ふさわしい存在となってくれるだろう。

モデル名｜「FOWEY（フォーウィ）」
色／素材｜Black,Navy,Plum/Heavyweight Museum Calf
ラスト｜8695
ソール｜シングルレザーソール（プレステージ）
製法｜グッドイヤーウェルト
価格｜37万8000円
サイズ｜5E〜9.5E